株式会社トマトアンドアソシエイツ 代表取締役社長 小花良一郎氏 | |
生年月日 | 1955年2月26日 |
プロフィール | 静岡県藤枝市に生まれる。兄弟は姉と妹の二人。専修大学卒業後、株式会社すかいらーくに入社。現在同社の代表取締役社長の谷氏とは同期入社。2011年トマトアンドアソシエイツの社長に就任。現在、同社は「トマト&オニオン」「じゅうじゅうカルビ」などのレストランをFC店含め、108店舗経営している。 |
主な業態 | 「トマト&オニオン」「じゅうじゅうカルビ」 |
企業HP | http://www.tomato-a.co.jp/ |
小花氏は1955年2月26日、静岡県藤枝市に生まれる。藤枝市は、静岡県の中部に位置する都市で人口は少なくない。
「代々農家で、私で13代目です。もっとも何代か前から兼業となり、祖父は校長で、父は農林水産省の役人。今は、残念ながら農業はしていません」。
それでも、昔からの実家はあるそうで、築160年という。「煤が天井にへばりついて、時々落ちてきますが、まだしっかりしていますよ」とのこと。前は囲炉裏があり、平屋だが、広い部屋が8つもあるそうだ。
「父が、農林水産省の役人だったこともあって転勤が多かったんです。私は、すぐに馴染めるタイプだったもんですから苦にならなかったんですが、中学に進学する時に『さすがに、転々とするのは良くない』と、姉と一緒に祖父母のもとに送られました」。
だから、中学からは祖父母の住まいがある静岡県藤枝市がホームグランドとなった。
中学生になった小花氏は野球を開始する。運動神経が良く、こちらでもすぐに人気者になった。高校でも野球をつづけた。進学したのは「藤枝東高校」。サッカーファンの方なら、学校名をご存知かもしれない。
「そうなんです。サッカーの強豪校で、私がいた3年間だけでも全国優勝を2回。ちょうど私らの代が準優勝でした」。
小花氏が所属する野球部は、どうだったんだろう?
「こちらは、ぜんぜんだめ(笑)。そもそもメンバーも少なかった」。
監督も元々は部外者の方だったそうで、サッカーと比べるまでもなく、先生方の期待も薄かった。とはいえ、中・高の合計6年間、グランドで汗を流したのは、事実である。
この頃、祖父から「ノーと言える人間になれ。イヤと言えることがほんとうの勇気だ」と教わった。これが小花氏の人生訓となる。
「祖父は、アメリカ人みたいになれといったわけじゃありません。戦争体験を通し、その後悔から、長いモノに巻かれるのはいけない。『はっきりとノー』と言うことが大事なんだと言いたかったんです」。
胸に響いた。ただ、この時、「ノー」と言うむずかしさをどれだけ理解できていたかは、わからないが…。
大学は、専修大学に進学。本命の大学に落ち浪人するつもりでいたが、母の「大学で何をしたいの?」という一言で進学の目的をつかみ、専修大学に進学した。同時に、東京での独り暮らしもスタートする。
東京に行くからには、「生活費も含め、自分なんとかする」と言った手前、アルバイトも早々に開始しなければならなかった。
「新宿にあるパブで、5月からアルバイトを開始しました。それから4年間、バイト三昧」と小花氏は笑う。
生活費や学費だけではなく、バイトに明け暮れるもう一つの目的は、旅費だった。
「石垣島出身の友だちができたのがきっかけで、夏休みだけじゃなく、春休みも、冬休みも石垣島に出かけました。東京から船で47時間。それで沖縄に着き、そこからプラス16時間です。向こうでも、アルバイトをして暮らしました。この時、できた友人たちとは今も親交があります」。
年齢も、出身も違う。
「そういう奴らと、男女も関係なく夜な、夜な、泡盛。楽しくないはずはないですよね」と小花氏は語っている。
それにしても行くだけで、63時間。この行動力も、ある意味、小花氏のちからの源泉かもしれない。
「大学3年時に、アルバイト先のマネージャーからロイヤルホストを紹介されたんです。これからは、ファミリーレストランの時代だと言って」。
小花氏が大学3年といえば1976年。まさにファミリーレストランが、時代の寵児へとかけ上がっていく頃だ。
「11時のオープン前から列ができた」と当時を知る人から聞いたことがある。「『これからはファミリーレストランの時代」とマネージャーが言ったことは、まことにただしい。
しかし、就職先として考える学生はまだ少ない時代だった。小花氏も「大学出て、コックをやるのか」と父親に一言、いやみを言われたそうだ。
ところで、当時のファミリーレストランといえば、「ロイヤルホスト」と「すかいらーく」が東西の双璧だったのではないだろうか。
「ロイヤルホスト」は北九州市に1号店をオープン。「すかいらーく」は、東京都府中市に1号店を出店する。「すかいらーく」の前身は「ことぶき食品」。創業者である横川4兄弟は、あまりに有名だ。
