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第774回 株式会社門崎 代表取締役社長 千葉祐士氏
update 20/03/10
株式会社門崎
千葉祐士氏
株式会社門崎 代表取締役社長 千葉祐士氏
生年月日 1971年9月13日
プロフィール 大学卒業後、就職した食品フィルム製造・販売会社を3年で退職し、1999年、地元岩手に焼肉店「五代格之進」を開業。東京などにも進出し、現在、岩手に3店舗、東京に9店舗、山梨に1店舗の計13店舗を展開。オンラインショップも展開済。自身も「肉おじさん」の愛称で知られ、数々のメディアにも出演。肉に対する熱い想いと、その造詣の深さで、業界でも一目置かれる存在である。行動指針は、「一関と東京を食で繋ぐ」「岩手を世界に届ける」。
主な業態 「丑舎 格之進」「ミートレストラン 格之進」「格之進 B」「格之進 82」他
企業HP https://kakunosh.in

奥羽山脈の麓、岩手県一関市。

牛の鳴き声を聴いて育った。今回、ご登場いただいた千葉氏の父親は家畜商を営み、牛の目利きでは東北でも知られた存在だった。
舞台は、岩手県の一関市。岩手県は三陸海岸で有名だが、一関市は内陸にある。千葉氏が小さい頃は、「川崎村」という名称だった。小学校は1クラスだけ。人口は少なかったが、自然の豊かさが魅力的な土地だった。
中学生になると、音楽に興味がわく。当時、流行っていたのはスピーカーとチューナーが一体化したオーディオコンポ。価格は15万円と安くはなかったが、どうしても欲しくなり、新聞配達をはじめる。朝4時半過ぎに起き、新聞を配る。毎月の給料から7000円を母に預けた。毎月7000円だから、2年でおよそ15万円がたまる計算になる。
いよいよコンポを買おうと、お金の話を母にすると「生活費に遣ってしまった」と言われ、その時はじめて、「うちが裕福ではないとわかった」と千葉氏は話す。

生産者と消費者をダイレクトに結びつける。

大学に進学した千葉氏は、いちばん時給が高いという理由で、個別指導の大手塾でアルバイトを始める。全国に130校あり、講師は山ほどいたが、千葉氏はそのなかで、売上3位の成績を残している。上位にランクインするのは、プロ講師ばかり。アルバイトは、千葉氏だけだった。
「『千葉ちゃんはすごい』って言われてました。じつは卒業したらそのまま、フランチャイズで、その塾を経営しようとも思っていたんです。でも大学4年のゴールデンウィークの時かな。営業部長から『新卒の就職活動は、一度しかできないから』とアドバイスをいただいて、たしかに、その通りだと。それで就職活動を開始します。1ヵ月ほど活動して、大手食品フィルムのメーカーから内定をいただきました。この時は、一千億円企業の社長になるのも悪くはないなぁ、と思っていました」。
この会社で、千葉氏は、ダイレクトマーケティング時代の到来を予想する。しかし、予想はしても、何を作るか、何を売るか、手段も方法も、知らない。
「やっぱり起業をしたいと考えていました。でもまだ20代でしょ。未熟なまま会社を辞めていいのか。そういう思いもあって相当、悩みました。ただ、一方で『ダイレクトにユーザーとつながるビジネス』というテーマは、頭から離れない。悩みながら、岩手にもどったある日のことです。牧場で飼育している牛が、モーっと鳴いたんです。その声でひらめいたんです」。
うちの実家はいうならば肉の原料メーカーである。
「アイデアはいいと思っていたんですが、ひとつ問題点がありました。牛の値段はセリで決まります。つまり、生産者に値段の決定権はないんです。それでは、私がいうダイレクトマーケティングではない。いろいろ悩み、セリに回さず消費することを選択します。消費といっても、私が食べるわけじゃない。直接、消費者に食べてもらう。そうすることで、生産者と消費者がダイレクトにつながるんです」。
「どちらが上とか下とかじゃなく、生産者と消費者は互いに影響を及ぼしている」と千葉氏はいう。その両者を結びつける手段として、千葉氏は飲食事業を開始する。
27歳の時のことだ。

オーダーできるのは、おまかせコースのみ。

理念はただしい。ただし、消費者は、理念では動かない。
「ダイレクトマーケティングができる形で飲食をやろうと思って、岩手県一関市に『五代格之進』をオープンするんですが、なかなかふるいませんでした。最高の黒毛和牛。でも、当時は輸入牛が一般的でしたから、それと比べると、比較にならないほど価格が高かったんです」。
工夫も重ねた。ただ、今思えば、裏目にでることも少なくなかった。韓国風の味付けにしてみたのも、その一つ。黒毛和牛は、肉に風味があり、甘みもある。だから、にんにくダレは、不要。試行錯誤の結果、答えは「そもそも肉が違うのだからほかを真似ても意味がない」だった。
そして、今ではポピュラーとなっている、「五代格之進」オリジナル「塩胡椒、山葵、ポン酢で食す」が生まれる。黒毛和牛の本来の旨味は、消費者を魅了した。
しかし、千葉氏は、まだ納得しない。
「牛肉といったら、ヒレやサーロイン、ロース、モモなどが一般的。ただ、うちみたいに一頭仕入れしないとわからないのですが、和牛は82の部位に分けられるんです。たとえば、カメノコ、サンカク、トウガラシ、ネクタイなどと細やかに切り分けられ、味もちがう。そういう部位ごとに異なる味も、ちゃんと楽しんでもらいたいと思ったんです」。
その思いが募り、2000年から「おまかせコースだけ」という思い切った作戦にでた。
「私が消費者の方に食べて欲しいと思ったものを食べていただく。これなら部位ごとに異なる味を楽しんでいただけますからね。そうしないと、無駄な肉がでてしまい、生産者という立場からすれば、つらいことです」。
単品を注文したい客は離れたが、大半の消費者は「コースオーダーだけ」にも好意的だった。それは、そうだろう。専門家が勧める今まで知らなかった旨い肉が食べられ、「肉」の世界が広がるのだから。
ただ、好意的といったが、繁盛しても原価をかけているぶん、赤字ギリギリだった。このあと東京に進出するのだが、それも青息吐息だった。と笑う。

