間もなく創業40年
編集 マクドナルドの1号店は1971年に銀座にオープンしました。「企業の命は30年」という言葉がありますが、御社はそれを越え、もはや世界に根付いた“基盤産業”と言えると思います。社内の方はそれをどのように感じていらっしゃるのでしょうか?
佐藤氏 創業からちょうど30年の2001年に最頂点の利益を上げました。しかしその年の9月にBSE問題が発生し、厳しい環境を強いられました。企業30年というのは本当に面白い言葉というか、先人の経験から生まれたリアルなものだと思いました。辛辣な考え方をした場合「マクドナルドがなくてもいいじゃないか」という考え方だってできますよね(笑)? しかし、私は「No」だと思っています。それはマクドナルドで働く人間だからではありません。
例えば「雇用を生む」ということを考えてみてください。クルー(店舗で働くスタッフ)として15万人が働き、毎年9万人の新しい雇用を生み出しています。これは産業界に非常に大きな影響を与えていることだと思うんですよ。
また私もそうですが、マクドナルドに何らかの思い出を持っている人もとても多い。その存在がなくなったら寂しいですよ。
編集 私は1960年代の生まれですが、京都ではじめてシェイクを飲んだ時「なんだこれは!」と衝撃を受けました(笑)。確かにマクドナルドにしかないインパクトというのは、時が経っても鮮明に覚えていますよね。
佐藤氏 経営を学んだなどのビジネスインパクトだけでなく、顧客としての思い出をそれぞれの方がお持ちだと思います。「マクドナルドではじめてデートした」「マクドナルドでいつも待ち合わせした」…。特に今のように携帯電話が普及していなかった時代、いろいろな場面でマクドナルドが生活の一場面に入り込んでいるのではないでしょうか。
編集 それぞれのブランド感というものですね?
佐藤氏 以前、京都の修学旅行生のために伝言板を設置しまして、それを活用した方がたくさんいらっしゃるのではないかと思います。個人的には町内会の行事で、私がマクドナルドで働いていることを知った子供の友人たちから「いいなぁ」と言われたことが嬉しかった(笑)。少なくとも子供に背を向けた仕事はしてないなと自信を持ちましたしね。
編集 そうやって考えていくとマクドナルドって本当に生活の一部に入り込んでいると感じますね。
佐藤氏 日本にいると近過ぎて感じないということがあるかもしれませんね。海外に行った時にマクドナルドを見てホッとすることがあるでしょう? 私たちは、これからもマクドナルドと個々のエピソードをたくさん作り続けていきたいと思っているのです。単に食を提供するのではなく「私とマクドナルドのエピソード」が生まれる場所にしていきたい。
i'm lovin' it.
編集 2004年に原田CEO体制となり、また第二の創業期という節目と重なり、戦略として大きな変化のようなものがあるのでしょうか?
佐藤氏 例えば「i'm lovin' it.」は世界共通のグローバルフレーズ。全世界が一丸となって、より強いブランドにしていこうというテーマは今後も継続されます。
また原田CEOという強力なリーダーシップを発揮する経営者の元で、創業から37年経った会社が全店ベースで33ヶ月連続売上げアップという業績を生み出しています。やはり何かがある会社なんです(笑)。
編集 さて、私たち外部の者、またマクドナルドに興味を持っている人にマクドナルドの見方を教えていただけますか? どんな視点で御社を探究していくとより「企業マクドナルド」が見えてくるのか、ということですが。
佐藤氏 難しい質問ですね(笑)。私たちはHPなどを活用して様々な情報を公開しています。店舗に足を運んでいただいたり、HPを覗いていただいたり、是非積極的なアプローチをいただければと思います。今では歴史のある企業という位置付けもできるのでしょうが、マクドナルドはこれからの進化に常に目線を向けている留まることを知らない元気な会社です。今日本は、景気の問題などで元気を失っている。しかし「個」に注目してみると、日本はきちんと元気です。マクドナルドがそういうことでみなさんに勇気を与えられればまた嬉しいと思っているんですよ。