年収1000万円〜3000万円の“ニューリッチ”を狙う!

 当社はビジネスマッチングを目的とした会員制バー「HOME’S BAR48」(東京・六本木)からスタートした飲食企業です。

 東京・六本木は、銀座や新宿などの繁華街に比べ、“ニューリッチ”と呼ばれる層が多いのが特徴です。年収1000万円〜3000万円くらいのIT系の社長など、いわゆる“ニューリッチ”と呼ばれる新興の富裕層は、六本木界隈で接待のために外食をする機会が非常に多いのです。

 こういった客層に照準をあて、当社ではバー業態をはじめ、和食系高級店を次々に出店して成長してきました。ニューリッチ向けの飲食店だけで現在6店舗を展開しています。

 中でも「御曹司きよやす邸」「銀熊茶寮」などは六本木にある客単価1万円〜1万5千円の高級和食店。一代で財を成したニューリッチ層は、富裕層の中でも、老舗料理店などではなく、現代的でスタイリッシュな店を好む傾向にあります。同時に食べ慣れた洋食よりも、おしゃれな和食店を好むのです。

家業から企業へ。成長にはリスクが伴う

私は現在、38歳ですが、昨年の暮れ、ひとつ大きな決断をしました。これまでのニューリッチに特化した事業の他に、ロードショープロジェクトという新しい取り組みをスタートさせたのです。

飲食には経営面とクリエイティブの両方の要素が必要ですが、私の得意とするのはあくまでも経営者という領分。私は飲食店で鍋をふった経験もありませんから、自分は経営面に専念すればいいと考え、思い切ってクリエイティブ面は、それを得意とする人々(集団)に任せていこうと考えたのです。

その第一弾となったのが、東京・祖師谷大蔵にオープンした「SUNS CASTLE」。手ごねハンバーグと釜焼きピッツァの洋食業態で、業態開発は株式会社ミュープランニングアンドオペレーターズさんに協力をお願いしました。

同様に、飲食プロデューサーの中村悌二氏とは、鮮魚と五寸鍋の居酒屋「赤坂仁屋」を出店しました。ダイヤモンド・ダイニング株式会社の松村厚久社長と、同社のデザイン部隊(チームファンタジー)とは、九州の郷土居酒屋「神屋流 博多道場」を出店しました。

俳優・三船敏郎の世界感を表現した「三船」は、総合美術に際コーポレーションの中島社長、監修に三船プロダクションなどを迎えて出店しました。

ビジネスの安泰だけを考えるのなら、従来のニューリッチに特化したビジネスを保守していけばいいのでしょうが、家業から企業へと成長するには、リスクを背負ってでも新しいビジネスモデルに取り組む必要があると考えたのです。

私の30代で、もっとも大きな決断のひとつが、このロードショープロジェクトであり、一番悩んだ時期がロードショープロジェクト始動の前夜なのです。

老舗和食店の出身者が、続々、転職してくる理由

高級和食店を展開する当社には、有名・老舗の和食店から転職してくる調理人も多いです。そういった人の採用面接時に、私は「あなたの過去はかいませんよ」とはっきりと伝えるようにしています。

伝統的な老舗和食店の中には徒弟制度の風習が残っている店も多いようですが、そういった価値観は当社のような新興企業では通用しないので、最初にあえてはっきり申し上げているのです。

実際、どんなに調理の腕がたつ人でも、コミュニケーション能力などが低ければ、現代の飲食店では活躍していくのは難しいしょう。当社の例で言うと、調理長はキッチンスタッフをどなりつけたりはしません。

仕事の指示を出す場合も、「○○さん、お願いします」ときちんと相手に気持ちが伝わるように、丁寧な言葉で真剣に話しかけているのです。相手を一人の人間として尊重するように、スタッフ全員が心がけているのです。

最近ではそういった当社のスタイルを気に入っていただき、老舗店からの転職組が増えてきているところです。当社としては、老舗和食店で厳しい修行に耐えてこられた方々に、“次のステージ”をご用意できればと考えています。

ビジネスは情報量が少ないと失敗する確立が高まります。この情報化社会において、人脈を駆使してさまざまな情報を得ていく姿勢は、飲食人にとってもとても大切なことだと思っています。