株式会社ネオ・エモーション 代表取締役会長 石橋幸男氏 | |
生年月日 | 1947年9月29日 |
プロフィール | 神奈川県三浦半島城ヶ島出身。高校卒業後、印刷会社に勤務。ガソリンスタンド、行商と転々として、行商で独立。のちに水産物の卸会社を立ち上げる。現在は、その仕入れ力を活かし、鮪を看板商品にした和食ダイニング、グルメ回転寿司、立飲み寿司を展開している。 |
主な業態 | 「三浦三崎港」「十代目彌左エ門」「やざえもん」「めぐみ水産」他 |
企業HP | http://www.neo-emotion.jp/ |
三浦半島の先っちょに、城ヶ島という小さな島がある。戦国時代に、ある武将が城を築いたことからこの地名になったらしいが、これには諸説あるようだ。黒潮の影響で冬でも温暖。とはいえ、いったん天候が荒れだすと、人を寄せ付けないほど厳しい表情をみせる。
「私も、父も、母も城ヶ島出身で、父は漁師です」。黒潮に乗り、脂がのったさかなを獲る。天候がいい時はいいが、いったん荒れ狂うと手がつけられない。漁師という仕事はそういう意味で過酷である。気が荒い漁師が多いのは、そういった仕事が影響しているのだろうか。
「父に似たんでしょうね。私も小さな頃は、やんちゃ坊主です。小学4年生までは島の分校で育ち、5年生からは市の学校に進みます。運動神経はいいほうだったと思いますね。でも勉強はぜんぜんやらない。ただ、うちの仕事は毎日やりました」。
海が好きだという。泳ぎは得意。潮の流れ、さなかの群れ、悪天候の時の、海の怒り。海のことは知り尽くしている。遅くなったが石橋氏が生まれたのは、1947年。一般的にいう終戦から2年後のことだ。
ちなみに、城ケ島の南側の海沿いは、ウミウやヒメウ、クロサギの繁殖地となっているそうで、これらは神奈川県の指定天然記念物となっている。ともかく、大自然にはぐくまれ、石橋氏は育つ。
「高校では囲碁将棋部です。いまでも、やっています。囲碁をすると読みが深くなる。といっても、私はその時々のひらめきで動くんですが、これってたぶん経験があるからだと思うんです。つまり、直観の正体は、経験なんです」。
なるほど、という話だ。
高校を卒業した石橋氏は印刷会社に勤める。むろん、地元の会社である。「あの頃の三浦市じゃ、漁師になるか、工場に勤めるか、それくらいの選択肢しかなかったんです。それで印刷会社に勤めるんですが、2年くらい経った時、これじゃ将来もないな、と/笑」。
若い血が騒ぐ。
それでガソリンスタンドですか?
「そうです。当時はマイカーの黎明期ですからね。ガソリンスタンドもかっこいい仕事だったんです。この時、ガソリンスタンドにいらしていたお客様に紹介いただいて、行商の仕事をはじめます」。
行商とは、産物などの商品をもって相手先に行って販売するスタイルのことをいう。店舗をもたないことが、行商の意味でもある。
「社長は40歳くらいだったと思います。社長といっても個人で、私にとっては、師匠。この人との出会いが、いちばんの転機です」。
師匠のもと、仕事をはじめると、お客様との会話も楽しく、何より頑張ったら頑張ったぶんだけ稼げるのが、性に合った。次第に仕事にものめり込む。
「師匠が私に仕事を譲ってくれたのは、私が22歳の時です。自身は行商から卸へと進むからということでした。じつは私自身も、3年後の25歳の時に卸をはじめ、会社を興します。社員は私を入れて3名の小さな会社です」。
この会社がいわば起源となる。
「最初は、仕入れから、売りまで全部やっていましたが、三崎恵水産を新たに立ち上げ、こちらを仕入れ専門としました」。
石橋氏の構想は、まだ序の口だった。
「そうですね。それで『これだ』というのが鮪だったんです。三崎の鮪の歴史は古い。現在も、遠洋漁業の一角を担っています」。
棋士の直感が、はたらいたのだろうか。
「鮪で勝負しようと思った私は、人脈をつかって打って出ました。一大勝負です。最初に千葉に出店したのは、知人がいたことと、フェリーがあったから。そういう意味では単純な理由ですね」。
現在、ネオ・エモーションでは、この鮪を看板商品に、和食ダイニング、グルメ回転寿司、立飲み寿司を展開。じつは、シンガポールやロスなど海外にも進出している。
強みは、老舗マグロ問屋として実績のある「三崎恵水産」だ。海を知り尽くした男は、いまや鮪を知り尽くしている。三崎港は、近海の鮪だけではなく、世界中から旬の鮪がやってくる。年中旨い鮪が手に入る理由だ。
旨い鮪が手に入れば、ビジネスは広がり、当然、感動が生まれる。
「つぎにやってみたいのは、自社で遠洋漁船を所有し、はるか遠洋で鮪をひきあげることかな」。
まだまだ意気軒高。
ネオ・エモーション、その社名通り、石橋氏の生き方も新たな感動の連続だ。ちなみに、三崎恵水産のホームページの、ビジョンページに、「グローバルに、ローカルに、次世代につなぐ魚食文化を」という一文がある。
広大な海をみて育った、石橋の心の広さを表している名文句だと思った。
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