採用のポイントは、第一印象・やる気・健康

さあ、いよいよ伝説がはじまるよ!
●日本一売れるお好み焼屋にするのが夢
●日本一お客様の笑顔であふれかえる店にするのが夢
●お客さんが「大阪に行きたくなったわー」って言ってくれるのが夢
●「味も美味しかったけど、ココの仲間が、人間が【一番商品】やねえ」って言われるのが夢
●誰もがおすすめしたくなる店にするのが夢
●誰もが働きたくなる、帰りたくなくなる空間にするのが夢
●誰もが笑顔あふれる空間にするのが夢
●誰もが自慢したくなる店にするのが夢
●今日「ハジメマシテ」のお客さんに「また来るよ」じゃなくて「明日来るよ」って言わせる店にするのが夢
●「あつかましい」ぐらいのお世話を【仲間】にも【お客さん】にも焼くのが女将の仕事

この夢を叶えるために、以下のことをみんなに約束します。
1.弱音や「絶対無理」というマイナス発言はしない
2.いつも一生懸命
3.いつも元気、いつもとびっきりの笑顔
4.いつも気持ちのいい挨拶
これが出来なかったら、遠慮なく言ってやー。 

 熱い想いがほとばしるこの文を書いたのは、向山店に教育店長として赴任2ヶ月の河合女将。この「女将の夢」は向山店の前に勤務していた浜松中沢店のグランドオープン時に作成したもので、そのオープン初月の売上は、何と2385万円! 郊外のお好み焼店としてはスゴイ数字だ。今月は、この数字を導いた立役者であり、2006年度の優秀店長賞にも輝いたパワーあふれる河合女将に、グランドオープン時のP/A教育を中心にお話を伺った。
  物語コーポレーションの理念は「スマイル&セクシー」。接客コンセプトは「とびっきりの笑顔と心からの元気」。河合女将の笑顔は正にとびっきりだ。取材時に顔写真を撮らせていただいたのだが、筆者のカメラ操作ミスで何度も撮り直しをしたにも関わらず、素敵な笑顔を絶やさなかった。どんな時でもすばらしい表情を作れるのは、実力店長の証だ。

 



2週間で「お客様喜ばせスペシャリスト」を育てる

グランドオープンまでの訓練期間は2週間。
新人教育のテーマは「2週間でお客様喜ばせスペシャリストを育てよう!」である。オープン時には、スタッフ全員がお客様喜ばせスペシャリストとしてお客様をお迎えするのだ。
  まずは大阪弁講座からスタート。「いらっしゃいませ まいど」「まいどおおきに」「まいどあり」が基本の挨拶。浜松や豊橋であっても、大阪に来たような臨場感、個人店のようなフレンドリーな雰囲気と人間的な魅力を出したいからだ。そして毎日30分、駐車場で発声練習をした。そのポイントは以下の通り。
1.活気:とびっきりの笑顔と心からの元気。
2.チームワーク:みんなで一つの目標に向かい、卓越した結束力で臨む。
3.テンションアップ:自分自身の気持ちを最高潮の状態に持って行く。
  「スポーツ選手は、大きな声を出すことで適度な緊張感とリラックス感を作り出してい
ます。お好み焼屋本舗だって同じ。毎日が試合なんです。自分のテンションと仲間のモチ
ベーションを上げて、お客様に元気を与える。これがホールサービスの役割です」と河合女将。(さすが!)
  集合教育ではレスポンス(反応の良さ)を重視。タイミング良く、リズム良く、テンポ良く、がポイント。声のトーンも大切だ。また「鉄板コミュニケーション」と呼ばれる、お好み焼の焼き方講座も行われる。お好み焼本舗ではお客様と一緒にお好み焼きを焼くので、これは非常に重要な教育となる。



