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月商900万円から1500万円へ

 長らく店長教育のお手伝いを承っているご縁から、70ヶ月(6年)連続売上前年比アップという北千住店の功績には着目していた。6年前には月商600万円の赤字店で、本部としては撤退も考えたという。だがリニューアルをして月商900万円で好リスタート。このときの店長が、今回お話を伺った松下信太郎店長である。
 松下店長はその際、将来1500万円を売り上げる店にすると目標設定。そして6年後の現在、繁盛月には実際に1500万円以上の売上を誇る店に育て上げたのだ。(目標も大きいが、達成したのはスゴイ!)計算上では毎年100万円アップしており、客数にすれば毎月580人ずつ前年より増やしてきたことになる。「客数こそ未来への力」を実現し続けている実力店長である。

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6年連続売上伸張の3要因

1.豊富なメニューと充実した季節メニュー
 北千住店にはグランドメニュー以外に45日ごとに変わる季節メニューがあり、その数は30品目以上。飽きさせない工夫である。また女性客が7割で女子会やママ友の予約が多いため、女性に好まれる野菜メニューやハーフサイズを充実させているのも特徴だ。
 松下店長は手づくり感のあるメニューをスピード提供できるよう、キッチン中心のオペレーションを実施。キッチンのメンバーには「お客様のワガママを聞くのがキッチンの仕事」だと指導している。(すばらしい!)
2.いい空気でチームワーク向上
 店内で気遣っていることを松下店長に尋ねると、「一番は空気です」とのこと。店の雰囲気や一体感のことだ。なれ合いの雰囲気や緊張した雰囲気ではなく、自由な心地よさの中にも規律が感じられるのが理想的な空気である。空気がよければスタッフのモチベーションは上がる。
 松下店長は出勤時のスタッフの様子を気を付けて見ている。店の空気はスタッフの体調や心の状態によっても変わるのだ。調子が悪そうなら面談したり、笑顔で冗談を言いながら元気づけたりし、こまめにスタンドミーティングを行う。コミュニケーションは量が肝心。声かけ3倍で、いい空気をつくり続けている。
3.常連客の増加
 女性客が多いため、女性にとって使い勝手のよい店づくりを心がけてきた。前述のメニューに対する配慮もその一例であり、常連客の増加に貢献している。
 フロアリーダー(主婦)は多くの常連客を認識し、フレンドリーに接客する。毎日のように誕生日会の予約も入る。スタッフのユニフォームは、アロハシャツやハロウィン風、クリスマス風というように季節ごとに替わる。店内の飾り付けも、シーズンごとにスタッフが自主的に考えて変化を持たせている。いつ何度訪れても楽しい店を演出しているのだ。

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スタッフリーダーの稼働と卒業式

 松下店長のスタッフ採用率は3割。厳しい選考のおかげか、スタッフのオペレーションレベルは高い。これは実力店長の共通点でもある。面接のポイントは以下の通り。
@第一印象のよさ(笑顔、表情、声、清潔感) A人柄の良さ(素直さ、明るさ、元気のよさ) B協調性(スタッフ同士、強調し合えそうか)
 面接の際は、リラックスしてもらえるよう気を配っている。そのほうが自然な形で人間性が出るからだ。おもてなしとは「相手のことを想って為すこと」。お客様のことを想える人は気遣いができる人なので、人間性の高い人を採用するという。
 北千住店は店長の社員1名体制が定着していることから、店内のシステムがかなり整っている。スタッフリーダー制度もしっかりと稼働。キッチンリーダー1人、フロアリーダー2人、サブリーダー2人、サービスリーダー1人と、6人のアルバイトリーダーがいる。中でもサービスリーダーは、ドリンクのお替わりや料理の提供タイミング、お客様とのウィットに富んだ会話などでお客様を楽しませるスペシャリストだ。(いいですね!)
 またこの店には、スタッフの卒業式がある。全スタッフの前で、店長から卒業証書が渡されるのだ。4年間の思い出や、店長からの感謝の気持ち、本人たちのお礼の言葉が読み上げられていく。卒業生たちはこみ上げる涙を止められない。
 卒業生から店に対しても毎年、オリジナルの日本酒のボトルや、店で使用できる荷物入れなどのプレゼントが贈られる。これはこの店の伝統となっている。
 その後、店長が4月からの組織発表を行い、新リーダーが決定される。彼らは先輩たちの姿勢を引き継ぎ、「私たちが店長とともにこの店を守り、お客様に愛される店をつくっていきます」と挨拶するのだ。(この歴史がすばらしい!)

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店の強みは「チーム力」

 うれしいと思った出来事を松下店長に伺った。一つは感動のプロポーズ、今から告白するとの情報が入ったので、照明を消して全てのお客様に聞こえるようマイクをセッティング。拍手喝采でみんなに祝福された、感動の瞬間だった。
 もう一つはスタッフの成長だ。1年目はお客様への挨拶さえできなかった子が成長して4年目にはリーダーとなり、一流企業に入社。またアルバイト時代から教育し、今ではこの店のナンバー2になった部下社員もいると、目を細める松下店長である。
 この店の強みは「チーム力です」ときっぱり。アルバイトリーダーの活躍、季節ディスプレイなどスタッフの自主的な活動、出勤時に今日の目標をホワイトボードに書いて退店時に報告、ランク別の自主的ミーティング、仕事終了後の毎日の反省会、試食会を兼ねた飲み会…いずれもスタッフが力を合わせて積極的に臨んでいることばかりだ。
 松下店長のほめると叱るのバランスは9:1。ほめ続ける店長は、スタッフにも後輩を叱らないよう戒めている。

 実力店長の共通点は、ズバリ「愛着心の強さ」。店や、スタッフや、会社が大好きな店長に勝る店長はいない。つくづくそう感じた取材であった。ありがとう、松下店長!