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売上前年比131%、利益前年比218%の要因

 根生店長が池袋西口店に異動してからの10カ月間の売上は、9600万円。前年が7250万円だから、131%もアップしたことになる。利益も昨年対比で218%ものアップである。(会社に多大なる貢献をしていますね!)
 これらを達成できた主な要因は次の4点だ。
1.全員がお客様係
 店長が常にスタッフに言い続けているのは「お客様に心を寄せる」ということ。キッチン・ホール問わず全てのパートナー(スタッフ)がお客様係であり、全員がおもてなしできることを最重要課題としている。
 その基本は「とびっきりの笑顔と元気な声」。その上で、洋服のお預かり、紙エプロンの用意、お子様のためにぬり絵を準備、お客様のためにタバコを買いに行く、雨の日の傘サービス、染み取り、心のこもったお見送り等々、当たり前のことを徹底するよう指導。「対価を求めないサービス」というのが根生店長の口癖でもある。
 また根生店長は常に「“おめでとう!”を探す」よう、パートナーを促している。サプライズサービスをお届けするために、お客様の誕生日や記念日などの情報をゲットするという意味だ。

2.会員獲得
 赤から池袋西口店には3種類の会員システムがある。
@カード会員…甲羅グループ直営店で利用できるポイントカード会員。ポイントによる値引き特典あり。ゴールド会員へランクアップすると、ファーストアルコール無料、誕生日に赤から鍋プレゼントなどの特典も付く。
A学生会員…手羽先を毎回1人2本サービス。他のカードとの併用も可。現在、毎月250人ずつ増えている。スタートして6ヶ月で併売額が、月50万円を突破するようになった。
BLINE会員…会員は現在2300人以上で、赤から全店でもトップクラス。デザートプレゼントや10%OFFの案内など、月3回メール発信。月の併売額が40万円を超えた。

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 3.6つのミーティング
 今回私が最も驚いたのは、根生店長が6つのミーティングを実施していることだ。「これが私の一番の強みです」と店長が語るその6つのミーティングとは、次の通りである。
@全体ミーティング
 店舗の課題や改善項目などについて全員で話し合う。店長主導ではなく、パートナーリーダーがテーマ・内容を考え、司会をし、レジュメを作成し、ロールプレイングも行う。(すばらしい!)参加率は常時80%以上。
Aリーダーミーティング
 参加者は店長・料理長とパートナーリーダー6名。現状の問題点を話し合い、全体ミーティングの議題を決め、前回のミーティングにおける決定事項に関する進捗状況や数値を確認。リーダーの能力向上を目的としている。池袋西口店の心臓部ともいうべき、要のミーティングだ。
B入社時期別ミーティング
 ホールパートナーの入社時期別に開催。主に、QSC向上を目的としたディスカッションやロールプレイングを行う。
C戦略ミーティング
 売上、客数、客単価、人件費、利益などを把握する、数値に特化したミーティングで、店長が進行役。個人目標の設定や営業中の動き方(フォーメーション)、客単価を増やす動き方(ロールプレイング)なども学ぶ。(レベル高いですね!)
D覆面ミーティング
 覆面調査の問題点を全員で共有。改善点をグループディスカッションし、目標設定する。
Eおもてなしミーティング
 目的はおもてなし(=対価を求めないサービス)に対する意識向上。ディズニーランドにおける感動的なサービスの例を挙げて学んだり、プロジェクターを使用して第一印象や笑顔の大切さを再確認したりする。

 各ミーティングは、効率的で意義ある内容にするため、事前に宿題が出される。だが重い雰囲気はない。お菓子や飲み物を各自持参し、リラックスした状態でディスカッションを行うからだ。参加者が90%を超える場合が多いのもこのためである。
 多くのパートナーが参加してこのように多彩なミーティングを毎月行えば、人件費だけでも8万円の経費がかかるという。しかしこれが売上131%という結果につながっているのだ。読者の皆さん、ぜひ参考にしていただきたい。