オープン直前、仕上げのトレーニング

オープン2日前には訓練も佳境に入る。それまではほめて伸ばして気持ちを高めてきたが、ここで緊張感を持たせるために全員をわざと叱責する。「こんなレベルでお客様からお金をいただいていいのか!」と、喝を入れる。一気にレベルを上げて仕上げるために、女将は鬼になるのだ。オープン前日も「明日からお客さんが来るんだよ!」とプレッシャーをかける。絶妙のタイミングで自信と緊張感の両方を与えることのできる女将なのだ。
  そんな最後の仕上げの日に、オープン日を1日間違えた家族連れのお客様が来店した。
普通ならお帰りいただくところだが、河合女将は「オープンは明日ですが、よろしければお客様役をしていただけませんか?」とお願いしたのだ。お客様は快く受けてくださった。
実際のお客様を相手に貴重な営業訓練の仕上げができたのである。代金を支払うというお客様の申し出は、もちろんお断りした。お礼を言うのはスタッフのほうだからだ。
  このお客様はいったん店を出てから30分後に、20個ものケーキを携えて再び訪れた。お礼の気持ちとのこと。これには全員感動し、自信を持ち、みんなの気持ちが一つになって、一段とチームワークがアップした。こうして2週間に渡った「お客様喜ばせスペシャリスト」育成トレーニングが完了したのである。




高一アルバイト、入店2日目の感動エピソード

河合女将が一番かるび(物語コーポレーションが運営する焼肉チェーン)藤枝店の店長を務めていたときのエピソードを紹介しよう。
  ある日、高校一年生の伊藤君という、すこぶる体格のよい男の子が面接にやってきた。
生まれて初めてのアルバイトだという。素直で元気いっぱいで、どんな質問にも「大丈夫です。頑張ります」と答え、採用された。 2日目を迎え、バッシングの指導をしているうちに店がだんだんと混んできた。そこで河合店長は「私はみんなを助けてくるから、バッシングをお願いね。お客様をちゃんと見て、『いらっしゃいませ』『ありがとう』としっかり言うこと。お客様の隣の席を片付ける時は『失礼します』と一言お断りするんだよ」とだけ伝えて、伊藤君のそばを離れた。
15分程度のつもりだったピークは思いのほか長引き、店内が落ち着きはじめた時には1時間以上が経過していた。忙しさにかまけて、伊藤君を放置してしまったのだ。
  40代ぐらいの夫婦連れのお客様に「ちょっと店長」と声をかけられたのは、レジで会計の対応をしていた時である。「あそこで片付けをしている男の子を呼んできて!」と言われたのだ。思わず「ガーン!」となった。大
クレームかもしれない!「何か失礼がございましたか。責任者は私ですので、承ります」とあわてて返答したが、お客様は「いいから呼んできて」と繰り返す。急いで伊藤君のそばへ行き、「レジのお客様とお話しした?」
と聞くと、「はい」との返事。「何か失礼があった?」「覚えていません」「お叱りを受けたら一緒に謝ろうね」「僕、何かしましたか?」「わからないけどお客様が呼んでるから、とにかく行こう」…というわけで、二人
でお客様のところへ戻ったのだが、お客様は伊藤君と顔を合わせるなり、こう言ったのだ。
「君、いいよ! すごく一生懸命だね。お客さんをきちんと見て、誰よりも大きな声でハキハキと挨拶していたね。私は最近の若者がこんなに一生懸命仕事をするとは思っていなかったよ。とてもいい気分になった。これからも頑張れよ。辞めるなよ」…そう言って、1000円のチップを伊藤君に渡したのである。
伊藤君も店長もびっくりし、うれしくなり、ありがたいことだと思った。
  だが、店長は同時に恥ずかしさも覚えた。
ホールにはその時、店長自身やベテランも含めて7?8人のスタッフがいたのに、最も強くお客様の印象に残ったのは、入店わずか2日目の伊藤君だったのである。彼にできたのは、片付けをすることと挨拶だけ。なのにそのひたむきさがお客様の心を動かしたのだ。
  「誰にでもできることを誰にも負けないぐらい一生懸命やれば、感動を生むことができるということを、15歳の少年から学びました。
それ以来私は、どんなに小さなことでも絶対に手を抜かないと決めました。誰にでもできることを誰よりも真剣に、ひたむきに。それが私の信条です」と河合女将は語る。
  すばらしい! これを聞いたとき筆者の胸に熱いものがこみ上げてきて、不覚にも涙をこぼしてしまった。取材中にこのような状態になるのは、実に久しぶりのことだ。
  最後に、河合女将の今後の抱負を伺った。
「女の子がイキイキと働ける店にしたい。女性がもっとスポットライトを浴びることのできる企業にしたい」とのこと。このルポがその引き金になるといいね、女将! 感動体験をありがとう。日本一のパワーをありがとう!