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第519回 株式会社ベビーフェイス 取締役会長兼CHO 田中 守氏
update 16/01/19
株式会社ベビーフェイス
田中 守氏
株式会社ベビーフェイス 取締役会長兼CHO 田中 守氏
生年月日 1949年4月21日
プロフィール 奈良県生まれ。2人兄弟の長男。大学卒業後、大手アパレル会社に就職。独立し、1979年「BABYFACE」 1号店を奈良県内にオープン。2002年よりFC事業を開始し、2003年、法人化を実現。2015年8月現在、直営4店舗 FC92店舗。
主な業態 「BABY FACE Planet's」
企業HP http://babyface-planets.com/

奈良県、生まれ。

奈良県は、大阪府という大都市に隣接し、ベッドタウンとして古くから開発されてきた。むろん、古都でもある。
今回、ご登場いただいた田中氏は、1949年奈良県に生まれている。父は関西電力の社員、母は専業主婦で一般的なサラリーマン家庭で育ったそうだ。兄弟は、2人。田中氏は長男で、のちに弟と事業をともに起業することになる。
「子どもの頃を一言で」とお願いすると、「ガキ大将」という返答。もっとも「だれかに引っ張られながらの、ガキ大将だった」らしい。
「中学になってバスケトボール部にはいりました。でも、練習もろくにせえへん生徒でした」。
「熱心なのは、今も昔も、遊びだけ」とこちらを笑わせてくれる。

「かっこええから」と大手アパレル会社に就職。

ガキ大将が就職先に選んだのは、当時、流行していたアパレルブランドの一つだった。
「アイビーとかヨーロピアンとか、いうてね。とにかく、かっこ良かった。私が、その会社を選んだのも、かっこ良かったから。ただ、それだけです(笑)」。
ブランド名を聞いて「なるほど」と思った。たしかに当時、だれもが憧れたブランドである。
「フランチャイズのショップも多かったんですね。私は、そういうショップやオーナーをみてきました。当時は、経済も右肩上がりの頃でしょ。『こりゃ、サラリーマンやっている場合ちゃうわ』と思って。そう、30歳の時に、独立するんです。商社に勤めとった弟を誘って2人で、ね」。
奈良駅前に、奇妙なフードを出す喫茶店がオープンしたのは、それからしばらくしてからである。店名は、「BABYFACE」。

「ピザいうても、奈良の人は知らへんかってん」。

「独立する時には、アパレルか、飲食かと迷ったんです。ただ、アパレルは在庫があるでしょ。仕入れも、億単位になってしまう。そんな資金もないから、飲食ってことになったんです。当時は、喫茶店も結構、儲かっていましたからね」。
「ただ、喫茶店というよりカフェのイメージで、料理もピザとか、パスタとかイタリア系で勝負しかったわけです。東京では、流行っていましたね」。
しかし、1979年の奈良のことである。
「その当時、奈良の人は『ピザ』いうても、よう知らんかったんです。奇妙な食いもんくらいに思ったはったんと違いますか。パスタも知らへん。当然、客はけぇへんから、そうやね、半年くらいは、弟とキャッチボールばっかりやってました」。
兄と弟が、キャッチボールを繰り返す。微笑ましいが、内心どうだったのだろう。
「そうですね、あの時が、いちばんきつかったんとちゃいますか。半年くらいしてから、急に繁盛し始めて、それからいままで、ピンチも一度もなかった。だから、よけいに記憶に残っています」。
以来、ピンチが一度もない。なかなか考えにくいことだが、強がりでなければ、うそやごまかしの類いでもない。当初のピンチを乗り越えた「BABYFACE」は、それから順風満帆で、今に至る。ところで、キャッチボールで暇をつぶしていた店が、どうしてヒットしたんだろう。
「月商1000万円」にとどいたとも言っている。

「お客さんのいうことは全部、聞いたろ」。

「とにかく、お客さんのこうことは全部、聞いたろと開き直ったんです。量を増やせと言われたら、大盛りにした。当時、大盛りってなかったから、それもヒットした原因やないですか。もちろん、ピザとか、パスタっていうこじゃれたフードはやめました。奈良県仕様です。お馴染みのオムライスとか、ピラフとか、サンドウィッチとかを投入した。そういうのが良かったんやろね」。
客に言われれば、1.5倍はあたり前。2倍にしても、料金はいっしょ。「とにかく、めちゃくちゃやった」と田中氏は、笑う。
しかし、ふりきれば「めちゃくちゃ」もちからを持つ。「BABYFACE」の名前は、口コミで奈良県内に広がっていった。
「ちなみに、ベビーフェイスの意味は?」と伺うと、プロレスでヒールを叩きのめす正義のヒーローを「BABYFACE」というのだと教えてくれた。店名は、そこから取っているそうだ。「プロレス好きだったんですか?」と聞くと、「この話ししたら、みんなにそう聞く」と言いつつ、「好きです」と笑う。
果たして、はちゃめちゃな正義のヒーローは、どうなっていくんだろう。
「それからも、みんなの意見をきちんと聞いとったらええやろ!の精神でね、どんなオーダーにも応えていったんです」。
現在も、「BABYFACE」では、セレブサイズ(1人前)から相撲レスラーサイズ(4〜5人前)まで量を自由に調整できる。他店ではあまり例のない「サイズの調整」の裏には、このような誕生秘話が隠されていたわけである。
セレブサイズで気取るのもなんだが、相撲レスラーサイズには冗談でも、チャレンジできない気がする。しかし、「食べ放題」と比較するわけではないが、このサイズ調整は、おもしろい発想である。

