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売上好調、3つの要因

 新下関店の客層は、ランチは女性客とシルバー層で8割、ディナーは30〜40代ファミリーが中心で、3世代家族も多い。土日はバースデーなどの記念日(ハレの日)で訪れる人が4割を占める。客単価はランチ1650円、ディナー2900円、平均月商2300万円。好調な売上をキープしている。その理由は以下の3つだ。
1.教育・躾・OJT力
 柳川店長の店舗目標は「ありがとうがあふれるお店づくり」。前述のOJT力とは、職場で人を育成する力のことだが、柳川店長は店舗オペレーションのあるべき姿(基準)を明確にしており、基準が守られなければ修正していく徹底力がある。躾や規律に厳しく、部下社員やアルバイトスタッフに対する「叱る」と「ほめる」の割合は7:3。だがオンとオフがはっきりしていて、休憩時などにはプライベートな話をいっぱいする(自己開示力が高い)。このため、スタッフも「自由と規律」のバランスがとれている。
2.再来店のお客様を大切にする
 ウェイティングシートに初来店か再来店かの記入欄があり、新規客に対しては商品やおいしい食べ方などをしっかり説明する。ゆず庵では10%OFFの割引券をレジで配布している。他店の回収率は20〜25%だが、この店は38%と高く、顧客満足度の高さがわかる。毎週ランチに訪れる女性客が多いのも特徴的だ。お客様との会話が多いことや、名前でお呼びできるお客様が多いことも、リピーター増加につながっている。
3.普通の飲食店にしない
 柳川店長には「普通の飲食店にしない」という信念がある。淡々とソツなく作業をこなすような店には絶対にしたくないそうだ。たとえば新しい店舗では、スタッフは作業に不慣れながらも一生懸命頑張っていて、イキイキしている。ところが半年、1年と経過するにつれ、作業はスムーズになるけれど元気さや一生懸命な雰囲気は薄れはじめる。「心の鮮度」が落ちてくるのだ。そんなとき柳川店長は、次の3つのポイントで店を変える。
(1)まずは店長自ら心の鮮度を高め、常にイキイキワクワクするよう努める。
(2)スタッフに対し、ほめるポイントを変えていく。新しい気づきやトキメキを与える。(う〜ん、すばらしいですね!)
(3)お客様アンケート(スタッフへのおほめの言葉)を集計し、ランキングを提示する。
 このようにして「毎日グランドオープンの気持ち」を継続させ、「普通の飲食店」にさせないようレベルアップを図っているのだ。

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モチベーションを高める店舗目標

 この店には、店長の店舗目標以外にも数々の目標がある。それが明確に打ち出されているところがすばらしい。たとえば「今月の店舗目標」は『活気の演出』。また今月のキッチン目標は『コール&レスポンス』、キッチン目標は『提供時間6分以内』だ。
 P/Aにも今月の目標がある。さらに、一人ひとりのモチベーションを高めるため、毎日のワークスケジュール表には「笑顔ビームたくさん振りまいて!」「誰よりも大きな声で!」「作業のコツや優先順位は先輩に聞いてメモし、自分のものにしましょう」というように、店長からの一言コメントが個別に記入されている。多い日には30人にもなる。毎日のこのような小さな積み重ねが確実な成果を生み、売上を伸ばしていくのである。

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店長の“ちょっといい話”(4年前から続く報告)

 柳川店長がゆず庵・富士店に勤務していたとき、度々来店するお客様(妊婦さん)と女子高生スタッフが親しくなった。「出産前にもう一度来たかった」というお客様に対して何かしてあげたいと思ったそのスタッフは、柳川社員(まだ店長ではなかった)に相談。そしてバースデーの特別バージョンでお客様を励まそうと、「元気な赤ちゃんを産んでください。ご家族でご一緒にまた来てください」というメッセージを書いたのだ。
 そのお客様はとても喜び、以来4年間ずっと来店されている。このスタッフは大学4年生になった。柳川店長が異動した今でも、彼女はこのお客様のことを「4歳のお子様と一緒に来てくださいます」と報告してくれる。「こんなふうにスタッフがゆず庵で働くことにやりがいを感じ、成長していくのが本当にうれしい!」と、満面の笑顔で店長は語る。

自己紹介シートで自己開示

 この店の強みはチームワークが抜群なこと。女性スタッフの気持ちがよくわかる女性店長が率いているせいか、人間関係の問題は悪化する前に解決する。特に主婦パートさんとのコミュニケーションはとても良好で、常に助け合っているとのこと。
 店舗運営で気を付けているのは、店長が率先規範すること。スタッフに何かを指示する以上、自分ができなければいけないと考えている。自他ともに厳しい店長ながら、休憩室ではプライベートな話題でみんなを盛り上げる楽しい面も。
 この店のスタッフルームには自己紹介シート(写真、名前、生年月日、学校名、趣味、特技、マイブーム等)が掲示されている。これがあれば新人でもスムーズに先輩とコミュニケートできるというスグレものだ。
 「子どもが産まれてもしっかり働き、管理職を目指す」のが柳川店長の今後の夢。目標設定とスタッフ教育に抜群の力を発揮する実力店長だ。ありがとう、柳川最優秀店長!