4.パートナーリーダー養成(6名)
 池袋西口店にはパートナーリーダーが6名いる(ホール4名、キッチン2名)。根生店長はエリア店長であり、常時店にいられるわけではないという事情も手伝って、店長や料理長が店を動かすのではなく、パートナー主体でレベルアップしていく店にするべく、その中心となるリーダーを養成してきた。
 リーダーが全体ミーティングを企画・運営していくことで、リーダーシップや責任感は確実に身についていく。赤から全国大会でのグランプリ受賞も、店長ではなくパートナーリーダーが発表して獲得したものだ。
 蛭町彩美さんは、根生店長が信頼するリーダーの中の一人である。店長がこの店に異動してきた時はごく普通の高校生アルバイトだったが、今は大学生になり、キーマンともいうべき人材に育った。ご本人に話を伺ったところ、「根生店長の赴任前はパートナー同士や社員との関係はベストとはいえず、店の雰囲気もあまりよくなかったと思います。でも根生店長に接客の楽しさやチームワークの大切さを教えられて、赤からがどんどん好きになり、頑張ろうと思えるようになりました」とのこと。
 店長はパートナーリーダーのことを「私の想いを理解してくれています。信頼し、尊敬しています」と語る。
パートナーを尊敬するという店長の言葉に私は感動した。このようなチームは最強である。

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ユニークなスタッフ紹介制度

 この3月(年度末)に行われた採用活動では、問い合わせ38名、面接19名、採用5名という結果になった。4人に1人しか採用されない、狭き門である。
 採用ポイントは以下の通り。
@本気で赤からで働きたいと遺う想い(お金を稼ぎたいとの理由では採用しない)
A心からの自然な笑顔(表情を見る)
B「おもてなしとは何か」に対する答え(面接シートにこの問いがあり、返答をチェック)

 Bの質問は一見難しそうだが、「笑顔いっぱいの店」「ありがとう、おいしかったよと言われること」といった、率直な言葉が書かれていればいい。
 現在のパートナー在籍者数は31名で、すべて大学生。定着率は非常に高いという。
 赤からのパートナー紹介制度はユニークだ。新しいパートナーを紹介したら、紹介した人にもされた人にも1万円が支払われる。継続すると2人でトータル6万円支払われる制度だ。だがこの金額は一般的な募集広告にかける経費よりかなり安く、定着率も高まるとあって、なかなか素晴らしいシステムといえる。ぜひ参考にされたい。

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パートナー主体の様々な取り組み

 全体ミーティングで決定したことをすみやかに実行していく池袋西口店。これは、パートナーが中心となって積極的に様々なことに取り組む体制ができているためだ。
@ポスター・テーブルPOP作成
 店舗入口には、記念日のお客様の写真がいっぱい。アニバーサリー関連の告知ポスターや、手づくり卵焼きなどのおすすめ案内もある。またテーブルにはウェルカムカードやおすすめデザートの案内、歓送迎会のお品書きなどが並ぶ。すべてイラスト入りの手づくりPOPだ。
A毎日○○係を設定
 たとえば全体ミーティングで「今月のポイントカード会員目標(1日の獲得数)」が決定すると、その日のポイントカード係も決められる。係は「○時現在、獲得件数○件、今日の目標達成までにあと○件です」と、随時みんなに呼びかけて獲得を促す。
 今日のクレンリネス係、声がけ係などもいる。店長が不在でもパートナーが自主的に係を設定し、どんどん仕事が進んでいく。(本当にすばらしい!)
B笑顔表彰・声出し表彰
 全パートナーの無記名投票により、定期的に笑顔ナンバー1や声出しナンバー1のパートナーが選ばれ、店長から表彰される。選ばれた人の写真と表彰状が店舗入口に掲示されるため、本人はさらにやる気を出し、笑顔や声出しにますます磨きがかかるのだ。
C動画で挨拶・笑顔チェック
 お客様に呼ばれた時の「振り向きざまの笑顔」や「声を揃えての“いらっしゃいませ”」などの様子を動画撮影し、全体ミーティングやおもてなしミーティングでロールプレイングする際に、それを全員で見てチェック。(この店ではご案内時に「3名様ご案内です。笑顔で〜」と声がかかると、全員が笑顔で「いらっしゃいませ」と声を揃えて言い、頭を下げる)
 自分で考え行動できる自立型店長が求められる時代にあって、この店はさらに一歩進んで自立型従業員が活躍しているのだ。

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 取材の最後に根生店長はこう語った。「お客様の満足度向上と従業員が楽しく働ける環境づくりを、常に意識しています。会社としては顧客満足度が最重要ですが、私個人は従業員満足度が一番大切だと考えています」
 気骨のある、真の実力店長に出会うことができた。全国の店長が、あなたを目標にすることだろう。ありがとう、根生店長!