株式会社アイロム 代表取締役 森山佳和氏 | |
生年月日 | 1977年6月24日 |
プロフィール | 横浜市生まれ。専門学校卒、デザイナーとして社会人デビュー。ただ、すぐに退職し、トラックドライバーに転身。こちらも、しばらくして辞め、飲食店でアルバイトを開始する。これが、きっかけとなり飲食の世界へ。 |
主な業態 | 「サカナバル」「サカナバルグリル」「BEE8」他 |
企業HP | http://i-rom.co.jp/ |
子どもの頃は、時間があれば弟とボールを蹴っていたそうだ。「サッカーを始めたのは、小学3年生です。私に影響されて弟も始めます。2人ともスジが良かったんでしょうね。私は小学5年生の時に、2週間、浦和代表としてメキシコにサッカー留学させてもらいました」。
サッカーもうまかったし、リーダー気質も、だれもが認めるところだった。「昔から自然とリーダーをやることが多かったですね。小学校は児童学長で、中・高は学級委員長。ただ、サッカーのほうは高校1年の時、練習がきつくて辞めちゃいました」。
せっかく才能があったのに?
「私が進学した西武台高校はインターハイで全国2位になるような高校です。だから、練習もハンパない。その一方で、私自身は中学の頃からだんだんとサッカーに賭ける思いが薄らいでいたんです」。
スポーツをつづけるのは、案外、難しい。トップレベルになれば、尚更なのだろう。周囲も期待を注ぐ。それがうっとうしく思えることもあったのではないか。
「練習がとんでもなく、きつかったですね。小学生の頃から『水を飲むな』です/笑。私もそうですが、それで辞めたって人は少なくないんじゃないですか?」。
ともかく、高校1年でサッカーをいったん卒業する。
小学3年から始まったサッカー人生も、これでいったん終止符を打った。才能があっただけに、もったいない話である。
「ただね。サッカーは好きでいまもチームをつくってやっています」。
難しい話でもある。
今は「水を飲まない」と怒られる時代。
ルールは、当事者抜きに、案外、簡単にかわってしまう。
どちらがいいかは、むろん、わからない。
森山氏は、大学には行っていない。最初から、進むつもりはなかったそうだ。
「この頃には、デザインに興味があったんです。それで、デザインの専門学校に進みます。学校を卒業して、一度は、デザイン関連の会社に就職するんですが、すぐに辞めています。ま、私が、というより、ちょっと会社に問題があったんです/笑」。
それで、デザインとは無縁に?
「いえいえ、今でもお店のデザインや、そうそうホームページの写真なども私が撮影しています、でも、当時からそうですが、没頭するまではいかなかったですね」。
それで、トラックに?
「そうなんです。それから半年間、トラックに乗るんですが、今度は1人で運転しているのがさみしくって辞めてしまいます/笑」。
「就職するつもりはなかったんですが…」と森山氏。
トラック時代、当時、川口市で独り暮らしをしていた森山氏はトラックから降り、上京する。都内の飲食店でアルバイトをはじめたのは、この時だ。
そのアルバイトが縁で、飲食業に進むことになる。「最初は、仕事をさがす間だけと思っていたんです。でも、楽しくなって、そのまま就職です/笑」。じつは、アルバイト時代、働きすぎていたらしい。「それで、思ったんです。社員になれば、少しは休めるだろうって」。
むろん、そう計算通りにはいかない。だいたい就職といっても1年だけと思っていたらしい。
「そうなんです。面接でも『1年で辞めます』って。堂々と言っちゃうんですね」。
しかし、辞めなかった?
「なんだかんだで…。仕事も面白いですしね」。
ちなみに、その時、就職した会社は、すでに倒産している。「飲食事業は黒字だったんですが、もう一つの事業が赤字だったんです。私が、独立したのは、そのタイミングです」。
つまり、1年どころか、長く勤務することになる。
「1年で辞めると言ってはいたんですが、1年後には、店長の辞令が下りるんですね。辞めるとは言っていましたが、特別な理由があったわけでもないので、そのまま店長になります。当時は、今思えば何も考えてなかったですね」。
まだ、若い。店長は無事務まったのだろうか?
「最初は、ぜんぜんダメでしたね。私以外のスタッフは全員年上です」。
社歴も長い?
「そうです。だから、私の言うことなんてだれも聞かない/笑。私も、だからって怒るわけでもなく、ま、そんなもんだろうくらいに思っていました。でも、ある日、事件が起こるんです」。
その事件が、奮起のトリガーになったそうだ。
「社長が、私の店にいらしていたんですね。でも、私も若かったからかヘンな正義感があって、相手が社長だからって特別扱いを一切しなかった。そしたら『わかってない』って殴られたんです/笑」。
「店にいらしたら社長であろうが、一般のお客様だって一緒でしょ。むしろ、社長より、一般のお客様、優先ですよね。
だから、なんだこの人は、と思いましたね」。
それで、火がつく?