食の未来は、生産者だけじゃつくれない。

「東京に来てからもたいへんだった」と千葉氏。岩手と東京の往復は、夜行バス。東京では、姉の嫁ぎ先の物置を借りて寝泊りした。
「店舗数としては、現在、13店舗まで広がりました。しかし、今も昔もですが、店舗数の拡大だけがテーマじゃない」。
「日本の食の未来を、消費者と生産者とともにクリエイトする」。これが、千葉氏のかわらぬテーマである。「消費者と生産者とともに」がポイントだ。生産者だけで、「食の未来」はつくれない。
だから、千葉氏は、店舗を単に「食事をしていただく場所」とは位置づけない。「生産者と消費者をつなぐハブだ」という。なるほど、連鎖の「鎖」だ。この「鎖」は、「証券取引所」の役割も担っている。つまり「格之進」で食事をした消費者は、次の生産に投資していることになる。
「安く仕入れ、安く売ればいいなんて店じゃない。お客さんだって、ぼくらの仲間だと思っていますから」。
この話のあと、千葉氏は「CSA」という聞き慣れない言葉をつかった。調べてみると、「コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチャー」の略で、アメリカで広がっている生産者支援型消費のことらしい。「消費者が支持する生産者」である。「これは、私たちのテーマにも沿った考えかたです。だから、うちは、CSAを推進するハブでもあるんです」。農家がいい肉を育て、それを消費者がハッピーな表情で食べる。この「連鎖」。同時に、消費は、投資となり、生産者をサポートする原資となる。

旨い肉は、言葉のカベもぶちこわす。

もちろん、肉に対する思いは、尋常ではない。「肉おじさん」を名乗るだけのことはある。何より愛情が深い。
「熟成肉」の生みの親でもある。ホームページでは、格之進の名物でもある塊焼きの焼き方も丁寧に紹介してある。肉汁をいかに閉じ込めるか。肉は焼いていると縮むと思っていたが、肉汁を含んだままの肉は、ふくらむのだという。
店舗運営だけではない。千葉氏の活動は、いまや多彩。
地方と都市を結びつける活動もその一つ。具体的には、生産者への訪問ツアーの開催や、生産者を招いた交流会、また、ストーリーを聞きながら希少部位を食す「お肉の解体ショー」など。
一関市長を東京に招いてイベントを開催したこともある。オンラインショップにも、むろん進出済。
あの有名なフードイベントの肉フェスでは、「門崎熟成肉塊焼き」が3年連続年間売上No.1を記録し、2016年に殿堂入りを果たした。
「去年の年末に、廃校となってしまった母校でもある小学校跡を借り、そこをうちの本社にしました。私が生徒だったころに走り回った体育館は、いまはハンバーグ工場になっています」。
「いつか、あのハンバーグはここで作られているんだ、というように広まって、海外からお客さんが来るようになればいいなと思います」。
一関市で行っているCSAの横展開も模索中。
「全国の各エリアに、一つずつハブになるような会社をつくります。だいたい30社ですね。各会社が年商30億円をあげると、約1000億円のマーケットが創出できます」。
とんでもない構想だ。額の話ではない。千葉氏が生みだそうとしている1000億円のマーケットは、そのまま生産者を育てる原資となる。社会のしくみ、そのものに真正面から向き合っている。壮大な取り組みでもあるからだ。人口減にも、目を向けている。
「2060年に、日本の人口は8000万人になると言われています。そうなると消費が減る。生産者の立場からすれば、海外進出はさけられないと思うんです」。
「よくパリ発とか、ニューヨーク発というのを聞くかと思います。あの発想というか、戦略って面白いもので、幸い、うちのお店は六本木にあり、六本木はいまや世界に知れ渡っています。だから、うちも六本木発のお店が、ニューヨークに上陸みたいな面白い展開ができるんじゃないかなと考えています」。
世界は一つになる。旨い肉は、言葉のカベもぶちこわす。千葉氏の話を聞いていると、あながちできない話ではないと思った。
ちなみに、我が国の食料自給率(カロリーベース)は、38%(平成29年)先進国のなかで最低の水準らしい。そのうえ、生産者は年々減っている。消費者である我々も、この事実と真摯に向き合うべきなのだろう。そうしないと、もう旨いものが食べられなくなる。

思い出のアルバム
 
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