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おいしさと楽しさでおもてなし |
サガミの看板メニューは、大海老天ざるそば1410円(石臼による挽きたてそば)、みそ煮込和膳1540円(名古屋めしの王道)、自慢の手羽先450円(からあげグランプリと手羽先サミットで金賞を受賞)。いずれもこだわりの味である。
私が驚いたのはモーニングだ。315円でコーヒーにトースト、ゆで玉子、サラダが付く。味美店の場合、平日はシニア層メインに70〜80人、週末はファミリー中心に100人を超える来客がある。モーニングは低価格だが、続けてランチも利用する人が多いため、結果として収益が上がるという。
毎月最終日に開催する「晦日(みそか)そば」も楽しい。ざるそば食べ放題で、チャンピオン記録にも挑戦できる。SNSなどで評判が広がり、若者を中心に大人気。日本記録は56段だ。
今月は、好調なサガミの中でもひときわ手腕の光る、どの店舗に異動しても売上を115%向上させている春日井味美店の阿曽俊介店長にお話を伺った。
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異動する店すべて売上115%アップ |
阿曽店長がどの店舗でも売上前年比115%アップを実現させている要因は、次の通り。
@P/Aの意識改革
異動した店舗で阿曽店長が最初に行うのは、スタッフ全員との面談である。話を真剣に聞いて全身で受け止め、困っていることを尋ね、よいと思われることはすぐに実行する。このためスタッフはまず、「今度の店長は仕事が早い」と実感。これで心の距離がぐっと縮まる。
次に、店内の整理整頓・クレンリネスに店長が率先して取り組む。「きれいなほうが仕事がやりやすいね」「お客様にも喜ばれるね」と、わかりやすい言葉で基本を徹底させていく。
そして、スタッフ一人ひとりの良い点を徹底的にほめる。小さなことでも、また誰か他の人がほめていたという間接的な事柄でも、とにかくほめる。給与明細書には感謝の気持ちを書く(サンキューレター)。
これで店の雰囲気が変わっていき、一体感が生まれ、チームワークが向上し、全員の意識改革がどんどん進んでいくのだ。
A毎月の目標設定
味美店では、毎月テーマを変えてサービスやオペレーションの目標設定を行い、スタッフに刺激を与え続けている。たとえば「笑顔あふれる接客」「おじぎを丁寧に」「おすすめ商品のセールス強化」など。食器の配置や醤油さしを変えるといったちょっとしたことまで、毎月変化させているのだ。
これは、従業員の30%が10年以上勤続(最長25年のベテランもいる)のため、仕事への慣れにとどまることなく、日々変化を遂げながら進化していく意識を高めてほしいからである。
B常連客の増加(MS調査、社内トップクラス)
阿曽店長の方針は「売上と顧客満足度で地域一番店を目指す」だ。異動当初の味美店のMS調査結果は200満点中160点だったが、今は184点にまでアップ。異動前の店舗では年間平均188点だった。もちろん社内トップクラスの評価だ。
MSが180点を超えると売上が向上するといわれる。味美店もまさにその通りで、特に常連客が増え続けている。入口周辺にベテランスタッフを配置し、「いつもありがとうございます」「お久しぶりですね」と、上顧客を意識した挨拶でお迎えするのも、その表れの一つだ。店長は常連客を100人以上、ベテランスタッフは300人以上認識し、挨拶している。最近では、しばらく遠のいていた常連客もよく来店するようになったという。常連客が売上をつくるのだ。
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クレーム→常連客→店長ファンに! |
阿曽店長が以前勤務していた店舗で、あるときお客様からクレームが入った。50代のご夫婦がカードでお支払いの際、レジのミスで余分な金額をいただいてしまったのだが、謝罪して返金し、その場はおさまった。
2カ月後にこのご夫婦が再び来店したので、店長はすぐにおわびした。「気にしないでください」と言われたが、お帰りの際にもまたレジで謝り、外までお見送りをした。申し訳ない気持ちと再来店への感謝の気持ちがいっぱいで、車が見えなくなるまで頭を下げ続けた。その対応に感心したご夫婦から、「サガミにはすばらしい店長さんがいらっしゃいますね」と、本部に連絡が入ったという。
以来常連客となったご夫婦に異動の報告をすると、ぜひ一緒に記念写真を撮らせてほしいと言われ、3人で記念撮影。やがて味美店に、素敵な手紙を添えた写真が送られてきた。
何とこのご夫婦は今でも時折、「店長のファンだから」と言って、ご自宅から20キロ以上も離れた味美店に来店してくださる。この間にサガミは5店舗以上あるというのに!
「本当にありがたいお客様です」と阿曽店長は語る。(飲食店にはたくさんのドラマや感動があります。すばらしいですね)
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観察から記憶までしっかりと |
阿曽店長が店舗運営上で気をつけているのは、「観察・察知・推理・行動・記憶」。何事にも関心を持って観察し、状況を察して推理・判断し、速やかに行動してその結果を記憶に残し、誰にでもそれが実行・継続できるよう標準化するということだ。
たとえばアイドルタイムの利用客を増やすため、お客様の要望や動向に基づいて開発したのが、麺屋のそばガレット(そば粉のクレープ)。和食屋ならではのデザートが誕生し、モーニングチケットでも利用できるようにしたことで、アイドルタイムの売上が3倍になったという。
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「ありがとうがうれしい」を共有 |
サガミには「ありがとうがうれしい」という情報共有の仕組みがある。お客様からサービスのよさを「ありがとう」とほめられたら、店内の「ありがとうノート」に記入し、一番よかったものを毎月本社に報告。その中でより優れたものが社内報で紹介され、表彰される。お客様からのご意見は、お褒めの言葉、お叱りの言葉に関わらず、ネット上にて全店で共有されており、各店はそれを参考にしてサービスの向上に役立てている。
これ以外にも阿曽店長は、スタッフ同士のサンキューカードや給与明細書へのサンキューレターも実施。チェーン店でありながら、いいことは独自に行い、店長が変わっても維持できる仕組みを作っていく店長なのだ。
うれしかった最近の出来事は、年末年始の10日間で売上前年比が116%向上したことだという(売上115万円増)。「これはスタッフの能力が上がっている証。みんなにとても感謝しています」とのこと。
いいことはすぐ実行する、人間性のすばらしい実力店長だった。ありがとう、阿曽店長!
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