ランチ導入3ヶ月で日商15万円アップ

今井店長が秋葉原店に異動したのは一昨年の10月。当時は月商1500万円の赤字店で、店内の空気は芳しくなく、スタッフのチームワークも悪くて士気が上がらず、全員ストレスが溜まっていたという。

今井店長はまず、11月からランチをスタートさせた。秋葉原店はビルの3階にあり、決して立地はよくないが、サラリーマンやOLの多い地域なのでランチ客が見込めると考え、500〜700円という安い価格での導入に踏み切ったのだ。安さをアピールするため、スタート当初はごはん・みそ汁をお替わり自由とした。また販促にも力を入れた。朝7時に地下鉄駅前に立ち、出勤前の会社員をターゲットに、ランチチラシを配り続けた。

最初は50人程度だったランチ客だが、口コミで客数が増え、3ヶ月後には250〜300人に。ランチだけで1日15万円以上を売り上げるようになった。月商にすると400〜450万円以上のアップだ。女性客も増え、ランチ客が夜も利用するようになり、全体の売上が伸びていった。

また今井店長は1日あたり10〜15人のお客様と名刺交換し、顧客名簿を作成。DMを発送することで着実に常連客を増やしていった。さらに外商活動も実施。毎日5〜6件、近隣の官公庁や企業をコツコツと回った。オープン3年が経過しているにも関わらず初めて来店するお客様が多かったのは、これらの努力の賜物だ。

2005年の平均月商が1600万円、06年には2200万円へと大幅に売上を伸ばしたわけだが、これは店内の体勢が整っていなければ実現できないことだ。当然、QSCレベルも着実に上げていったのである。



今井方針は「従業員を大切に!」

取材の折にオペレーションを拝見した。今井店長が全従業員に声がけをし、愛情を込めて指揮を執っているのが実に印象的。店が大好きでP/Aさんも大好きという気持ちが、見ているだけで伝わってくる。「従業員を大切に!」を第一のモットーとしているのがよくわかる。店長のリーダーシップとは、愛情そのもののこと。これがチームワークの向上と店の雰囲気アップにつながっている。

P/Aの採用基準を伺ったところ、ユニークな答えが返ってきた。一つは相手の目を見てきちんと話せるかどうか、もう一つは食べ物の好き嫌いがあるかどうかである。今井店長は15年間の店長経験を通じて、食べ物の好き嫌いがある人は、人間関係にも好き嫌いがあってうまく行かないことが多いことを実感しているそうだ。

ちなみに秋葉原店には外国人留学生のP/Aが多く、全体の3割を占めている。教育に時間がかかるものの、日本人学生と比べてハングリー精神が旺盛で、真剣に長時間働くという。(大丈夫か、日本人の学生は?)

この店のユニークな取り組みは、ホールスタッフを2班に分け、ゲーム感覚でセールストークの競争をしていること。各班を率いるのは2人のP/Aリーダー(班長)である。本日のおすすめ4品をどちらの班がより多く受注できたかを毎日競い合う。負けた班は売れなかった理由を考えて反省し、班長との交換日記などを通じて対策を練り、翌日の準備をするのだ。これによって全員が自主的にセールストークを考えるようになり、おすすめのしかたがどんどん上達している。意外なことに、ベテランよりも新人のほうが注文を多くとれることもあるそうだ。

ベテランには技術があるが、新鮮さに欠ける。新人にはワザはないが、心の鮮度が高い。「技術と新鮮さ」はいずれも重要。技術を磨きつつ、新鮮さをキープしていきたいものだ。



従業員は常連客に育てられる

秋葉原店には超常連客も多い。毎日この店をミーティングのため利用するお客様も複数組ある。毎日来店するため小さな変化にも敏感だ。「今日のホッケはいつもよりおいしかったよ」「テーブルへの気配りがちょっと弱かったな」というご意見から、新人には「班長ならこういうふうにサービスするよ」といったアドバイスまで、毎日具体的な指摘や指導をしていただいている。店も従業員も、常連客に育てられているのだ。

先日、3ヶ月前に退社した従業員がお客様として来店し、「3ヶ月でこんなに変わったの?」と驚いていたそうだ。毎日のことだから店長自身は変化に気づかないこともあるが、近ごろでは常連客から「今井店長が来てから店が大きく変わって、いい店になったね」と言われるようになった。すばらしい! リーダーとは変化を起こす主役のこと。今井店長を軸に、この店は確実に変化を遂げている。



元気良く・感じ良く・気持ち良く!

今井店長の異動当時には、提供時間が遅いという問題点があった。従業員の動きが鈍かったためだ。料理長とミーティングを重ね、すみやかに運ぶようにするから完成度の高い料理を出してほしいと要請。そしてホールの人員をあえて減らし、少数精鋭でキビキビと動くようにしたという。(少数が精鋭するのだ)

繁盛店の場合、お客様をお待たせすることもある。今井店長は、待ってでも入りたい店、待って良かったといわれる店づくりをしたいと語る。合言葉は「元気良く・感じ良く・気持ち良く」キビキビとした態度でサービスすることに徹している。これを実践するための基本中の基本は、従業員同士の挨拶の徹底だ。挨拶はコミュニケーションの要である。

店長と料理長とのコミュニケーションも重要。これがスムーズにいけば、店内のすべてのコミュニケーションが潤滑になる。このため営業前に料理長とミーティングをしたり、仕込みを手伝ったり、食事をしながら話をするなど、常に意思の疎通を図っている。もちろん、P/A全員との話し合いも欠かさない。

「もっと売上は上がります」と今井店長。「2700万円までは確実。まだまだ発展途上です」と語る。



不登校の高校生の人生を変えた4ヶ月

ある日、一人の女子高校生がアルバイトの面接を受けにきた。中学生の時いじめに遭って以来、登校がままならず、家に引きこもっているという。そんな彼女が、お母さんと一緒にランチに来店したのをきっかけに、この店で働いてみたいという気持ちになったのだ。お母さんの話では、病院で定期的にカウンセリングも受けているとのこと。仕事に支障をきたしそうだから採用には反対という声もあったが、みんなで話し合った結果、まずは仲間に迎えて見守ることになった。

最初は仕事がつらそうで、緊張すると気分が悪くなってトイレに駆け込んでいた。今井店長は、無理をせずに少しずつやってもらおうとみんなを説得。そうして毎日仕事を続けるうち、徐々に元気が出てきた。カウンセリングの先生からも「変わった」と言わるようになった。やがて常連客と笑顔で会話できるまでになったばかりか、学校の部活動(なんと演劇部!)にも参加するようになったのだ。

4ヶ月が経過した頃にはすでに学校生活が充実しはじめ、部活動も忙しくなっていた。お店を卒業する時が来たのである。「先生にもう大丈夫だと言われました。一丁さんで働かせていただいたおかげです」と涙ながらに感謝の気持ちを語るお母さん。こうして彼女は見違えるように元気な姿になって、お店を去っていった。

たった4ヶ月間ではあったが、彼女は今井店長や仲間たちに見守られながら日に日に成長し、人生を変えるほどの貴重な経験をして、大きく羽ばたいていったのだ。全国の飲食店の店長のみなさん、ぜひあなたたちの力で日本の若者の人生をよりすばらしいものに変えていっていただきたい!

感動をありがとう、今井店長。これからも素敵な店を創り続けてください。