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坪売上60万円の3要因

1.卓越した料理とサービスの提供
 渡辺店長の店長方針は、「この店に来たいと思うお客様と、店が来ていただきたいと思うお客様が一致すること。そしてリピーターになっていただくこと」。
 目黒店のスタッフは社員7人・P/A5人と、社員比率が高い。20坪でホール5人・キッチン4人という余裕のあるオペレーション体制で臨んでおり、上記店長方針につながる卓越した料理とサービスを実現させている。シニアソムリエの資格を持つ社員がドリンクを担当し、料理に合わせたワインのおすすめができるのもその一つだ。ちなみにこの社員は、この店のスタッフだけでなく他店の指導にもあたっている。

2.店長は常連客500人以上認識
 目黒店では毎日120人以上(月間3600人)のお客様が来店する。常連客が3割、リピーターが2割、新規客が5割というバランスだ。この店のファンになった常連客やリピーターが、友人や同僚を連れてくる。消費者が新しい飲食店を選ぶ一番のきっかけは「友人・家族・同僚の口コミ」だといわれる。口コミこそが繁盛店づくりの基本なのだ。
 渡辺店長は、500人以上の常連客を認識しており、一人ひとりに対し笑顔でフレンドリーに声をかける。この店では学生スタッフでも100人以上を認識しているという。常連客を覚えるには会話がベスト。渡辺店長も、お客様と十分にコミュニケートするようスタッフに指導している。「お近くにお住まいですか?」といった気さくな声がけから始まり、自己紹介し、お客様の名前を伺って、まずはリピーター、そして常連客になっていただくのだ。地方のお客様でも、出張のたびに来ていただけるようになる。

3.ホールとキッチンの一体感(チームワーク)
 お客様の要望にはできる限り応える。どんなに忙しい時でも、メニューにないものを食べたいと言われた時でもNOと言わず、ホールとキッチンが連携し、店にある材料を駆使して可能な範囲で提供する。スタッフみんなが一体となって、お客様のためにどんなことでもしようと頑張る。この姿勢がリピーターの増加につながっている。

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サービス17大行動の徹底

 新人教育は20日間にわたってしっかり行われる。サービスの基本から、挨拶・商品知識、料理・ドリンク提供、オーダーテイク、ウェイターの仕上げまで、テキストに沿って毎日1ページずつ学んでいく。店長は毎日面談を実施。その日の営業を通して感じたことを新人に聞き、わからないことやできないことはヒントを与えて考えさせ、アドバイスをする。(コーチング型の店長ですね)これを繰り返しながらトレーニングを重ねていく。この店の優れたサービスの原点は、新人トレーニングにあるといってもいいだろう。
 株式会社ジリオンでは「サービスの17大行動」を掲げており、全員でその徹底を図っている。一部を紹介しよう。
●心を込めたお出迎え
●リゴグニションの徹底(顧客認知力)
●絶対にNOと言わない
●5秒に1回入口を見る
●ファーストオーダーは最速で提供する
●お食事の感想をお聞きし、キッチンへ届ける
●絶対にお客様に感動を与える

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大衆ビストロジルの“ちょっといい話”

 誕生日や結婚記念日、送別会、お付き合いをはじめた記念日などに、この店を利用するお客様が多い。多い日には、サプライズプレートを5〜6組のお客様にサービスする。単身赴任から戻ったお客様を「お帰りなさい!」と書かれたプレートで歓迎したりもする。
 ある日、エジプト人のお客様の送別会があった。それに気付いたスタッフが、プレートを出してあげたいと店長に申し出た。そこで、デザートの盛り合わせにスフィンクスのアメ細工を添え、「ありがとう!また日本に帰ってきてね」とエジプト語のメッセージをプラスして提供したのだ。そのエジプト人女性はとても喜び、「日本は本当にすばらしい国!」と、涙を流しながら語ってくれたという。(いい仕事してますね、店長!)

「もう一度来たい」と思える2時間半

 週に2回程度しかシフトに入らない女子学生が、ゼミのため3カ月休んだ。3カ月後にシフトに入った彼女は、しっかりと常連客のことを覚えていた。しかも常連客も彼女のことを忘れておらず、久しぶりだと言って大いに盛り上がったそうだ。覚えてもらえるサービスができた彼女の成長ぶりが、渡辺店長はとてもうれしかったという。
 店舗では混み具合によって時間制を設ける場合があるが、渡辺店長はいつもそこでスタッフに「2時間半の時間制でできること」を説いている。お客様が店に滞在する2時間半に、また来たいと思っていただけるようなサービスをするという教育である。お客様との関係を深め、感動を与えられるサービスができるよう、その2時間半に集中しようと言い続けているのだ。(すばらしい!)
 スタッフとのコミュニケーションは欠かさない。営業中は分単位であってもこまめに話す。またSNSコミュニケーションツールのトークノートを使って、全員で情報(会社全体の連絡事項、売上状況、グループ店の情報、新メニューの画像など)を共有している。

 渡辺店長の夢は、将来的に教育担当として活躍したり、コンサル事業を手掛けたりすること。10年後の教育担当部長を目指して、頑張ってください。ありがとう、渡辺店長!