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売上前年比117%(2100→2500万円)の3要因

1.スタッフのパフォーマンス力
 「笑顔と感動の先に、お客様の再来店がある」というのが、小林店長の店長方針である。挨拶と笑顔を毎回徹底。アイコンタクトとタイミングで笑顔を向上させていくのだ。
 小林店長はスタッフそれぞれのよいところを伸ばして発揮させるよう導いている。ホール全体が見渡せる、笑顔が最高、サジェストが上手など、個々のパフォーマンス力のレベルを上げることで、お客様を魅了するのだ。

2.サービス力(豊富な商品知識)
 ベルジアンブラッスリーコートでは、ベルギー料理とベルギービール(60種)のペアリングをおすすめしている。前菜から主菜までそれぞれにぴったりのビールがあり、料理とビールの相性を説明するには、ベルギーの歴史や食文化、ビールの産地といった、幅広い知識が必要になる。それを備えたスタッフが充実している。

3.チームワーク・一体感・コミュニケーション
 コミュニケーションも徹底。朝礼では予約の確認、本日のおすすめ料理とビールの確認、売上状況など、みんなで情報共有を行う。また店長は毎日オープン前に、プライベートなことも含めて各スタッフと会話する。個人面談も2カ月に1回のペースで実施。
 この企業ではほめるアプリ(SNS)を使って、スタッフ間での「1日1ほめ」を推進している。「お客様への提案が勉強になりました」「笑顔が素敵でした」「サポートありがとうございました」というように、ほめたり感謝の気持ちを伝えることで店の雰囲気を高め合っているのだ。毎月100人にほめる言葉を送っているスタッフもいて、社長から直接表彰状とプレゼントが手渡されたりする。(いいですね!) 小林店長はこのアプリを活用して、月30人のスタッフ(特に新人やミスをしたスタッフ)に対し、フォローのメッセージを発信している。
 この店の定着率が90%以上なのは、このようなコミュニケーションの積み重ねの賜物だろう。この店で育ったスタッフが他店に配属され、活躍するケースも多いという。

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常連客500人を認識するベテランスタッフ

 丸の内店は常連客が多い。小林店長はこの店に2年勤務し、300人以上の常連客を認識しているのだが、7年勤めるベテランスタッフは500人もの常連客を知っており、それぞれの好みのビールや料理を把握しているとのこと。来店時に「いつもありがとうございます」と笑顔で迎えられてうれしくないお客様はいないはずだ。
 この店には2000人以上のゲストカードがある。名前・住所・会社名のほか、お客様からの一言も記入されている。誕生日にはメール送信、店の周年記念日などにはDMを発送するなど、常連客への働きかけには手を抜かない。
 小林店長には常連客にまつわる「ちょっといい話」がいくつもあるが、そのうちの一つをご紹介しよう。この店で彼女と付き合うきっかけを作ったという男性客の話だ。ある夜、その男性から「この店でプロポーズしたいけど、どうすれば…?」という相談を受けた。幸せのお手伝いのために店としてベストを尽くそうと、花束(彼女の好きな花)とシャンパンを用意して、最高の演出に協力した。
 当日はカップルの友人たちが10人ほど駆けつけ、彼女に分からないよう店内の別の場所で待機。2人の好きなアーティストの曲が流れたのをタイミングに、彼は花束を彼女に差し出して「結婚してください」とプロポーズした。彼女のほうは驚きとうれしさで胸がいっぱい。涙で頬を濡らしながら「はい」と返事をするや、友人たちが現れて「おめでとう!」とクラッカーを鳴らしながらお祝いの嵐。他のお客様もこのハッピーな輪に加わり、みんなで一緒に記念写真を撮ったのである。その後、結婚式の二次会もこの店で行われた。(幸せレストランですね。いい仕事してます!)

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サービスの基本は、小さなことの徹底

 小林店長は丸の内店の強みを「来店ニーズの拾いやすさと、ベルギービールへのこだわりです」と語る。ニーズが拾いやすいとは、使い勝手がいいということ。オープンテラスやバーカウンター、高級感のある広めのテーブル、個室などスペースが多彩で、軽い飲み会からパーティまでお客様の多様なニーズに応えられる。
 ビールへのこだわりは次の通り。
@グラスとコースターがビールの種類によって異なる。
A冷やして出すものから常温で提供するものまで、幅広く取り揃えている。
Bビールの温度(3〜5℃)やビールの作り方(9ステップ)まで徹底。
C泡の量は指2本分。規定を外れたら提供しない。
お客様の心をつかむのは、こういうこだわりである。
 スタッフに対する小林店長の「ほめる」と「叱る」のバランスは3:7。厳しい店長ではあるが、仕事のミスは叱らないという。叱るのは入店前の姿勢や身だしなみ、挨拶・返事である。入店したらフードサービスのプロに徹することを最重視しているのだ。
 私はクライアント先の店長セミナーでサービス業の基本を繰り返し説いている。それは、小さなことを日々徹底するということに他ならない。

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<サービス業の基本 チェックシート>

@相手がうれしくなる挨拶を心がける。
A1日に何度でも身だしなみを整え、手を洗い、きれいを保つ。
Bきれいなところをもっときれいに磨き上げる。
C「ハイ」と明るく、心をこめて返事をする。
D「ありがとうございました」にプラスαの一言を添える。
Eスタッフ同士で笑顔の練習をする。
Fお客様との会話やスタッフ同士の言葉遣いを美しくする。
Gどんなことをすればお客様に喜ばれるか常に考え、お客様の素敵なところをほめる。
H悪天候や悪条件でも来店してくださったお客様に感謝する。
I今日の目標・今月の目標を仲間と共有する。

小林店長も、こういったことを常にスタッフに言い聞かせている。小さなことを徹底してこそ、大きなことを成し遂げることができるのだ。
 スタッフの誕生日には高級ベルギービールやワインオープナー、ボールペンなどをプレゼントするという、やさしい心遣いをみせる小林店長。そんな彼の夢は、ベルギー事業部を会社から独立させ、そのトップになることだ。必ずや実現できるでしょう。いいお話をありがとう、小林エリアマネジャー。