寺久保進一朗
昭和14年生まれ。17歳の時には18代目として、父親の後を継いで店に入るようになる。永く続いている伝統を守りつつ、時代の変化と共に、経営方法にも工夫を凝らし、現在では販売だけではなく、包丁研ぎ教室・料理教室なども行っており、有次を成長させている。


  料理人になりたい人は結構います。最初は大変で辛い思いもするだろうけど、ほとんどの方はそうやって鍛えられます。
  まずは先輩を見習い、先輩の言う事をちゃんと聞く事。それと、なにくそと言う気持ちが大切です。そして、少し稼ぐようになったら、自分で食材を買って練習するとか、こっそり人より努力してる人は必ず伸びます。女の子を追いかけたり、車を乗り回したりして遊んでばかりの人は伸びないですね。まぁ、そのような人は私には近寄らないですけどね(笑)

  あとはわからない事があったら、近くの人に真剣に聞けばいいんです。例えば、庖丁の事なら庖丁屋、野菜の事なら八百屋、魚の事なら魚屋に聞くことです。一生懸命になって聞けば、答える方も一生懸命答えます。そうやってアンテナを広げていけば、成長に繋がります。決して何度も聞くのが恥ずかしいからと言って、わかったフリをしない事。わかるまで何度でも聞く事が大事です。答える方もレベルが上がるので。

  調理を心がけるという事は人様の命をあずかっています。美味しいのは当たり前で、正しく物を食べていただく事も考えてください。

  お客様の体も心も元気になった事に繋がれば、作る喜びが生まれます。もちろん、その責任も大きく付いてきますが。その分喜びも大きいはずです。

  それと先輩や経営者がしっかりすれば、若い人にもしっかりと、正しい食事を与える事ができます。そんな部分でも頑張って欲しいですね。
  日本食が世界で広がっているのは健康食だからです。輸入ばかりに頼らず、もっと安全で美味しい日本食を食べれば、食材が売れ後継ぎもきちんと出て来るようになります。

  仕事というのは楽しいものです。楽しく仕事をすることによってお客様にも伝わります。逆に渋々やっていたら、お客様に不快を与えてしまいます。

あと、うちに庖丁の研ぎ方を勉強するような方は伸びますよ(笑)


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一筋に五十年
まだ夢を追ふ
(夢は願わなければ、かなうまい)

これは、露乃五郎という先代の落語家の言葉です。

  錦の店を作るのに15年かかりました。それまで毎日毎日いろいろ考えてました。必死だったんですね。考えをたくさん書き留めたノートがあって、いざ決まったら早く動きましたけどね。

  それは今でも同じで、常に次の事を考えています。そう思うと、今の夢はもう少し自分が頑張って、次の世代の彼らが、こっちが眼を離してもまぁまぁやるなぁとならないかなぁと思いますね。まぁ叶うか叶わないかはわかりませんけど(笑)でも有次を存続させるためには、どうしても不可欠な事です。まだ私が見た方がいいのか、ある程度の時期にバトンタッチした方がいいのかの判断が難しいですね。19代に繋げるために。。。

小さい夢は、今晩何食べようかなぁとかですかね(笑)