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売上前年比120%、その3要因

1.歓声の上がる最上級和牛メニュー
 うる寅大門店の看板メニューは、@一頭日本橋盛13500円(4人前) A一頭舟盛り7850円(3人前) B霜降り炙り寿司 和牛にぎり 一貫300円。ことに日本橋盛りと舟盛りは、提供された瞬間に歓声が上がる。うる虎ダイニングでは、最高級Aランクのチャンピオン牛を使用している。それが一頭分どど〜んと橋や舟に並べられて登場する。看板メニューとは、そういう強いインパクトを持つものなのだ。
 新たな飲食店の選び方で最も多いのは、友人・家族・同僚などによる口コミだといわれる。女性は特に口コミを重視する。あの店のそのメニューを知っているという、ぷち自慢も背景にある。すごいことは人に教えたくなる。こうして驚きのメニュー写真(この店の常連客が言うところの「フォトジェ肉」な写真)が、SNSで拡散していくのだ。

2.接客力(テーブルコーディネート力)
 佐藤店長の店長方針は「従業員もお客様も楽しい店づくり」。うる寅は客単価の高い高級焼肉店ながら、気軽に入れる店である。スタッフとお客様との会話が多く、距離感が近いためだ。店長が特に意識しているのはテーブルコーディネート力。注文の取り方、商品知識、おすすめメニュー、中間サービス、おしぼり交換や網交換、取り皿など、気配りの徹底である。プラスαのメニューからお皿の大きさまで、今お客様に何が必要かを考えてサービスすることが大切なのだ。店長はスタッフにこういったことを指示・命令するのではなく、なぜやらなければならないかを自分で考えさせ、実行させるようにしている。

3.オープンな雰囲気&コミュニケーション
 「店長の仕事はスタッフが働きやすくすること。一人ひとりのいいところを引き出してあげること」だと佐藤店長は言う。スタッフに対していつでもオープンドアの姿勢で、話しやすい雰囲気をつくっている。コミュニケーションの量はとても多い。連絡ノート、LINE、朝礼、全体ミーティング、飲みニュケーション(週1回)などを欠かさない。
 佐藤店長はまた、「店長はフロントをとる(先頭に立つ)」とも語る。この店長に付いていきたいと思われること、人間的魅力をもって先頭に立ち、皆を導いて前進し、お客様からもスタッフからも慕われるということだ。

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500人の常連客とスタッフに感謝

 うる寅大門店に異動して5カ月の佐藤店長は、現在100人ほどの常連客を掌握している。異動前の金肉屋では500人以上を認識していた。(これぞ売上前年比120%の要因ですね!)カウンターと小さな座敷という規模ながら坪単価50万円。お客様との距離感が近く、オープンからクローズまで満席続きだった。店長の休日にはお客様と釣りや飲みに行ったりもした。そういうお客様は大門店にも来店してくださる。
 金肉屋スタッフのモチベーションは常に高く、全員が高レベルのオペレーションで仕事をし続けてくれた。スタッフみんなに本当に感謝していると、佐藤店長は語る。

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年上の部下を指導するポイント

 異動当初のうる寅大門店には年上の部下社員も多かった。円滑に仕事をするためコミュニケーションを十分にとりつつ、問題点がある時ははっきり伝えるようにした。マニュアルを作ってスタンダードの徹底も図った。100言ったら200フォローしたという。
 年上の部下を指導するポイントについては、私が行う店長セミナーでもよく質問が出る。以下、参考にしていただきたい。
@人と人とのつながりが基本(ポイントはコミュニケーションの量)
A年上であることを尊重(敬語で話す)
Bしかし上司はあくまでもあなた自身(ダメなことはダメだと言う)
C何かを変えたい時には相談
D居場所を用意(責任ある仕事やポジションを任せる)

スタッフのフォローが店長の仕事

 佐藤店長に「ほめる」と「叱る」のバランスを伺うと、スタッフを叱ることはほとんどなく、「ほめる」が5で「教える」が5とのこと。できていないことを1日に1つ指摘するだけ。複数言っても無理だという。1つ指摘してそれができたらすぐほめる。そうすることでスタッフは自信を持ち、成長していく。また、1つのことが全員できるようになってから、みんなで次のステージにチャレンジする。一歩一歩確実に前進していくのだ。
 スタッフの元気がなく、仕事がうまくいかない時もある。そんな時は無理に声をかけず、さりげなくポジションを替えて自分で気付かせるようにしている。店長自身がいつもより元気に仕事し、今日は任せろ、次は頼むよという姿勢を見せる。こうやって日々スタッフのフォローに徹するよう心がけているのだ。
 忙しい時間帯こそ全体を見渡しながらゆっくりと店内を歩くようにして、お客様が話しかけやすい雰囲気を作っているという佐藤店長。そんな彼の夢は、うる虎ダイニングをより大きくすること。大きくなると思うよ! 佐藤店長、ありがとう!