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売上好調(12席で500万円)、3つの要因

 はなび弥富店はパチンコ店に隣接して3店舗並ぶラーメン店の一つだが、行列ができるのはこの店だけである。主要道路から見えないので、決して好立地とは言えない。客層は20〜30代が5割。女性客が4割を占める。
 中田店長の店長方針は、「この店に来てよかったと思っていただけること」「来店したお客様に元気になっていただくこと」だ。
1.いつも笑顔で元気(笑顔率99%)
 おいしい商品をさらにおいしくするのは接客。「接客7割、商品3割だと考えています。そのためにも、スタッフ全員がいつも笑顔・元気でいることが大切。まずは店長が笑顔でなくては!
この店の笑顔率は99%です」と、中田店長は語る。(う〜ん、すばらしいですね!)スタッフの笑顔はチームワーク・一体感から生まれる。中田店長のコミュニケーション量は多い。全スタッフの好きなこと(趣味や音楽やスマホゲームなどのプライベートな好み)を知って、積極的に会話をしている。
2.常連客の多さ
 弥富店は常連客が多い。常に50%以上が常連客で、時にはほぼ全員が常連さんという場合もある。店長が「いつもありがとうございます」と言えるお客様は300人以上。会話の多さが常連客を増やしている。スタッフもお客様といっぱい話す。趣味の話をはじめ新しい髪型のこと、お客様の持ち物(ハンドバッグや帽子などの小物)のこと、お子様への声がけなど、お客様の気分が上がる話題で楽しく会話する。(いいですね)
3.元祖台湾まぜそば70%(商品シェア)
 台湾まぜそばは、新山社長が台湾ラーメン用に作った台湾ミンチ(ピリ辛挽肉)が気に入らず捨てようとした時の、「もったいない。茹で上げた麺にかけてみたらどうですか?」という女性スタッフの言葉をきっかけに生まれたメニューである。中田店長は、麺の茹で加減とミンチの量、野菜の量にこだわっている。
 はなびには、麺を食べ終えた後にごはんをレンゲ1杯分丼に入れてくれる「追い飯」というサービスがある。最後の最後までおいしい、人気のサービスなのだ。
 ちなみに券売機の前で迷っているお客様には、決して高い商品ではなく、そのときのお客様の気分に合った商品をお勧めするという。(さすがです)

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常連ご家族との感動エピソード

 はなびに関する忘れ得ぬエピソードを伺った。
 中田店長が桑名店の店長だった頃、はなびの大ファンで、週に1〜2回来店する常連のご家族(お父さんとお母さん、中学生の息子さん2人)がいた。ある日息子さんの1人が来店したので、「今日、ご家族の皆さんは?」と声を掛けたところ、なんと「お父さんは病気で亡くなりました」という言葉が返ってきたのだ。お母さんはといえば、はなびに来るとお父さんを思い出してしまうので来店できないとのこと。それでもはなびの味が忘れられず、その息子さんが1人でやってきたのである。そのときから息子さんが、お母さんの分と仏壇にお供えするお父さんの分の台湾まぜそばをテイクアウトするようになった。お父さんは「辛さ増し」をリクエスト。毎回必ずテイクアウトしたという。
 その後中田店長は弥富店に異動し、高校生になった息子さんはバイクで弥富店まで来てくれるようになった。いつも1人で来ていたのに、ある日突然、お母さんともう1人の息子さんの3人で弥富店に来店。お母さんは「いつもありがとうございます」と涙を流しながら言い、家族4人の思い出がいっぱい詰まった台湾まぜそばをおいしそうに食べてくださった。翌日お母さんから店長に、「主人と一緒に伺った日々を思い出すのがつらくて、これまでお店に行けませんでした。ごめんなさい。本当にありがとうございました」というメールが入った。近ごろ息子さんは、友だちを連れて来店してくれる。お父さんの台湾まぜそば・辛さ増し「お持ち帰り」は今でも変わらない。
 「悲しい出来事だけれど、この仕事をしていて一番うれしかったことでもあります」と、中田店長はしみじみ語る。

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店長が本気で叱った瞬間

 中田店長のほめると叱るのバランスは「5:5」。叱ることが決して少なくない店長だ。ある男子学生アルバイトを本気で叱ったこともある。
 前任の店長に強く叱られたことがトラウマになって、中田店長が少し注意しただけでオロオロしてしまう。何か指示されるとすべて自分でやらねばと思い込み、人に頼むこともできない。「私や他の人に頼んでもいいんだよ」と店長が言っても、いつも一人で溜め込んでパニック状態になってしまう。
 業を煮やした店長はある日、そのアルバイトと面談した。「これだけ仲間がいるのに、自分ひとりで仕事をするの? 将来はなび以外で働くようになっても、ずっと一人でやっていくの? そんなつまらない人生でいいの?」と、強く迫ったのだ。そういわれて彼は号泣した。そのとき初めて彼は、自分は一人じゃないんだ、人に頼んでもいいんだと実感できたのである。彼が変わった瞬間だった。
 それ以来、彼はとても前向きになり、皆に指示もできるようになった。今では実に生き生きと元気よく、笑顔で頑張っている。(人を育ててますね、店長!)
 店舗運営全体として気を付けていることをお聞きした。「明るく元気いっぱいなのはいいけれど、仲良しクラブはダメ。ハメを外しそうな時は締めます。締め過ぎてもいけませんが。指示を待つ人でなく自ら行動できる人に育てるため、全力でサポートします。それがいい接客につながるからです」とのこと。(上司は部下のサポーターですね)

 中田店長の夢は、「はなびで働いてよかったと従業員が思える場所にすること。毎日笑顔で過ごせる場所にすること。落ち込んでいるときでも笑顔になれる場所にすること。そんな店づくり・会社づくりをすること」だという。
 インタビューの間、中田店長はずっと笑顔だった。こんなに明るくて素敵な笑顔の店長に会えて、私も笑顔いっぱいになれた。ありがとう、中田統括本部長!