株式会社シャノアール 代表取締役 中村成佑氏 | |
生年月日 | 1984年10月31日 |
プロフィール | 中学生時代に「ビリヤード」を始め、たちまち虜になり、高校に進学するも普通高校では時間が合わないと「通信制高校」に転校。その高校を卒業し、いよいよプロの道を本格的に進み始めた時に、創業者でもある父親が倒れる。シャノアール、4代目社長。社長就任は2017年。 |
主な業態 | 「カフェ・ベローチェ」「コーヒーハウス・シャノアール」「カフェ・ラ・コルテ」「カフェ・セジュール」 |
企業HP | https://chatnoir-company.com/ |
4代目になる。今回、ご登場いただいた株式会社シャノアールの代表取締役社長、中村氏のことである。創業は1965年。中村氏が生まれる20年近く前の話だ。
「祖父が蕎麦屋をしていたんですが、そちらが立ち退きになり、代わりに不動産事業をスタートし、その時、もう一つ開始したのが、現在につづく飲食事業です」。
1号店は、今の『あきる野市』にオープンしたそうだ。
当時は、経済成長期。「シャノアール」も、次々、出店を重ねていく。ところが、1990年代に入ると、バブルが破綻し、経済の雲行きが悪くなる。ダウンサイジングが起こり、淘汰の時代がスタートする。
「最盛期は、245店舗ですね。私が生まれたあたりから出店が加速したんじゃないでしょうか。ただ、時代とともに、シャノアールの立ち位置もかわってきます」。
スターバックスなど、米国スタイルのコーヒーショップも台頭する。「シャノアール」もけっしてすべてが順風満帆ではなかったはず。なかでも、創業者である、中村氏の父親が倒れた時は、最大のピンチだったはずだ。
「そうですね。2004年に父が倒れた時は突然で、母が継ぐことになりました」。
いったん、社長の座を譲ったこともあったが、中村氏が社長に就任するまでの13年もの間、母がシャノアールを守り、育てたのは事実である。
ちなみに、中村氏が社長に就任したのは、2017年のことである。
「中学受験して、私立中学に進みます。最初は、バスケットボール部に所属する、ふつうの生徒だったんですが」。そう言って中村氏が笑うのは、中学時代、スイッチが入ったように、ビリヤードにハマってしまったからである。
ビリヤードにハマったことで、バスケットボールも退部。「プロ」を目標にかかげ、一目散に突っ走る。
高校に進んでも、ビリヤードの熱は冷めない。
「ビリヤードの大会は、夜なんですね。それに合わせて、昼・夜逆転の生活をしていました。そんな生活ですから、高校に行くのもたいへんで。一度進んだ私立高校を辞めて、通信制高校に編入します」。
プロの道を進むための、覚悟の一つだった。
高校を卒業すれば、いうまでもなくプロ試験を受ける。これが、中村氏の想定だった。ところが、試験の前に父親が倒れて亡くなってしまう。これが、2004年のことで、当時、「シャノアール」は、アルバイトだけでも3000人、抱えていたという。
むろん長男の中村氏も、もう「ビリヤードのプロ」とは言っていられなくなる。
「翌年の2005年です。新卒者といっしょにシャノアールに入社しました。それから2年間、店長も務めましたが、いったん、シャノアールを退職するんです」。
どういうことだろう。
「実は、店舗の運営だけではなく、マーケティングやファイナンスなど経営者にとって必要な知識を身に着けるためにニューヨークにある市立大学に留学したんです。あの時、様々な国の価値観と、その違いに驚き、世界の広さというのをリアルに体験したのは、いまでも私の大きな財産です」。
それ以外にも中村氏は、ニューヨークで日本とは違う「食」に関する価値観やカフェのあり方に出会う。現在の商品開発やマーケティング活動に活かされているのも、ニューヨークで得た経験だ。
モーニングメニューで採用しているカイザーパンやホットドッグで使用しているライ麦パンもまた、ニューヨークで得た知識がヒントになっている。
中村氏がニューヨークから帰国したのは、2013年。のべ6年ほど、渡米していたことになる。
帰国後、ニューヨークで学んできた経験を活かすべく、シャノアールに取締役として再入社する。「時代の変化に合った内容に経営理念を見直し、多くのお客様が、日常の中で少しでもより心地良く思える商品・サービスを提供し、当たり前の商品・サービスとして社会に定着させることを目指すことにしました」。
