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売上好調の3要因
(平均月商2200万円、坪売上50万円)

 五十嵐店長が秋葉原店に異動してから1年。売上前年比は110%と、2ケタ成長を遂げている(月に200万円のアップ)。その要因は次の3つだ。
1.看板メニューの価値の高さ
 上記看板メニューのシェアは3品で15%なのだが、その原価率はなんと60〜80%である。ことにまぐろ人握りは80%で、非常に価値が高い。ただし、トータルな原価率は48%。サイドメニューなどで原価調整をしている。
2.インバウンド外国人客の増加
 ヨドバシカメラには外国人団体客(旅行者)が多く来店し、ついでに食事もする。中でもまぐろ人は大人気だ。多い時はお客様の50%が外国人。中国、ベトナム、欧米、オーストラリアからのお客様が多い。近年箸を使える欧米人が増えていることに、店長も驚いている。
 中国人はあまり生の魚を食べないため客単価が上がりにくかったが、3〜5貫のセットメニューや、唐揚げ・たこ焼き(超人気!)・天ぷら盛り・日本酒などのサイドメニューが伸び、客単価が上がった上、原価率も下がった。
 この店ではスタッフ(P/A)も約半数が外国人。中国人観光客に中国人スタッフが中国語で対応…といったきめ細やかな接客が好評で、毎日来店する旅行者もいるという。(いいですね!)

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3.外国人スタッフの育成&コミュニケーション
 外国人スタッフの出身地は、中国、ベトナム、ネパール、バングラディシュ、インドネシアなど。異動当初は五十嵐店長も、言葉の壁や宗教上の違いなどに悩まされたそうだ。以下は、文化や習慣の異なる外国人スタッフとの、コミュニケーションや教育のポイントである。
@相手の国の簡単な言葉を覚える。(作業に関わる単語など)
A出身地の観光スポットや名産品を話題にしたり、お国自慢を聞いたりする。
B留学生はひらがなとカタカナがわかるので、それらを用いて教育する。
C宗教上制約のある食材に配慮しながら、おいしいまかない料理を提供する。
D誕生日、記念日、結婚などには、朝礼でケーキなどをプレゼントしてお祝いする。

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外国人スタッフの頑張り

 五十嵐店長は上記@〜Dのポイントを踏まえながら、外国人スタッフに対して常に関心を持ち、理解し、感謝の気持ちで接してきた。現在では中国人やベトナム人のリーダーも育っている。ある中国人スタッフ(留学生)の例を挙げよう。
 最初は普通の、どちらかといえばおとなしい感じのスタッフだったが、店長のほうから「中国語を教えて」とアプローチ。店長が中国語を覚えるにつけ、心を開いてくれるようになった。仕事のこともどんどん質問するようになり、仕込みや包丁の使い方なども一生懸命見てまねて覚え、今ではメインのカウンターで寿司を握れるようになった。中国人がまぐろやブリを下ろしていると、日本人スタッフが刺激を受けるという。人柄がよくてやる気があって、日本人が忘れつつあるハングリー精神を持っているこのスタッフのことを、将来は社員にしたいと五十嵐店長は思っている。

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覚えているお子様は100人以上

 五十嵐店長は子どもが大好きで、子どものお客様を100人以上覚えている。一人ひとりに声をかけたり、好きな寿司を握ってあげたり、寿司アメをプレゼントしたりすると、子どもたちからこんなお礼の手紙が届く。「このまえのまぐろおいしかったです。ありがとう。また行きたいと思います。お仕事がんばってください」…そして店長もすぐに、サービス券を付けて返信するのだ。
 五十嵐店長は、来店2度目のお客様のこともよく覚えている。最近も半年前に来店したお客様に気付き、「先日はありがとうございました。この席にお座りでしたね」と声をかけた。そのとき召し上がった寿司まで思い出したそうだ。これにはお客様もびっくり。カウンターでお客様とたくさん会話するので、半年前や1年前のことでも思い出すという。ちなみにこの店のナンバー1ホールスタッフも、100人以上の常連客を認識しているとのこと。
 店舗運営上で気を付けているのはお客様の表情とスタッフの表情。「この2つさえ意識していれば、オペレーションはうまくいきます」と五十嵐店長は語る。

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ほめて育てる店長

 五十嵐店長の「ほめる」と「叱る」のバランスは、スタッフ(P/A)は9:1、社員は5:5である。スタッフの場合、外国人も日本人も徹底してほめる。コミュニケーションは量が大事。ほめるのも量。ほんの少しでもいいことや進歩が見られたらほめる。「すばらしい」「動きが早くなった」「きれいに盛りつけたね」「この前言ったことができるようになったね」「おいしい味噌汁が作れるようになったね」と、ほめ続ける。外国人スタッフは「すばらしい」という日本語が特に好きで、とても喜ぶそうだ。
 五十嵐店長の夢は、優秀な中国人スタッフとベトナム人スタッフを社員に育て上げ、優れた人材力を駆使して、より多くの「まぐろ人」を出店していくことだという。
リーダーシップとは、人々に自信を与える人格のことだと言われる。それを思い出させてくれた店長であった。ありがとう、五十嵐店長! さすがナンバー1ですね。