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着実に売上を伸ばす実力店長

 今月お話を伺ったのは、横浜店の菅水桜店長。5年連続で売上前年比を105〜108%アップさせ(2015年は116%)、社内でもトップクラスのQSCオペレーションを実現させている女性店長である。本社から月商レコード賞、特別賞を受賞、MSは常に180点以上(200点満点)という実績を誇る、ダイヤモンドグループを代表する店長の一人だ。
 過去に取材した店長の中に、売上を前年の130%と格段に向上させた人はいるが、5年続けて105〜108%も伸ばす店長はそうそういない。これは相当実力のある店長だ。

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5年連続売上伸長の理由

 菅店長に店長方針を伺うと、「活気・スピード・ホスピタリティ」と即答。「活気」はお客様が生み出すにぎわいと、スタッフが作り出す元気な表情や声のこと。「スピード」は提供時間の早さとスタッフのてきぱきとした動き。そして「ホスピタリティ」は、お客様へのおもてなしの心とスタッフ同士の気遣い・思いやりを指す。
<売上好調の3要因>
1.高めの売上予算を全員で共有
 「会社から与えられた売上予算より高めにその日の予算を設定し、全員で目標を共有して達成を目指します」と菅店長。達成した場合は全員に感謝の言葉をおくる。またワークスケジュール表に「現在プラス○○円」「マイナス△△円」と、累計で表示。毎日の勝敗を報告していくことで、目標達成に対する全員の意識が高まるのだ。
2.常連客(リピーター)づくり
 ランチの常連客は80%以上だが、ディナーは常連客40%、新規客60%という比率。業態的に新規客が多いダイヤモンドダイニングの中では、(横浜駅前という立地条件からしても)40%はかなり高めの数字である。
 驚いたことに、この店にはお客様の名刺が1000枚以上あり、その裏にはすべてお客様情報の書かれたカードが貼ってある。なんと、似顔絵からファーストアルコール、注文メニュー、会話の内容まで記入されている。(すばらしい!)お客様との会話中や会計時に、スタッフが積極的に名刺をいただいているのだ。名刺を頂戴したお客様にはビール割引サービスを提供。だがお客様にとってそれ以上にうれしいのは、笑顔でのコミュニケーションだろう。
 店内で名刺獲得合戦も実施。シールを貼って競い合う。週2日勤務の学生アルバイトでも、月に45枚も集める。1位の人には店長からおいしい料理がプレゼントされる。
3.チームワークで楽しい店づくり
 この店のスタッフは「みんな本当に楽しそうに働いているね」とお客様からよく言われる。全員が学生アルバイトで、チームワークは抜群である。
 季節イベントも多彩だ。海の日、ハロウィン、クリスマス、バレンタイン、7周年記念では揃いのオリジナルTシャツを着て接客。楽しむのはお客様だけではない。スタッフの誕生日には全員から「おめでとう」のサプライズムービーが贈られる。
 新人スタッフに対しては、早く仲間たちを覚えられるよう18人全員の紹介名簿が渡される。出身地や大学、特徴などが書かれた名簿だ。(いいですね!)
 店のフェイスブックはスタッフが交替で作成。また月に1度のクレンリネス日には、閉店後全員で2時間かけて徹底的に清掃している。
 スタッフみんなで楽しみながら様々なことに取り組むので、チームワークや一体感が強まり、店へのロイヤリティあふれるスタッフがどんどん育っている。

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スタッフの定着率、100%

 スタッフの採用率は3割。この数字は実力店長の共通点である。スタッフ不足の昨今においてなおこの厳しい採用率は、かなり優れた学生を選んでいることの証とも言えるだろう。
 以下は採用のポイントだ。
@笑顔でアイコンタクト
A素直さ
B姿勢のよさ
 Bは、これまでの実力店長からはあまり出なかったポイントである。これは、礼儀正しくて所作が美しいと言う意味だ。
 この店では大学4年間、継続して働いてくれるスタッフが多く、定着率はほぼ100%とのこと。理由は次の通り。
@仕事が楽しい
A新人はベテランが徹底教育
B店長とスタッフとのコミュニケーション良好(声掛けの量)
C自分の存在が認められ、この店で必要とされていることを、一人ひとりが実感できる
D店長がお姉さん的存在で、愛情をこめて指導するため、自然に店への愛着心が強まる
 愛情いっぱいの店長だが、ほめてばかりいるわけではない。ほめると叱るのバランスは4:6だ。お客様に呼ばれる前のサービス、ビールの泡の状態、すみやかな動きなどについては常に厳しくチェック。きちんとできるよう繰り返し注意している。「お客様を自分の大切な友達や家族だと思い、心を込めておもてなしできるか、自分がお客様だったらどう感じるかなど、いつも想像しながらサービスしてほしい」と、菅店長はスタッフに言い続けている。

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店長が毎年号泣する日

 菅店長は月1回30分ずつ、スタッフ全員との面談を行い、今月の課題や来月の目標について話し合っている。
 またこの店には、スタッフのランキング表というユニークなものがある。1位のアルバイトリーダーから18位の新人までリストアップされ、頑張った人はみんなの評価(声)によってランクが上がるのだ。抜いたり抜かれたりするのでお互いに刺激になり、モチベーションも向上する。(面白い仕組みですね)
 菅店長にとって何よりも嬉しいのは、お客様がスタッフをほめてくれること。「この店での4年間で確実に成長し、社会に出てから大いに活躍できる人になってほしいんです」と語る。
 毎年大学の卒業式当日、スタッフは袴姿でご両親と一緒に店にあいさつに来てくれる。毎年必ずと言っていいほどお母さんから「とても楽しくアルバイトしていると、娘からいつも聞いていました。話すのはいつだって店長さんのことばかり。4年間、娘を支えてくださってありがとうございました」と、頭を下げられるという。
 「…そんなふうに言われるたび、こらえきれずにいつも泣いてしまいます」と菅店長。(すばらしい仕事をしていますね!)
 また7周年の日には、卒業したアルバイトたちが40人も店に集まってお祝いをしてくれた。
 店長がスタッフを愛しているから、スタッフも店長のことが大好きなんですね。素敵な話をありがとう、菅店長!