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2年連続1000万円の売上アップ

 高林店の2012年度の売上は2億5000万円。2013年度は2億6400万円、2014年度は2億7200万円と、2年間で2200万円も売上を向上させており、2015年度も伸び続けている。
 本社からのQSC評価も90点以上で、トップクラスを維持。スタッフの定着率は何と100%だ。(見事ですね)順調な売上伸張のポイントを伺った。
@コト戦略の定着
 来店しなければ味わえない感動をお客様に与え、口コミでそれが広がった。例えば、前述した「お食い初め膳」や「一升餅」はスタッフが30分に及んで儀式のお手伝いをする。特別な時間を演出しているのだ。初孫の成長に涙するおじいちゃんやおばあちゃんも多く、慶事祝い全体の4割を占めるほどの人気である。
Aお待たせしない「おもてなし」
 高田店長の店長方針は「お待たせしないおもてなし」。高林店に異動してきた3年前の時点では、提供時間に問題があった。このためスピード提供に全スタッフの意識を集中させた。
 また法事の営業として、近隣の15寺にパンフレットを置き、当日はバス送迎を実施。売れる土・日の時間的ロスを徹底排除し、お待たせしないおもてなしを実行。売れるときに最大に売る、これに徹しているのだ。
B常連客500人を認識
 高田店長が認識している常連客は約500人。「うち半数はお名前でお呼びできます」と店長。異動3年目にしてこの数は、これまでに取材した実力店長の中でもトップクラスである。
 女将もまだ異動2年目だが、すでに300人以上の常連客を認識。「常連客が売上をつくる」ことを熟知している店長なのだ。
Cチームワークの要はコミュニケーション
 商品知識を高めるためのスタッフ教育として、季節メニューやフェアメニューの試食会を毎月実施。ただ試食するだけでなく、レポートも書く。商品について楽しみながら学び、同時に仲間意識も育んでいる。
 また、「甲羅ギネス」(過去3年間における、月ごとの最高売上記録)を達成した場合、表彰されて金一封が贈られる。高林店は毎月のようにこれを達成しているため、高田店長は何度も表彰されている。店長はそのお金で高級食材を購入。料理長と一緒に自らも料理の腕をふるい、スタッフにご馳走をふるまう。もちろん参加率は100%。ふれあって絆を深め、チームワーク抜群の店をつくり上げている。

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お客様から届いた感動メール

 あるお客様から高林店に一通のメールが届いた。「高林店の対応が素晴らしかったので、お礼を言いたくてメール致します」に始まる、お礼のメールである。
 その日、このお客様はランチのため家族で来店。お母様が杖をお使いで、クロークに杖を預けようとされたのだが、その時スタッフが濡れたタオルで杖を拭き、そのまま店内でもご利用いただけるよう配慮した。それが心に響いたという。
 お母様の足が不自由になられたのは最近のことで、落ち込んでいらっしゃったらしい。「店内をゆっくり移動する母を気遣い、食事が終わるまでの間もさりげなく気配りしてくださったおかげで、久しぶりに母の笑顔を見ることができました。とっても嬉しかった!」とのこと。
 実はその何日か前、親戚一同の食事会のため、高林店の近くに新しくできた店へで出向いたところ「杖を使用しての入店はお断り」と入店を拒否されてしまった。結局、全員怒ってその場を立ち去ったのだが、お母様はさぞかし辛かったことだろう。そんな出来事の後だけに、外食は相当ご負担だったに違いない。
 「対応の違いに驚きました。貴店の従業員教育の素晴らしさに、家族みんな感動しています。本当にありがとうございました」
 細やかな気配りによって、こんなにも人に喜んでいただける仕事なのだ。

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時給の80%は人柄で決まる

 このような素晴らしい対応を、どのスタッフも当たり前のようにできるのはなぜだろう。
 どうやら高田店長は、採用の時点から「人間性」をじっくり見ているらしい。まずは応募時の電話応対で50%が振り落とされる。言葉遣いやちょっとした印象が悪ければ、採用はしない。
 高田店長の、面接でのチェックポイントは次の通り。
1.笑顔が自然で素敵な人(笑顔の素敵な人はクレームがほとんどない)
2.一般常識を身につけている人(身だしなみ、礼儀)
3.着物の似合う人(スタッフもお店の看板)
 学生アルバイトの中で多いのは、親御さんからの依頼である。スタッフから素晴らしいおもてなしを受けたお客様が、「娘をこの店でアルバイトさせてほしい」と依頼してくるのだ。(これぞ、採用の理想型ですね)
 「素晴らしいおもてなし」は簡単にできるものではない。新人は女将やベテランスタッフに付いて気配りや気働きを学び、少しずつ成長していくが、慶事祝いが担当できるようになるまでには2年以上かかるという。
 時給が上がっていくのは人柄のいい人。これが甲羅の社風であり、文化である。ホスピタリティの原点は、人間力なのだ。

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定着率100%のコミュニケーション術

 抜群の定着率抜群の理由を高田店長にお聞きした。
@女将の存在
 男性店長には難しい、女将ならではの細やかなコミュニケーションをしてくれる。
A店内の雰囲気・空気感
 スタッフに対し、ていねいな態度と敬語で接する。女性スタッフに対する(調理場などの)乱暴な言葉遣いは許さない。大切にされていることをスタッフが実感すれば、その雰囲気はお客様にも伝わる。
Bほめると叱るは8:2
 お客様にほめられ、店長や女将にもほめられて、スタッフは自信をつけ、成長していく。しかし接客時の表情や言葉遣いが悪い時は、店長室に呼んで厳しく指導するそうだ。
C本人が成長を実感できる環境
 「お食い初め」「一升餅」「長寿祝い」などの儀式で、お客様に感謝される。時には涙を流して喜ぶ方も。お客様にとって人生の節目となる日に立ち会い、意義あるお手伝いをする。そんな感動のシーンを通じて、スタッフの心にスイッチが入るのだ。

 ある時、高田店長は朝礼で一人のスタッフを大いにほめた。ところが後で女将に「特定の女性を人前でほめすぎるのはダメです。私も頑張っているのにと、他の女性がやきもちを焼きます」と諭され、反省したそうだ。
 店長と女将の絶妙なコンビで、素敵な店を創り上げていると感じた取材であった。いい話をいっぱいありがとう、高田店長!今年も最優秀店長に選ばれると思います。頑張ってください。