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5年連続売上伸張の要因

 月商は5年で1000万円から1200万円にアップ。お好み焼本舗全店でベスト5に入る業績を上げ続ける要因は何か? 山岸店長にじっくり伺った。

1 食べ放題の導入と提供スピードの徹底
 お好み焼本舗は2010年11月から食べ放題を導入し、売上を向上させている。塩尻店ではそれと同時に提供時間のスピードアップも徹底。すみやかに提供できる体制を強化した。

2 初回客を常連客にする接客
 来店するお客様の3割が新規客、7割が常連客という塩尻店。一般に初回客が再び来店する確率は2〜3割といわれるが、どのようにして初めてのお客様を常連にしていったのだろう。
@食べ放題メニューのおすすめと商品説明
Aお客様との会話を増やす
B自分で焼くのが不安なお客様は、焼いてさしあげる
Cアンケート協力の方にDM発送
Dクーポン券で再来店を促す(平日10%、土日5%割引)
E店長自ら積極的に声がけをし、ていねいにお見送り

3 おこほん新聞、年50回発行
 塩尻店独自の取組みとして、2012年に当初は月に1〜2回程度だったが、現在は年50回発行している。特に学生客のコミュニティ紙として話題に。スポーツ新聞のようなレイアウトがユニークだ。グループで来店したお客様の写真を撮り、新聞スタイルに編集。人数分カラーコピーし、その場でプレゼントしている。(これはすばらしい!)この新聞には次のような効果がある。
@お客様が主役になれる
A部活動の部室に掲示してもらい、他の部員にもPR
B地域のコミュニティ新聞として活用
C学生客の増加(遠方からも学生の団体が多数来店)
Dフェイスブックやツイッターで評判拡大

4 バースデーDMで、月100万円の効果も!
塩尻店の顧客名簿は何と2万4千人分。これは塩尻市の人口の1/3にあたる人数である。地道にアンケート協力を依頼して、これほどまでの名簿になったのだ。単純計算すると、月平均2千人が誕生日を迎える。DM回収率は6%だから、うち120人が再来店することになる。2100円(客単価)×120人×4人(家族)=100万円の売上増が見込めるのだ。実際に週末は、多い時で15〜20組ものバースデーが入るという。

5 部活動のようなチームワーク
 塩尻市には大学が少ないため、30人のスタッフ中20人が高校生アルバイトである。まるで部活動のようにチームワークがよく、「お金を稼ぐためのバイト」という意識はあまりなくて、おこほんが好きで集まっている人が多い。店へのロイヤリティが非常に高く、明るくイキイキと働く彼らの姿は、近隣の飲食店店長がうらやむほど。高校生たちをまとめているのは21歳の副店長。年齢が近いため、気持ちがよくわかるのだ。
 スタッフとの個人面談や新人面談をひんぱんに行う山岸店長。LINEでの情報交換は毎日実施。また誕生日にはおこほん新聞を発行して祝う。(いいですね!)
 「今の時代はほめるのが主流ですが、中には叱って伸びる男子高校生もいます」と山岸店長。信頼し尊敬している店長から叱られることで、スキルアップできるのはすばらしいことだ。

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店が大好きなアルバイトたち

 採用活動の主な対象は、おこほん新聞の紙面に登場していただいた高校生たちだ。彼らに積極的に声がけ=スカウトしている。現在のアルバイトスタッフの70%も、このような声がけで採用した。
 お好み焼本舗の活気に満ちた、かつ一体感のある声出し(リード&レスポンス)に魅せられて、アルバイトをする学生も多い。また、高校を卒業して他地域の大学に進学しても、夏休みや冬休みなどの繁忙期には塩尻に戻り、アルバイトをしてくれる人も多い。みんなこの店が大好きで、愛着心があるのだ。

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販促隊長「○○君」割引

 この店には、ユニークな販促活動がある。
 ある高校の野球部キャプテンで、甲子園にも出場した地元の人気者・○○君は、ランチにもディナーにも訪れるほどお好み焼本舗が大好きだ。「○○君の紹介で来ました」というお客様が増えたため、山岸店長は「販促隊長“○○君”割引」というサービスを実施した。彼の紹介で来店した人は10%割引となる。おかげで生徒や先生、保護者や地域の人々などが次々とやってくる。その数は100人を超えるという。(すばらしい!)

ハイテンションのサービス

 スタッフの個性を活かしたサービスが自慢の塩尻店。熟成リブロースステーキ塊を焼く技や、とんぺい焼の仕上げに飛ばすマヨネーズビームをはじめ、独自のパフォーマンスも。
 ダンス部の男子高校生は、テーブルの前でターンして料理を提供。お客様から拍手喝采だ。トークがうますぎるスタッフもいる。店長のおもしろネタもウケる。スタッフのテンションの高さに、お客様も大いに盛り上がるのだ。
 だから塩尻店には熱烈なファンが多い。3年間続けて毎週2日来店するお客様、この店でのバースデーを毎年とても楽しみにしているお客様など、スタッフ一同にとっても励みになる、素敵なお客様たちがいっぱいだ。

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卒業式のDVDに号泣

 今回の取材で私がいちばん感動したのは、アルバイト卒業式のDVDである。卒業の日、本人の仕事中の姿や仲間のメッセージを盛り込んだ、メモリアル映像の上映会が行われる。
 仲間たちが待つ事務所は照明が消され、本人が入室すると上映が始まる。その最後に、まるで映画のエンディングのごとく、「君の活躍は塩尻店の誇りだった」という店長の言葉がテロップで流れるや、全員が号泣する。感動の涙で送り出されるこの卒業式は、塩尻店名物ともなっている。ここから新しい世界へと旅立っていくのだ。(すばらしい思い出になりますね!)
 もちろんDVDは本人にプレゼントされる。このような感動で結ばれているからこそ、卒業後のつながりも深いのである。
 実はこのDVD、3月の繁忙期に店長が一人で作成している。これほどまでスタッフへの愛情に満ちた店長に脱帽だ。店長がスタッフを愛するから、スタッフもお客様を愛するようになる。5年連続売上伸張のポイントは、まさにここにある。
 リーダーシップとは愛情のことだと、教えられた取材であった。ありがとう、山岸店長!