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24時間営業の繁盛店

やぶやグループの役員は現場が大好きで、社長も副社長も店に出ることが多いという。現場を大切にするその姿勢が無借金経営を実現させ、利益率25%を超える店を多く生み出している。
 今池本店は月商1300万円、24時間営業の繁盛店。看板メニューは味噌とんちゃん600円、知多半島大あさり浜焼き580円、どて味噌ヒレ串カツ250円(1本)で、名古屋めしも充実している。
 徳峰浩則店長が挙げる24時間営業のメリットは次の3つ。
@お客様にとって、いつでも開いている利便性と安心感がある
A従業員はどの時間帯でも働ける
Bアイドルタイムに効率よく仕込みができる
 平日のピークは午後7時〜12時だが、12時〜午前3時も、深夜のサービス業に従事するお客様でにぎわう。土・日は昼飲みや食事のお客様が多く、平日の2倍の売上になるという。

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売上好調の3要因

1.元気・活気・明るさ
 義理と人情を大切にする古き良き居酒屋を目指しており、店内のあたたかい雰囲気づくりには手を抜かない。入りやすいファサードや、お客様が来店して3秒以内の活気あふれる挨拶を、常に意識している。
2.七輪焼きメニュー50%以上
 名物七輪焼肉と七輪海鮮焼き、七輪やさいホイル焼きを中心に、地元愛知県産の食材にこだわったメニュー満載。名古屋人や出張族に人気だ。また味噌・塩とんちゃん+豚ハラミの「やぶちゃんセット」999円は、初めてのお客様に大人気。月に500セットも注文が入る。
3.チームワークと一体感
 今池本店における従業員のコミュニケーション量はかなり多い(店舗や会社の行事については後述する)。店長からスタッフへの声がけが多い上、グループLINEも有効活用。例えば新人がLINEで自己紹介すると、すぐに全スタッフから「よろしくお願いします」と返信がある。シフトスケジュールを店長が送信すれば、やはり全員から1時間以内に「ありがとうございます」の返信。こまめなやりとりが一体感を高め、チームワーク向上へとつながっていくのだ。

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店長はどこを見るか?

 私はクライアント先での「実力店長養成講座」で、店長たちに「2:6:2の法則」(優秀な人が2割、普通の人が6割、能力の低い人が2割で構成されるという組織論)について、自店の現状を尋ねることがある。徳峰店長にもそのバランスを聞くと、何と「5:5:0」との返答。たしかに定着率が高くベテランの多い店ではあるが、優秀なスタッフが5割というのはすばらしい数字である。
 スタッフの9割は学生。その採用ポイントを伺った。
@第一印象のよさ(身だしなみ、清潔感)
A元気で明るい笑顔
B素直さ(経験者よりも、素直な人のほうが伸びる)
C夢・目標がある(飲食店での仕事は、将来的に社会に出てからも活かせる)
 「失敗しても一生懸命やる人を応援したいですね」と徳峰店長は言う。お客様もそういう人を評価してくれるのだ。
 ピークタイムに徳峰店長はどここを見ているのか尋ねた。
@お客様の表情や仕草(満足度)
Aスタッフの様子(態度、言葉遣い、声出し、動き)
Bテーブル周辺(火具合などの七輪のケア、網・おしぼり交換)
※七輪でのおいしい焼き方は、やぶ屋の重要項目である。
C全体の流れ(入口周辺、ご案内やお見送り)

スタッフの「自己重要感」を満たす

 自己重要感とは、「自分が価値ある存在である」「人より優れた部分を持っている」「人から尊敬されたい」という感情のこと。徳峰店長はスタッフにこれを実感してもらいたいと考えており、そのためにスタッフをほめることや感謝の意を伝えることを常に意識しているという。ほめられることで初めて、人は自分の重要性を認識できるのだ。店長の皆さんはぜひとも満面の笑みを浮かべ、大きな声で「すごい・さすが・すばらしい」(ほめ方の3S)と言ってスタッフをほめよう。
 徳峰店長の「ほめる」と「叱る」のバランスは8:2。叱る場合も注意する程度とのこと。出勤したスタッフや仕事を終えるスタッフに、徳峰店長はいつも笑顔で一言かけている(ワンスマイル・ワンメッセージ)。「笑顔が素晴らしいね」「仕事がとても早くできるようになったね」「その改善提案、最高!」等々、ほめ言葉ばかりである。ほめることでその行動がしっかり身に付き、いっそう強化されていくのだ。

人と人をつなぐ行事

 この店では、食事会や誕生日会を毎月実施している。誕生日会では全員から小額ずつ集めて本人にプレゼントを贈る。もらった人は次の誕生日会の幹事を担当。次の人とコミュニケートしながら、喜んでもらえるプレゼントを考える。新人にとっても人間関係を築く場となる。
 またやぶやグループでは毎年、海外旅行を実施している。本人負担50%だが、アルバイトも積み立てをして参加する。旅行先での食費は全て会社負担なので、個人出費は少ない。この店も学生アルバイト6人がグアム旅行に参加した。学生が仕事を通して、初めて海外旅行を経験する人も少なくないという。さすが義理と人情を大切にする会社だけあって、あったかさに満ちている。

定着率の高さ=店長の「感謝力」

 学生アルバイトの定着率がほぼ100%という今池本店。驚異的な数字の理由は何だろう。徳峰店長の答えは次の通り。
@店長からのコミュニケーションが多い(声掛け3倍)
A店長からの「ありがとう」が多い(全スタッフへの感謝)
Bお客様から「ありがとう」と言われる接客(新人教育)
 Bは、お客様に喜ばれ、また来ていただくための接客教育だ。笑顔で気配り・心配りに満ちたサービスをすれば、必ずお客様に喜ばれる。喜ばれれば仕事がますます楽しくなり、仕事のすばらしさが実感できるようになる。その頑張りに対し、いつも店長から「ありがとう」と感謝されて、スタッフは「この店のため、この店長のためにもっと頑張ろう」と思う。こうして定着率が高まっていくのだ。

 徳峰取締役店長の今後の目標は、次の店長やブロック長を育てることだという。とてもEQ(心の知能指数)の高い実力店長だった。お話をありがとう!