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売上前年比155%の3要因

 市橋店長は@笑顔 A丁寧なサービス B商品・盛り付けの美しさ、この3点を店長方針の要とし、キャスト(スタッフ)を徹底教育している。素晴らしい伸び率の要因は、次の通り。
1.移転リニューアル
 10カ月前、コンビニの跡地にリニューアルオープン。明るくて清潔感あふれる店になった。車のお客様も出入りしやすい。客層は平日がサラリーマン、土日はファミリーやカップルが多い。リニューアル後はきれいな店という印象が強まり、女性客が増加した。
2.元気・活気・一体感
 店内は元気と活気に満ちている。加えて女性店長ならではの丁寧なサービスも特徴的。キャストとの一体感や店の空気感のよさは、店長とキャストとのコミュニケーションが抜群だから。店の雰囲気やチームワーク向上のために「サンクスカード」も配布している。(詳細は後述)
3.いつ来ても変わらない味
 近江ちゃんぽんシリーズの商品シェアは70%。このため、いつも変わらぬ味を追求している。店長自身のこだわり意識も高いし、ベテラン主婦キャストの安定した味づくりも頼もしい。ベテランにはスキルがある。スキルと高い意識があれば、スタンダードは確実に維持できる。
 一方、新人にはスキルはないが心の鮮度は高い。この取材の前日、閉店間際にお客様からおほめの言葉をいただいたという。入店わずか1週間の新人が、オーダーを丁寧に確認し、元気よく声を出し、手が空いたら清掃する姿を見て「新人なのに一生懸命で素晴らしい!」と感心されたのである。フレッシュで真剣な姿勢とベテランの高いスキルが揃えば、感動のサービスが提供できるのだ。

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「あなたに会いに来たのよ」(ちょっといい話)

 入社してからの4年間で最もうれしかったことを市橋店長に尋ねると、二つ挙げてくれた。
 一つは、ある男子高校生アルバイトのこと。やんちゃで手を焼いたが、毎日繰り返し指導したことで働く姿勢や技術がどんどん身に付いていき、ついに今年入社して社員となったのだ。早く店長になりたいと日々頑張る姿を見て、とてもうれしいと語る市橋店長である。
 もう一つはフードコートで働いていた時のこと。「いつもありがとうございます」という言葉がきっかけで会話が徐々に増え、常連になったご夫婦がいた。ある時そのご夫婦から「ちゃんぽんもおいしいけど、あなたに会いに来たのよ」と言われたのだ。飲食業界に入って本当によかったと思った瞬間だという。
 「あなたに会いに来た」は、フードサービス業界人にとって一番うれしい言葉だ。この一言のために、店長やスタッフは毎日頑張っているのである。

キャスト採用のポイント

 以下は、市橋店長のキャスト採用ポイント。
@第一印象のよさ(笑顔・明るさ・清潔感)
A体育会系(チームワーク)
B誠実・素直(協調性)
 Aの体育会系は、チームで一つのことに取り組んだ経験があるかどうか、という意味。市橋店長自身、学生時代に10年以上ホッケーをやり続けてきたスポーツウーマンである。
 面接時に何を質問するかはたいへん重要だ。私の店長セミナーでも、質問内容についてよく相談を受ける。私は次のような質問をおすすめしている。
@なぜここで働こうと思ったか?
Aグループやチームで協力して一つのことに取り組んだことは?
Bこの1年間で自慢できることは?
C今一生懸命取り組んでいることは?
D最近、大切な人を喜ばせたか?
 Dの「大切な人を喜ばせる」ことができる人は、その対象が顧客に変わっても、それができる人だといわれている。

ファサードとトイレのクレンリネス徹底

 市橋店長が店舗運営上で気を付けているのはクレンリネス。ファサード(玄関とその周辺)とトイレは特に意識し、念入りにきれいにしているとのこと。
 またオープンキッチンなので、厨房のステンレス・食器・レードルなどの調理器具をピカピカにすることにもこだわっている。
 最近のある調査(※)で、居心地のいい店の条件を消費者に聞いたデータが発表されている。
1位:料理やドリンクにこだわりを感じる
2位:長時間ゆっくりできる
3位:店内やトイレが清潔
(※日経レストラン編集部/2016年2月発表)
 店内やトイレのクリーンさは、居心地のよさを感じる必須条件の一つなのだ。これはレストランに限らず、ラーメンやちゃんぽんの店でも同じである。

サンクスカードでチームワークアップ!

 市橋店長とキャストとの意思疎通手段で最も多いのは、声がけ(常に話しかけている)とグループLINEでの密な連絡だ。
 キャストに対するほめると叱るのバランスは7:3。ほめることを意識している。厳しく教育することもあるが、大切に育てたいという気持ちが強い。
 私が特に良いと思ったのは、この誌面でも何度か紹介してきたサンクス(ありがとう)カードの活用である。ちゃんぽん亭ではこのカードに感謝の言葉を記入することによって、キャスト同士や店長とキャストとのコミュニケーション向上に役立てている。サンクスカードは店内で月に40〜50枚配布。店長からキャストへは次のようなタイミングで配布されている。
@土日のピーク後(お疲れさまのねぎらいとして)
A急な出勤や延長を頼んだ時
Bお客様アンケート(コミュニケーションカード)でキャストがほめられた時
C笑顔いっぱいで接客した時
D新しい仕事を覚えて成長した時
毎月、一番たくさんのサンクスカードをゲットした人は、ドリームフーズの3000円の商品券がもらえる。(いいですね)
 市橋店長は、矢橋店に異動後しばらく経って、キャストから「矢橋店に来てくれてありがとう」と書かれたサンクスカードをもらったそうだ。以来、キャストからもらったカードは全て保管しているという。

 今後の夢は、矢橋店の売上を向上させることはもちろん、女性の社員や店長がもっと増え、女性たちが輝いて活躍できる会社にすることだという。
 「あなたに会いに来たよ」と言われる人でいっぱいの店を、これからも作り続けてください。ありがとう、市橋店長!