黒味噌や甘エビのスープ、渡り蟹のつけめん…etc 独創性で勝負!

 私は和食店で3年、フレンチで12年を経験した後、大手飲食企業で商品開発や新店の立ち上げなどの仕事を経験しました。もともと飲食好きな私がラーメン店を開業しようと思ったきっかけは、まずは自分自身がラーメン好きだったこと、あとはラーメンは低投資で出店できる業態だったからです。

 一号店をオープンしたのは2005年のこと。店舗展開に合わせて、二代目、三代目…と出店していく計画だったので、最初から店名に「初代」を入れました。「けいすけ」ブランドは代々続くけれど、いつもそれぞれ違ったかたちで、創作性と独自性の強い店を生み出していきたいと考えていました。

 「初代けいすけ」で世に放ったのは、竹炭を使った真っ黒い黒味噌ラーメン。もともと私は札幌ラーメンが好きだったのですが、「普通の味噌では個性は発揮できない!」と考え、黒味噌を使ったのです。しかもそこに独特の味わいの竹炭を加えることで見た目も真っ黒のオンリーワン商品を生み出しました。

 「二代目海老そばけいすけ」で使ったのは甘エビ。スープに大量の甘エビを使った海老そばは、これまでラーメンとは縁遠かった女性のお客様からも厚い支持を得ているところです。そして四代目では、渡り蟹や伊勢海老を使ったつけめんを考案しました。

老舗のある業態は強い証。ラーメンの老舗を目指して…

 このように私が店ごとに、ビジュアル的にも味的にも個性的な商品を生み出しているのは、“ラーメン業界の老舗になりたい”という想いがあるからです。

 私はラーメン店を始める前、居酒屋の運営に携わっていましたが、居酒屋の場合は10年、20年続いてもなかなか老舗にならない場合もある、ということを学びました。一方で、すしやラーメン、うなぎ、そばには老舗がちゃんと存在します。

 居酒屋はいろいろな料理を揃えているのが魅力ですが、最近では特に専門性の高い店が評価される時代になってきており、昔ながらの一品商売がより強さを増してきているのです。

 すしやラーメンのように、老舗の存在する業態は専門性が高く、景気に左右されずに強く生き残る場合が多いです。中でもラーメン業界には職人気質の人が多く、ひとつの味を長く追求する店が多いですが、当社ではおいしいだけではもはや売れない時代と考え、個性やインパクトもある商品を次々と生み出すことで「けいすけ」ブランドの魅力を強化したいと考えているのです。

 つねに新しいものを提案し続ける姿勢が、店の息が長く続いていく秘訣だと考えているのです。だからこれからも安住はしません。それが「けいすけ」らしさだと思っています。私は現在40歳ですが、30代はこういった自分らしさを確立するための大切な時間だったと思います。

大ヒットのつけめん商品で、一日16回転も!

 08年11月にオープンした「つけめん四代目けいすけ」もおかげさまで非常に好調です。近年、ラーメン業界ではつけめんブームが巻き起こっており、さまざまなつけめん商品が誕生していますが、当社では渡り蟹のだしをベースにした濃厚つけ汁を使う「つけめん渡り蟹の滴」850円(昼限定)を提供しています。

 一方、夜は、高級食材・伊勢海老のだしをベースにした「伊勢海老の滴」900円(夜限定)を用意。この商品ではさらに、茹で上がった麺をフライパンで表面焼きしています。つけ汁も麺もひと工夫したオリジナル商品を提供しているのです。

 「つけめん四代目けいすけ」はオープン初日から行列ができ、10坪12席の規模で月商600万円を売り上げております。一日に16回転しております。

 商品開発のポイントは一言で言うと、“半歩先を行く”です。“一歩先”になると意外にダメなんですよね。私のように飲食経験が長いと、どんどんメニューを開発したくなるのですが、やりすぎるとたいてい失敗します。

 あとラーメン店で忘れてならないのは、当たり前ですが、ラーメンは一品商売だということ。単純なようで、実はこれが非常に恐ろしいことなんです。私も最初の頃は、丼商売を甘く見ていたところもありましたが、“ひとつの丼ですべてが決まる”ということがわかると、丼一杯に真剣勝負にならざるを得なくなる。そして丼一杯のために男たちが熱くなるんです。この点もラーメンの魅力だと思っています。