画像
売上好調の3要因

 山口店長は大学卒業後、アクション俳優として活躍してきたが、自分の能力や経験を活かせる安定した職を求めてNATTY SWANKYに入社した。まだ入社1年足らずの店長ながら、社内MS(覆面調査)ではトップクラスだ。さらに、NATTY餃子アカデミーの講師としても活躍。毎月、全店の新人アルバイトを対象とする教育(座学とロールプレイング)を担当している。「ダンダダン酒場のあるべき姿を体現すること」が、店長としての方針だという。
 売上を伸ばしている主な要因は以下の3点である。
@スタッフのコミュニケーション力
 池袋店はお客様との会話が多い店。おしぼり提供時からフレンドリーな会話スタート。餃子提供時には「何も付けなくてもおいしいので、まずはこのままでどうぞ」と一言添えるなど、笑顔で商品説明をする。
 5時〜6時の早い時間帯はコミュニケーションも多め。「お近くにお住まいですか?」「お仕事帰りですか?」などと気さくに話しかけ、この時間帯の常連になっていただくのだ。
A声出し・声がけの徹底
 ダンダダン酒場では、お客様に対する声出しと、ホールとキッチン間の声がけを徹底させ、活気ある雰囲気を創出している。
 お客様から声をかけられたら「ハイ、ただいま!」と答えてすぐ動くのはもちろん、スタッフの入店時(まだ私服)にも客席に向かって一礼し、大きな声で「おはようございます↑(語尾を上げる)」と挨拶する。お客様から拍手が起こることもあるそうだ。ユニフォームに着替えたら、ホールとキッチンそれぞれに対し「今日も一日よろしくお願いいたします」と気合いの入った挨拶をする。
 私は「気」は日本人の命だと思っている。活気、元気、やる気、勇気、負けん気、気迫、気骨、陽気、意気、雰囲気等々、日本語には「気」の付く言葉が実に多い。居酒屋は活気や雰囲気など、「気」がとても大切な空間だ。ダンダダン酒場にはそれが満ちあふれている。
B一生懸命さ
 「まだ仕事に慣れていない新人スタッフでも、一生懸命な態度だけでお客様に感動していただけます」と山口店長は言う。たとえばお客様の忘れ物に気付いた新人が、猛ダッシュで池袋駅まで追いかける。お客様にとってはそれだけで感動ものだ。
 山口店長は、東京旅行で来店した神戸の大学生に「おいしい餃子をおばあちゃんにも食べさせたい。何とかなりませんか?」と頼まれたことがある。ダンダダン酒場では冷凍餃子の地方発送は行っていないが、その大学生のひたむきな依頼に、店長は真剣に対応した。冷凍餃子を梱包し、餃子の焼き方を大きな字で書き添えて発送したのだ。もちろん配送費はいただかなかった。大学生から感謝のメールが届いたのは言うまでもない。
 お客様に喜ばれるなら、たとえ無理難題に思えても、できる方法を考えて行動する。一生懸命とはそういうことを言うのだ。

画像
飲食店の、ちょっといい話「感動の瞬間」

 ある時、大きなカバンを持った不機嫌そうな50代男性が来店し、カウンター席に座った。店長は何度も声をかけたが、ほとんど返答はない。それでもめげずに「今日はお仕事でお出かけでしたか?」と聞くと、「出張で…」と重い口を開きはじめた。
「俺の顔、恐いよね?今日は出張先で嫌なことがあったんだ」とのこと。店長が穏やかな笑顔で話を聞き続けたところ、最後にはそのお客様も「君と話せて元気になったよ。ありがとう」と、最高の笑顔を見せたそうだ。
 重かった気分がおいしい餃子と温かい会話でほぐれていく…ささやかなことだけれど、笑顔を取り戻せる素敵な時間なのだ。(飲食店は最高ですね!)
 またある時、今日入籍したというカップルの情報がスタッフから入った。花で祝福したいが、すでに夜の10時で花屋は閉店している。そこで店長が考えたのは、馬刺で形づくったバラの花。この花に有名銘柄の日本酒をおちょこで2杯添えてプレゼントしたのだ。女性は感激のあまり、目を潤ませていたそうだ。
 それから2週間後、このカップルが再び訪れ、店長に「明日の結婚式に出てください」という。残念ながら仕事の都合で出席は叶わなかったのだが、そのまた1カ月後、今度は東北のお母さんと一緒に来店。「この店長さんが、バラの花を作ってくれたんだよ」と、お母さんに紹介してくれたのだ。
 「娘がとても感動して、何度も何度もその話をするんです」とお母さん。こんなに喜んでもらえる仕事なんだと実感! 今ではこのカップルは超常連客である。(すばらしい対応に感動!)
 「私の力は、飲食業界で長い経験を積んだ店長にはまだ及びません。でも、お客様に喜んでいただこうという想いだけは負けないつもりでやっています」と山口店長。経験の長さではなく、お客様に対する想いの強さがすばらしいホスピタリティーを生むのだと、私も思っている。

画像
人を育てるのが店長の仕事

 店舗運営での一番の留意点は、看板メニューである餃子の完成度。焼き方や破れなど、ほんの少しでも不具合があったら、お客様に時間をいただいて焼き直し、お詫びのサービス餃子を付けて提供する。またウェイティングのお客様には何度も声がけし、小サイズの生ビールやお試し餃子をサービス。このため、ウェイティングで仲良くなったお客様同士、一緒に飲み会を始めることもあるそうだ。(誰もが仲良くなれる、街に愛されている店なんですね)
 スタッフとのコミュニケーションは、朝礼での大きな声出し、月1回の全体ミーティング(司会も内容もアルバイトリーダーが決定)、個別面談、毎日の声がけ3倍、給与明細書に添えるサンキューレターなど、多彩できめ細かい。コミュニケーションが良好だから、スタッフのモチベーションは常に高い。
 山口店長は「アルバイトを指導するのではなく、人を育てるつもりでやっています。社会で役立つ人になってもらいたい。思いやり、感謝の気持ち、向上心を身に付けてもらいたいですね」と語る。(すばらしい!)
 夢は、ダンダダン酒場アカデミーの学長になり、若い人を育てること。その姿勢で臨めば、夢は近いうちにきっと叶うよ。ガンバレ、山口店長!