「2時間待ってでも食べたい」。連日行列ができるつけめん店

「六厘舎」は東京・大崎にあるつけめん店です。JR大崎駅から徒歩6分という三等立地にもかかわらず、連日、遠方からもお客様が来店してくれ、「2時間、行列に並んでも食べたい」と長蛇の列を作ってくれます。店の規模は8坪・12席ですが、コンスタントに250人にご来店いただいております。本当にありがたいことです。

当店では“荒々しく、男らしく”を店のコンセプトに掲げ、男らしい超濃厚なつけ汁に極太麺を組み合わせた「つけめん」850円が看板メニューになっております。つけ汁は、豚骨、鶏がら、煮干し、サバ節などを使ったとろーりとした濃厚な味。麺は浅草開花楼の国産小麦を使った極太麺。それらにチェーシューを細かくほぐした“豚ほぐし”や煮卵などを付けています。

たっぷりの魚粉を海苔の上にのせたものをスープにのせているのも特徴です。通常、魚節は、いろいろな料理の隠し味に使われたりし、食べる時にその存在を知ることが少ないものですが、当店では海苔の上にこんもりとのせることで、見た目のインパクトも工夫しているのです。

つけめんを主体とした店なので、圧倒的に男性客が多のではと思われることが多いのですが、そうでもありません。女性の“おひとりさま”や年配の方も意外に多いのが特徴です。つけ麺フリークが存在するのですね。

“背水の陣”で生み出された商品が、後にヒットする!

もともと私は人に料理を作ってお出しするのが大好きでした。食べることも好きなので、サラリーマン時代に東池袋の「大勝軒」をはじめ、さまざまなラーメン店を食べ歩きしました。

中でも特につけめんにはまり、単なるつけめんフリークに留まらず、つけめん屋を経営したいと思うようになったのです。30歳の頃です。そこから約1年間は、いろいろなラーメン店で見習いをしながら、自宅でひたすらラーメンの味の研究を重ねました。

その後、東京・大崎駅から徒歩6分の住宅街に店舗をオープンすることになりました。最初は、年配の方なども意識し、地域住民の舌に合うようなあっさりしたつけめんを考案しました。万人向けの味を用意し、幅広く地元のお客様を集客しようと考えていたのです。しかしオープン1ヶ月目は、1日に30人しかお客様が来ないような日が続きました。

そこで「どうぜ店を潰すのなら、とことん自分のやりたいことをやってから!」と覚悟を決め、背水の陣で“自分の食べたいつけめん”を提供したのです。それが現在のヒット商品なのです。実は精神的に追い込まれたところから生み出された商品なのです。

“荒々しく、男らしく”という店のイメージに合わせ、超濃厚なつけ汁と極太麺を組み合わせて、スープも麺も、両方を楽しめるようにしました。そういう組み合わせが当時はなかったので、すぐに注目されるようになりました。ヒットを狙ったわけでもなく、ただ「悔いの残らないように、自分がやりたいことをやろう」と考えていただけでした。

しかし、新メニューを投入して1ヵ月後には行列ができてきました。その数ヵ月後には、口コミが口コミを呼び、長蛇の列ができてきました。現在では1時間待ちとか、時には2時間待ちという状況になっています。

左右の脳を駆使する&自分のラインを見つける――これがヒットの要因!

最近はよくみなさんに、ヒットメニューを生み出すには何が必要かと問われます。なかなか難しい質問ではありますが、私は“頭脳を全部使う”と返答しております。

現代は味の良さだけでお客様を呼べない時代です。味が良くても集客できない店があれば、味はまあまあという程度なのに、大繁盛している店もあります。何が違うのかというと、店の見せ方やバランスが違うのではないでしょうか。

当店で言えば、“荒々しく、男らしく”という無骨な店のイメージも魅力のひとつであり、もちろんつけめんの商品力も魅力のひとつになっていると思います。右脳の部分で五感を駆使した商品開発を行なう一方で、左脳でそれをどのように売り込んでいくか戦略を考えているのです。つまり“頭脳を全部使う”という発想で、私の場合はヒットが生まれたのだと思います。

私はサラリーマン時代に、上司などにたくさんおいしい店に連れて行ってもらいました。ミシュランガイドに載っているような高級店などにも訪れました。世の中にはいろんなタイプの店が存在しますが、私はその中で、“ガッツリ満腹系、庶民的、男らしさ”を自分の領域(ライン)だと考えて店をオープンしました。だから店のメニューも、それを表現できるつけめんを看板メニューに据えただけで、塩ラーメンや味噌ラーメンなどは揃えませんでした。

“シンプル イズ ザ ベスト”という言葉もありますが、あれこれメニューのバリエーションを広げたり、マーケット知識を生かしていろんな客層を取り込んだりしようとすると、繁盛が遠のくような気がします。

自分の勝負する領域、つまり“自分のライン”を見定めることもヒットの要因になっていると思います。欲を出していろいろ挑戦すると中途半端になることが多いので、潔く絞り込む勇気が必要だと思います。看板メニューを一本用意し、それに特化するということは、看板メニューへの自信がなくてはできないことであり、とても大事なことです。

ラーメンはプロレスのようなもの。例えば懐石料理などは日本の伝統技を忠実に再現するという料理ですが、ラーメンの場合は、既存の概念に捉われず、自由に自分の発想をかたちにできます。“どんなオリジナル技で戦ってもいい”という意味では、プロレスに似ていると思うのです。ひとつの丼にどんな創意工夫も詰め込むことができるのが魅力です。

いまの私の目標は“最高の若者を、日本一、輩出する会社になること”です。ラーメン業界を今後、より盛り上げくれる後輩を、どんどん輩出していきたいと考えております。

行列のできるつけめん店「六厘舎」
住所 東京都品川区大崎3−14−10
TEL 03−5434−0566
(全席禁煙、駐車場無し、ベビーカー・車椅子可)
営業時間 11時30分〜16時30分
※なくなり次第、終了
定休日 火曜日