さて、小花氏は東の雄、「すかいらーく」に就職する。本部の活気に惹かれたからだ。ちなみに現在、株式会社すかいらーくの社長を務める谷真氏も小花氏と同期入社。谷氏は、当時の様子を「火の玉集団だった」と言っている。
ともかく、就職は決まった。同期は100名。彼らは「すかいらーく」8期生である。
「私が、入社した時には42店舗でした。いまから思えば、『まだ42店』ですが、当時はもう42店舗かというイメージです。昇格スピードも早く、1年でキッチンチーフになりました」。
「ただ、忙しかったのは事実です。1週間に1回くらいは休むように心がけていたんですが…」。
しかし、本人たちは、それで当然と思い込んでいたようだ。
「辞めようとも、思わなかった」と言っている。
しかし、そんな小花氏だが、一度だけ、辞めようと思ったことがあったそうだ。
「外部のコンサルタントと進める、あるプロジェクトのリーダーになった時です。このプロジェクトは、業務の改善、目標の達成がミッションだったんですが、そのやり方には納得できなかったんです」。
「とにかく追い詰め方がハンパありませんでした。数字を前に『何故できないんだ!』と。私はリーダーでしたから、逃げ出すわけにはいかなかったんですが、胸ポケットにはいつも辞表を忍ばせていました。いつでも、上司に出せるようにです」。
「でも、幸い、すかいらーくはいつまでもそんなことに気づかないような会社じゃなかった。『もう、やめましょう』という私の意見にも耳を傾けてくれる人も出てきて、コンサルとの契約がまだ1年残っているにかかわらずプロジェクトは終了しました」。
このエピソードからは、小花氏の人となりが伺える。人のために、自らの腹を切れる、小花氏はそういう人なのである。
温厚そうだが、意志は固い。
さて、前記のエピソードは1998年のこと。ファミリーレストランは、全盛期の勢いを失いつつあった。「すかいらーく」も「ガスト」など、新ブランドを立ち上げ、打開を図った。
しかし、バブルに向かってかけ上がった当時とは、何もかも違った。ファミリーレストランという営業スタイルに限界がきたのかもしれない。その証拠に、セントラルキッチンより、店内調理がもてはやされた。
それでも「すかいらーく」は、「ガスト」でブームをつくり、2003年11月、八王子寺町店をオープンし、1000店舗の出店を達成している。単一ブランドのファミリーレストランチェーンとしては唯一の記録だそうだ。
とはいえ、状況がけっしていいわけではなかった。2006年には、創業者でもある横川氏を中心にMBO(マネジメント・バイアウト) を行い、非上場化することを発表する。2008年には、谷氏に経営のバトンが渡った。小花氏らにとっては、青天の霹靂だったそうだ。
その谷氏から、「トマトアンドアソシエイツ」を託されたのは、2011年のことである。
「どうして、私なんですか?」。
思わず口にした小花氏だったが、拒否という意味ではなく「意図が知りたかった」から発した質問だった。
「『トマトアンドアソシエイツ』を買収してから、私で3代目です。先の2人の頑張りで、業績を立て直すことができ、勢いもついてきたんで、『これなら小花でもできるだろう』となったんだと思っています(笑)」。
たしかに、できた。
小花氏は、就任1年で、債務超過を解消。以来、4年間、売上も、利益も前年対比100%をクリア。期待以上の結果を残すことになった。
しかし、それは「小花氏でもできた」わけではなく、「小花氏だから叩きだすことができた結果」である。
「すかいらーくの先進的なシステムは、これからもドンドン導入していきます。そして、他と比較しても引けを取らない、うちの強みを活かしていきます。その一つが手づくりです」。
「昔から『トマトアンドアソシエイツ』ではたらくスタッフは、お客様の声を聞くことをいとわないんです。自分たちの手でものをつくっているからです」。
「どんなメニューがいいのか、サービスがいいのか。マーケティングの素地を持っているんですね。そういう彼・彼女たちの素地を活かそうと、この4年間、実践してきました」。
最初は、聞きに来るだけだったスタッフたちが、次第に「自主性・自発性を発揮するようになった」と言って小花氏は目を細める。
小花氏はそれを「自律・自走」という。
小花氏の役割は、その自律・自走をサポートすること。この役割に徹することができる経営者を迎えたからこそ、「トマトアンドアソシエイツ」は蘇ったに違いない。
かつて、小花氏は、尊敬する先輩から、「本気で考えろ!オレも一緒に考えるから」と言われたそうだ。これが基軸になっている。
この「いっしょに本気でやろう」の精神で、祖父から教えられた「ノーと言える人間になれ」の教訓を次代に継承していく。
それが、いまからの、小花氏の大仕事である。
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