「本部は小さく、加盟店は大きく」。

「本部は小さく、小さく、加盟店は大きく、大きく」。田中氏は、2002年から本格的に、フランチャイズ事業を開始している。
「カフェのほかにも、釜飯とか、焼肉とか、バーとかも出店しました。カフェ業態のBABYFACEもおかげさまで、ずっと好調やったから、『そろそろ、ええやろ』って思ってね。フランチャイズを開始したんです」。
前職でフランチャイズを勉強してきた。その経験とノウハウを活かそうというわけだ。
「フランチャイズいうのは、人の金でしょ。だから、展開も早いんです。現在、直営は4店舗ですが、FCは92店舗もありますから(笑)」。
「人の金」だから、展開がはやいと言ったが、「人の金」だから、慎重だ。
「FCの事業を開始して今年で、13年になるんですが、一度もクレームがない。店を閉めはったオーナーさんも3人くらいいますけど、他の事業の資金繰りが問題だっただけで、『BABYFACE』がこけたからやなかったからね」。
多くの飲食店が淘汰されていった、この10数年の間に、ひっそりとだが、このような金字塔を打ち立てる店もあったのか、と驚かされる。

ほぼ、口コミのみ。FC希望者もとぎれず、年間7〜8店舗の出店を13年継続。

FCの1号は、取引業者さんの紹介でオープンしたそうだ。
「その店が絶好調やったもんやから、口コミで広がってね。こういうたらあかんねんけど、とんでもないオーナーが多かったわ。最初の頃は、とくにね。うちのBABYFACEであかんかったら、もう終わりみたいな。そらぁ、ユウレイがでそうな店も、何軒もあった。それでも、失敗は1軒もなかった。みんなええ業績上げてくりゃはった。それで、ドンドン口コミで広がって、今の92店になるわけです」。
ちなみに、「BABYFACE」には、スーパーバイザーはいるが、営業マンは1人もいない。フランチャイズの展示会も開催されているのは知ってはいるが、1度も出たことはない。つまり、勧誘行為は一切、行っていない。
「口コミだけで、ここまで広がるとは」と、おなじビジネスを展開する会社が、知ったら驚かれるはずだ。しかし、真似はできない。「本部は、小さいほうがいい」という考えを真似できる経営者は少ないと思うからだ。
「本部が欲をかかんこと。これが、いちばん。だから本部は、ちいさぁてええんです。本部が、ええビルに入っても、入らんでも、FCさんはどっちでもええんです。みなさんも知っている通り、そこをはき違えたはる本部さんもぎょうさんあるんちゃうかな」。

「欲をかいたら、あかん」。

「本部が欲をかいたら、あかん」と田中氏はいう。これは、たしかに鋭い指摘だ。「本部は、小さいほうがいい」というのにも頷ける。
関西弁で言えば、「ええかっこしたら、あかん」となるのだろう。しかし、ついつい人は、「ええかっこしぃ」になってしまうし、「欲」もでる。田中氏にも「欲」がないわけではない。
「将来の目標は?」と伺うと、「300店」という明確な返答。しかし、ここからが田中氏らしい。「できるだけ、ゆっくり」。
聞き間違えかと思って、「ゆっくり?」というと、田中氏は、にっこり笑った。
「そう、できるだけ時間をかけてね。ゆっくり、ゆっくり300店になったらええな、と思っているんです」。
300店という目標に向かって、さらに努力を重ねていくことはもちろんだ。しかし、歩みはゆっくりが、いい。
「みんなが3年でやるところを、10年かけて、する」と田中氏は、宣言する。
「急成長にはね、さまざまなリスクがあるんです。そういうリスクはとりたない。従業員のためにも、加盟店さんのためにも、もちろん消費者のみなさんのためにも。そういう考えの本部が一つくらいあってもええんちゃいますか」。
その言葉がとても、印象的だった。さすが、正義のヒーローがいうことは、ひとあじ違う。

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