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売上好調、その3要因

 オープニング店長として、立地の悪い店を繁盛店にできたのはなぜだろう。伝保店長はその要因として次の3つを挙げた。
1.看板メニューの力(鮮度・ボリューム・価値)
 看板メニューは、@南伊勢町直送3ねんもん岩カキ580円 Aお刺身盛り合わせ3種2人前980円、B鮮魚たち(炉端のメバル、アジ、カマス、小鯛など)。特に刺身盛り合わせは、3点盛りでも5点盛りで提供するほどサービス満点だ。他店では真似のできない鮮度やボリュームに驚くお客様が続出。また入口置看板には「刺身380円〜」と書いて敷居の低さをアピールし、入店しやすくした(原価は40〜50%)。
2.個客対応(フレンドリーな接客)
 伝保店長はかつて芸人になりたかったというだけあって、サービス精神旺盛だ。取材中もユーモアたっぷりに様々な取り組みやエピソードを語ってくれた。
 ポイントは、一人ひとりのお客様への個別対応である。個々のお客様についての情報を見つけて、その人に合った対応をする。たとえばお客様が転勤を控えたビジネスマンの場合、タコさんウィンナー5個をつなげてサービス提供し、「○○さん、東京でのお仕事がんばって!」とメッセージを添える。外国人ならその国の言葉でメッセージを書くなど、お客様によって対応を変えるのだ。
 対応は楽しく、かつきめ細やだ。お客様の少ない時間帯なら、入口のドアを空ける音が少し聞こえただけで「ハイ! いらっしゃ〜い!」と元気に出迎える。常にお客様のために「何かできることはないか」と考え、幸せを感じてもらうために精いっぱい努力する。「お客様のことをどれだけ好きになれるか、どれだけ好きになっていただけるか、どれだけ仲良くなれるか、それが全てです」と伝保店長は語る。(さすがですね)
3.感動パフォーマンスの共有
 伝保店長は、「お客様に笑っていただくためにも、従業員を笑顔にするためにも、店長自身がいつも笑顔でいなくては!」と言う。お客様を楽しませるジョークも忘れない。まだ空席のある早い時間の来客に対し、「予約で満席ですが、御社は客単価が高いですから何とかお席を作りましょう!」などとパフォーマンスで対応すると、お客様は大笑いして喜んでくださるのだ。このような、お客様を楽しい気分にさせるフレンドリーな会話を重視していて、ほとんどのスタッフがお客様と楽しく会話できるという。伝保店長は「この店は、お客様に幸せになってもらうためにあるんだ。この店を奥志摩のサービスの原点となるモデル店にしよう。ナンバー1の店にしよう」とスタッフに語り続けている。
 店長のパフォーマンス力が高いので、私は思わず「店長が異動されると、売上が落ちてしまうのでは?」と尋ねてしまった。伝保店長の答えは「異動もしましたが、落ちませんでした。私に負けないパフォーマンスをしてくれていますから」…である。感動パフォーマンスの共有が定着しているのだ。

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プラス言葉とマイナス言葉

 奥志摩グループには、「プラス言葉とマイナス言葉」という考え方がある。プラス言葉とは、元気になる、明るくなる、ワクワクさせる言葉のこと。楽しい、幸せ、大好き、ありがとう、ツイてる、できる、すばらしい、おもしろい、などだ。マイナス言葉とは、やる気や元気がなくなる言葉、不平・不満・不安などに満ちた言葉のことで、難しい、忙しい、疲れた、できない、つまらない、など。
 言葉には不思議な力がある。いつもプラス言葉を使っていると、こういう言葉を使いたくなる出来事が次々と起こる。マイナス言葉もまた然り。「私もマイナス言葉を使ってしまうことがありますが、できる限りそれをプラス言葉に変えるよう努力をしています」と伝保店長。プラス言葉は、店内の人間関係を円満にしたりチームワークを向上させたりする上でとても大切なものなのだ。

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夢は炉端で日本一、ミスター炉端に!

 炉端焼きはカウンターが中心となる。知らないお客様どうしが隣り合えば、当然空気には壁がある。「この壁を取り払うのが私の仕事」だと伝保店長は言う。ここに座ったのは必然であったかのごとく、全員を友達にしてしまうスゴ技だ。
 どのような人たちの間にも、壁がなくなる瞬間というものがある。ビジネスマンどうしなら商談に繋がるとか、独身男女なら意気投合してカップルが成立するなど、その後の人生に影響を及ぼすほどの大きな瞬間に立ち会うことだってあるという。
 12席のカウンターにぎゅっと人が詰まって、20席になる時も。「今日はとうもろこしがおいしいよ」とお客様どうしで会話が始まる、奥志摩伏見店なのだ。

 伝保店長の夢は、奥志摩が炉端で日本一になること。「ミスター炉端」と呼ばれたいと、笑顔で語る。すでに日本一だと思いますよ、伝保副社長! ありがとうございました。