株式会社ロッテリア 代表取締役社長 篠ア真吾氏 ※2011年9月末現在 代表取締役 佃 孝之氏 |
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生年月日 | 1962年、静岡県生まれ。 |
プロフィール | 一橋大学法学部在籍中にソフトウェア開発会社を立ち上げ、1988年に大学を中退。その後会計士資格を取得し1990年に中央監査法人(国際部)入社。1995年マイクロソフト(管理本部)、1997年マーズ/マスターフーズ(財務経理部長・人事本部長)入社を経て、2000年に公認会計事務所を設立。2005年にリヴァンプに入社し、2006年1月に株式会社ロッテリア代表取締役社長に就任。 企業の経営支援会社の立ち上げに参画する他、主に投資ファンド、ベンチャー企業、外資系企業などを顧客とした企業評価・財務デューデリジェンス業務の他、企業再生チームへの参画、外部CFOとして管理部門の責任者の教育・育成などにも取り組む。公認会計士・税理士。 |
主な業態 | 「ロッテリア」など |
企業HP | http://lotteria.jp/ |
2006年1月にロッテリアの代表取締役社長に就任した篠ア氏は、顧客の反応がダイレクトに伝わってくる飲食ビジネスに、これまでにないワクワク感を感じているという。
会計士のスキルをメーカー企業などの管理部門で生かしてきた篠ア氏は、数字的側面から経営を捉える後方支援業務がメインだった。しかもメーカーの場合、問屋、小売店などの複数の流通ルートを経由するため、最終的な消費者である顧客の顔が見えにくい。これまで顧客の反応を知るといえば、マーケティング資料などを通してのみだったのだ。
しかしロッテリアは、店舗においてダイレクトに顧客に接し、ダイレクトに顧客の感情を受け止めることができる。「美味しそうに食べてくださっている笑顔、時には要望を言ってくださるお客様。私たちの仕事が人に影響を与え、人の役に立っていることを実感します」。43歳にしてはじめて知った飲食ビジネスの面白さ、醍醐味は、これまでのビジネス経験の中でもひときわインパクトが強いという。「もっと早い時期に飲食サービス業に出会っていれば自分のキャリアは違ったものになっていたと思う」。そう語る篠ア氏だが、実は代表取締役社長に就任したのは、ロッテリアがブランド力を失い新たな成長戦略を模索しなければならないシビアな時期だった。
競合他社との激しい競争が続く中で低迷していたロッテリアを再生するにあたり篠ア氏が始めたことは、「自分たちを見つめ直すこと」だった。商品はこれでいいのか? サービスは? そもそもロッテリアってどんな会社を目指そうとしているんだっけ? 過去のやり方を肯定も否定もせず、まずはありのままの姿を受け止める。そうすることでしか新たなあるべき姿は見つけられないと考えたのだ。
そこで行ったのが、一般の人々を集めての座談会式のマーケティング調査だった。女子高生ばかりを集めたグループ、サラリーマン、主婦…。8つのグループを形成し、そこで自由に意見を言ってもらう。もちろんロッテリアの調査であることは証さず、司会者が上手に意見を引き出していく。ミラールーム越しにはマーケティングスタッフのみならず幹部や社員30名がギュウギュウ詰めで集まったという。そして出てきた本音。「そういえば最近見ないね」「マックとモスの中間?」…。辛辣な意見に落胆する社員も多かったが、なにより企業と顧客の間に大きなギャップがあると気づかされたことが収穫だった。
この調査により分かったことは、これまでの戦略が顧客を意識したものでなく、競合他社を意識したものになっていたということだった。「もう一度直球で顧客サービスを追求していこう」。ロッテリアらしい商品の提供、そしてロッテリアらしいホスピタリティの提供。社内改革の第一歩はこうしてはじまった。
2006年4月、「信頼の輪を広げたい」という新ビジョンの元、新生ロッテリアが稼動する。ロゴを一新し、メインのハンバーガーには素材を厳選した王道の「ストレートバーガー」をラインナップ。居心地のよい店内空間へと店舗設計も一新した。“正直でまっすぐなハンバーガー屋さん”。このコンセプトは、現在全国に587店(06.9時点)を展開するロッテリアの規模だからできることだし意味があると篠崎氏はいう。
確かに数千の店舗を展開する同業他社やコーヒーチェーンなどと違って、各駅に店舗があるわけではなくロッテリアの露出度は低い。 しかしだからこそ「画一のサービスにこだわらなくてもよい」という考え方もできるのだという。
例えばある店舗では、毎朝出勤前にコーヒーを買ってくださるお客様との会話がある。「髪を切られたんですね。スッキリされましたね」。「今日も暑いですね。頑張りましょうね」。通常マニュアル通りのやりとりだけが交わされるこの業態で、ロッテリアはちょっと異色なコミュニケーションがなされているファストフード店なのだ。
篠崎氏は、この独自のホスピタリティも成長の鍵と捉えた。「マニュアルにない顧客との関係構築を店舗スタッフの判断でどんどん実践していこう」。つまり、似ているけれど1店1店がどこか違う、働くスタッフのカラーがあるお店作りにさらにこだわり、お客様が「俺のロッテリア、私のロッテリアと思ってくれる店舗作りを強化していこう」と考えたのだ。
そのため篠崎氏は、自らが店舗に出向き店長と会話する時間を作ったし、それは現在も続いているという。「フラッと立ち寄ってカウンターで普通に注文して食事する。そのあと店長に声をかけて話をするんです」。前社長はロッテのオーナーという遠い存在だったが、新社長はまったく異なるリーダーシップを発揮している。飲食業界未経験であり、どちらかと言えば顧客視点で会社を俯瞰して見られる篠崎氏ならではの動きだとも言える。
2006年1月の社長就任にあたっては、「会計士が新社長になる」ということもあり大胆なコストカットを予想した社員が多かった。しかし篠崎氏は単に不採算店をなくすといったことはしなかった。ポイントは「商圏としてどうなのか」。その視点で一部の店舗は閉じたが、商売が成立しうる地域の店舗は存続した。またコストカットに対する施策も同様。店舗スタッフに今以上の負担がかかるようなカットは一切行わず、逆に人件費には再投資を行うほどだった。
篠崎氏が何よりも重視したのは、慣例・慣習を冷静に見つめることだった。必要な経費、業務はビジネスの変化と共に変っていく。そこを毎年チェックしていけば、無理なくコストを削減していけると考えていたからだ。例えば100ページにも及ぶ報告書を受け取った篠崎氏は、どうしてもそのすべてが必要なものとは思えなかった。疑問を社員にぶつけてみると「慣例だから」との答え。現在ではその報告書は数枚のレポートにまとめられている。
さて、各店店長とのコミュニケーションを大切にしているという篠崎氏だが、何の告知もなく店を訪れ、美味しそうにハンバーガーを頬張る篠崎氏をみつける店長はさすがに度胆を抜かれる。スタッフルームで向き合うと増々構えてしまうというのが店長の本音だろう。しかし篠崎氏は、必ず店舗の優れた点を見つけては店長を褒め、要望を伝えるのは二の次だという。「店長がヤル気になってくれれば自然とリーダーシップというのは発揮されていくものです」。美味しい商品は必ずリピートがあり、店内で美味しそうに食べてくださるお客様の表情をダイレクトに見ることができる。このワクワクした気分を店長と共有すること、ロッテリアという職場を選んでよかったという気持ちを共有すること。篠崎氏の経営・企業改革の原点は、まさに今の仕事を前向きに捉え楽しむ、というところにあるのかもしれない。
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