外部からも積極的な人材登用を行っていく。「とくに、マーケティングや商品・店舗開発、それに人事ですね。こちらに、キャリアある人材を登用していきます。ええ、それで、シャノアールも新たな表情を生みだしてきました」。
いろんな意見が飛び交うようになったのも、いままでとは異なる風景だ。
2018年9月現在、カフェ・ベローチェを中心とした4つの業態を全国に約200店舗、展開している。カフェ・ベローチェは、手ごろな価格に比して落ち着いた店舗空間、高い質の商品・サービスを提供。特徴的なのはサービスのスピードにあり、ピーク時においても時間のないお客様を待たせずに商品を提供する事を心掛けているそうだ。もともと会社の出発点がフルサービスのため、お客様目線でのサービスで工夫を凝らすことが多く、フルサービスとセルフサービスの“いいところ取り”により、人気店へと成長した。
現在、シャノアールが指向する方向は、次の中村氏の言葉に凝縮されている。
「私たちがこの仕事を通してヤリガイを感じるのは、お客様に活力を与えることができた時です。そのために客観的な評価として、『JCSI(日本版顧客満足度指数)の顧客満足度ランキング』を意識しています。今年(2018年)は首位に返り咲くことができて嬉しく思っています。様々なサービスを通して、社会に良い影響を与えることで、従業員満足度も向上すると、私は思っています」。
この先の新ブランドづくりについても聞いてみた。
「カフェ事業は今のところは比較的安定しています。しかし、非連続な成長曲線を描くためには、今まで挑戦して来なかった業態にも積極的に挑戦していく必要があると考えています。それがなにかは、今ここでは申し上げられませんが、楽しみにしておいていただきたいですね」といたずらな表情をする。
たしかに、カフェ事業でノウハウを積み、顧客満足を追求してきたシャノアールがつくるブランドである。どんな新ブランドが誕生するのか、楽しみでならない。
むろん、「人」づくり抜きに、こうしたビジョンは描けない。
「シャノアールは、30年前から海外研修を行ってきました。むろん、これ以外にも様々な研修なども行っているんですが、特徴的なものでいえば、クラシフィカドール/コーヒー鑑定士の資格を取得できるブラジル研修も毎年行っています」。
なるほど、これは凄い。
「一流ホテルのサービスを受けるホスピタリティ研修も、そうですね。外食において、カフェ事業は比較的労働力を使わないんですが、シャノアールは大型店が多く、フロア環境への関与度も強いため、スタッフ数も多い。だから、コミュニケーションも大事ですし、何より、カフェ事業をスタッフが理解し、誇りに思っていることが大事だと思うんです」。
つまり、シャノアールの、たとえば主ブランドである「カフェ・ベローチェ」では、そんなスタッフたちがはたらいている。当然、他店とは、その質において比較にならない。
「こうした研修に一貫して言えるのは、シャノアールの店長になるということは、経営者になることとおなじですから、経営者にとって大事な『感性』を磨く研修でなければならないと思っています。つまり、一人ひとりが経営者として物事を考え、成長していける環境を作るよう心がける。シャノアールは、そういう会社でありたいと思うんです」。
最後に、どんな人材に期待しているか、と聞いてみた。
「そうですね。まず『お客様の喜び=自分の喜び』と思っていただける方と共に働きたいと考えていますし、そう思っていただける方に期待したいと思います」。
「お客様の喜び=自分の喜び」。
アメリカでもビジネスを修得してきた中村氏の、行きついたところが、この一言であるのがいい。こればかりは、ニューヨーク流でもなんでもなく、中村氏流のスタイルなのだろう。だから、飲食は、あったかい。
もうキューはにぎらないが、中村氏はますます経営としてのミラクルショットを連発していくはず。それが楽しみだ。
この企業にご興味のある方、コンタクトを取りたい方、また代表にメッセージを送りたいといった方は、下記フォームよりご登録下さい。当社が連絡を取り、返信させていただきます。
例)テレビ番組用に取材したい、自社の商品をPRしたい、この企業で働いてみたい、中学時代の同級生だった など