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売上前年比120%。3つの要因

 福園店長が泉店に異動してから6カ月。このわずかな期間で、580万円だった売上を700万円に向上(120%)させた。私の印象では、泉店の立地は決してベストとは言えないのだが、この快挙の要因は何だろう?
@商品力
 4つの看板メニューに磨きをかけた。基準を明確にし、完成度を上げ、デシャップでのチェックも徹底。たとえば「握りの極み」の場合、脂がほどよく落ちて旨みが凝縮される様子を五感で味わっていただけるよう、お客様の目の前で肉を炙るライブ演出をおこなっている。
A接客力
 「お客様の心に寄り添う接客」をスタッフに徹底指導。積極的に会話をしてお客様に喜んでいただき、常連客を増やしている。また、低価格の焼肉チェーンとは一線を画した落ち着きのあるていねいな接客を目指し、次のような動作を心がけている。
1.個室の開閉はていねいに
2.個室内には座って入る
3.「失礼します」の声がけの後、少し間を取ってから入る
4.ホールを走らない
5.所作は常に美しくていねいに
 これらを一つひとつ徹底して行うことで、950円の黒毛和牛がたいへん価値の高いお得なものになっていくのだ。
B店の雰囲気づくり
 店の雰囲気づくりのうまさ、それが福園店長の強みだ。空気感を高め、スタッフの一体感とチームワークを強めるため、コミュニケーションを頻繁に行う。コミュニケーションは量が肝心。日々の声がけも多いし、ミーティングもしっかり行う。全体ミーティングは焼肉を食べながら和やかに。スタッフ一人ひとりに対する対応もていねいだ。毎月アドバイスをしながら個別の目標を決定し、その結果発表まで実施している。
 「店の空気が売上をつくる」といわれる。売上が向上した泉店では最近、お客様からもスタッフからも「店の雰囲気がよくなった」という声が聞こえてくるそうだ。手応えを実感する福園店長である。

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店の再生ポイント

 業績の振るわなくなった店を立て直すことに長けた福園店長に、そのような店舗に異動後、再生させていくまででのポイントを伺った。
@個人面談
 スタッフ全員との面談を、1人30分〜1時間かけて実施。話を聞きながら一人ひとりのことや店全体の状況をつかんでいく。
A店の現状把握
 商品の品質、サービスの内容やレベル、客層など、現状の問題点や課題をチェックし、一つずつ明確にしていく。
B改善・指示・実行
 課題が明確になったら、改善のための指示を出し、徹底実行させていく。
 泉店は福園店長の指示のもと、このような流れで運営改善していった。上記の@ABをよく見れば、「PDCAのマネジメントサイクル」に当てはまることが分かるだろう。
Plan……仮説を立てて計画する
Do………仮説をもとに計画通り実行する
Check…仮説通りに結果が出たかどうか検証する
Action…検証の結果、仮説通りなら継続、違っていれば新しい計画を作り直す
 PDCAで特に重要なのはチェックである。チェックが甘いとPDCAサイクルは回らず、PDPDPD…と、PDのやりっ放し&繰り返しになってしまう。気をつけたいものだ。

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「サービスの基本」を徹底

 老舗焼肉店の店長として、サービスにこだわりを持っている福園店長。その根底にあるのは、やはり「サービスに対する基本的な姿勢の徹底」である。

 ここで、私自身の店長セミナーやブログでも取り上げている「サービスの基本」を少し紹介しておこう。
★お客様がとびっきりうれしくなる挨拶を心がける
★一日に何度も身だしなみを整える
★「はい」と明るく、心をこめて返事をする
★お客様のために何ができるか、常に最善を尽くして考える
★トイレは心をこめて掃除する
★一日に何度もきれいに手を洗う
★お客様の素敵なところをほめ、喜んでいただく
★スタッフ同士やお客様への言葉遣いを美しく
★お客様の顔と名前を覚え、自分のことも覚えていただく
お客様の素敵なところをほめる、これは常に心がけたいことだ。「いつもおしゃれですね」「お子様、かわいいですね、おいくつですか?」など、心からのほめ言葉でお客様を喜ばせたいものだ。

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頑張っている瞬間を見逃さない

 スタッフに対し、福園店長が常に気をつけていることをお聞きした。「いつも見ていること、ちゃんと評価すること、頑張っているときを見逃さずにほめること。ジャストタイミングでほめれば、スタッフはますますよくなります」…という。(すばらしい!)ほめることの目的は、その行動を強化することだといわれる。それを福園店長はよく分かっているのだ。
 福園店長の「ほめる」と「叱る」のバランスは9:1。たとえば「お客様と何を会話してたの? 趣味の話?スゴいね〜」とか、「おしぼりのタイミング、よく気づいたね」「バッシングがとても早くて助かったよ」「君はサラリーマンに人気があるなあ」等々、ほめ言葉の連発である。
 「従業員満足→顧客満足→ビジネス満足」というのは一般的な図式だが、私は「従業員満足」の前に“店長の高い人間性”があると思っている。それを実感させる、福園店長の話だった。
 福園店長が志賀本通店に勤務していた時のこと。家族連れの20代の女性客がこんな話をしていた。「子どもの頃から味樹園さんに通っていたね。この席に座っていたよね」…嬉しそうに語る様子を見て、店長は味樹園の長い歴史にあらためて感動したという。(このようなお客様を、生涯顧客といいますね)

 福園店長の夢は、味樹園の店舗が増えていき、いずれは幹部として活躍することだ。
 店の空気をよくして業績を上げることのできる、頼もしい店長だった。ありがとう!