「そうです。辞めて欲しくない人材になって、見返して、それで辞めてやると誓ったんです」。
これが、20歳の時の話。
奮起した森山氏は、なんとわずか2ヵ月で店の売上を倍にする。口だけではなく、結果を残す人だ。
「店のなかでは、年上だって同じプレイヤーだと気づいたんです。サッカーだって、ピッチにでれば上下なんて関係ない。あれと、一緒なんだと」。
目指すべきゴールも、ある。走って、走って、パスをつないで、シュートすればいい。
「半年に1回行われる社員総会で、登壇します。優良店、店長に選ばれたからです」。突然の指名だったそう。登壇し、発表したのは、いうまでもなく、売上を倍にすることができた理由であり、その取り組みだった。急いで書いた手書きの原稿を読む。
「私の発表が終わると、いつもは、そんな会じゃないんですが、拍手が起こりました。いちばん年下だったから、よくやったって素直に拍手をしてくれたのかもしれませんね」。
スポットを浴びながら、壇上で頭を下げる森山氏の姿が目に浮かぶ。
でも、拍手だけでは終わらなかった。
「私のあとに社長が登場されるんですが、マイクに向かったまま、言葉がでないんですね。私の発表を聞いて、感動してくださったようで、その時は、言葉も忘れ、号泣されました。その姿を観て、『辞めて欲しくない人材になって辞めてやる』ことは、やめにしました/笑」。
それで10年ですか?
「そうです。ただ、10年で辞めようと思ったわけじゃないんです。さっき言ったように会社がつぶれてしまって」。
会社はつぶれたが、むろん、貴重な経験を積むことができた。自信もついた。何しろ、ある店舗では、40ヵ月、前月を上回るという奇跡を起こしている。
過去最高の売上を36ヵ月以上続けたことは、歴代月間最高記録であり、言うまでもなく大記録である。
さて、こういう経緯で、独立に至った森山氏。そのあと、どうなったのだろう?
「1号店は、前の会社の店舗を買い取りました。ええ、それなりの額でしたね。資金も潤沢にあったわけじゃないんで、借金からのスタートです」。
不安はなかったのだろうか?
「なかったですね。何も知らなかっただけなんですが、当時は、失敗するなんて思ってもいなかったんです。正直いうと今のほうが、不安ですかね/笑」。
ブランドである「サカナバル」を食のサイトで検索してみたが、高い点数がついている。「サカナバルは商標も取りました。カタカナと、ひらがな、で。おかげさまで業績も好調です」。
では、なにが、不安なんだろう?
「問題は、人材ですね。採用も難しい時代だし。育成も、難しい」。
「私たちが『水を飲むな』で育って、いまの子がその逆、というのと同じで、いまの子に、私たちが若かった時のような仕事はさせられないですからね」。
むろん、これは、サカナバルだけに限った話ではない。日本全体の問題だろう。たとえば、労働条件の改善。たしかに、改善は悪ではないが、心の弱い人間をつくる装置になってしまわないかと心配だ。ともかく、教育は難しい。
「日本人だけじゃなく、外国人もいます。アフリカ系の黒人の子もいて、かっこいいですよ。ええ、日本語もできるし、仕事も熱心です。もちろん、みんな魚を巧くおろせるように勉強しています。そういう意味では、魚に特化しているのは、プラスになっているのかもしれませんね」。
採用・育成に悩みがあるというが、スタッフとは、きっといい関係なのだろう。
「現在、弊社は5店舗出店しています。出店に関しては、会社としても無理や無茶はできないし、スタッフにもさせたくない。だから、出店も急ぎません。むしろ、スローペースがいい、っていうのがうちの考えです」。
「たしかに、たくさん出店されている会社さんは凄いです。でも、規模の大小が、幸福の尺度とは限らないと私は思うんですね。スタッフにもそう言っています」。
たしかにそうだ。
とはいえ、商標も取った「サカナバル」である。このまま、スローペースというのももったいない。フランチャイズなどは、計画しないんだろうか?
「ええ、じつはフランチャイズに関心があるんです。いま京都などの地方から出店のオファーをいただいているんですが、さすがに直営だと目がとどかないからフランチャイズでお願いできるところはないかなと思っているところなんです。都内より、むしろ、地方のほうが、いい結果がでるモデルですからね、サカナバルは。特にお魚が美味しいエリアで、出店できたらいいですね」。
「新鮮な創作シーフード」と「世界各国の美味しいワイン」をリーズナブル&カジュアルに楽しむのが、同店のコンセプト。
ともあれ、森山氏の人生で言えば、社長にみまわれた理不尽な鉄拳が、いまにつながっていると思うと面白い。これもまた、飲食の懐の広さと深さを証明しているような気がする。
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