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400万円→1000万円、売上伸張の3要因

 鴇田店長の店長方針は「元気・スピード・楽しむ」である。スタッフは全員外国人(5カ国)。飲食店の基本から教育している。
1.看板メニューの拡販と、本日のおすすめメニューの徹底
 看板メニューの3品は見た目にもかなりインパクトがあり、インスタ映えする。「肉炉端5種盛り」はお客様の好みの肉5種を木桶にど〜んと盛り合わせる。「エアーズロック」は1キログラム(ボリューム満点!)のオージービーフで、原価は80%越え。「名物肉串焼きと野菜巻き串」は吊り下げて提供される(写真)。この看板メニュー3種で売上の60%を占める。(看板メニューのあるべき姿です!)おかもちで料理を運ぶのもユニークだ。
 本日のおすすめメニューは、スタッフの背中に貼られている。お客様からおすすめを尋ねられたら背中を見せるのだ。これを背中POPと呼んでいる。こうやっておすすめを徹底し、客単価が300円以上(3500円→3800円)上がったという。
2.店長がテーブルを回って挨拶
 スタッフが全員外国人なので、サービスを細やかにフォローするため、鴇田店長は全テーブルを回ってお客様に挨拶し、「お近くにお勤めですか?」「お料理いかがでしたか?」「何か問題はございませんか?」と話しかけてコミュニケートしている。何を見て来店したかもお客様に尋ね、アクセス解析等、随時Web対策をしているという。(重要なことですね!)すみやかで的確な対応により、今ではネット予約が8割にまでなった。
3.抜群のチームワークと雰囲気づくり
 先輩から後輩へというように、外国人同士で教えたり学んだりする環境が整っており、よい関係づくりができているという。また店長も、時間を見つけてはスタッフに声がけをしている。たとえば「スイカはネパール語で何て言うの?」と尋ねたりする。「スリランカ語では?」「台湾では?」と笑顔で問いかければ、スタッフも笑顔で答えてくれる。とにかくいつも声をかけ、元気でいてもらうのだ。
 教育面においては、「飲食店スタッフ養成ドリル」を使って簡単なテストも行っている。毎日の勉強会で飲食の基本を身につけさせ、赤ペンでチェックしている。
 朝礼も毎日実施。今日の目標・おすすめ商品・予約について確認し、新メニューの試食なども行う。最後に店長の「今日も1日頑張ろう」、全員の「オー!」で締めくくる。
 最近、朝礼を実施していない店があるようで、残念に思う。朝礼の目的は、情報の提供、目標の確認、身だしなみチェック、士気の高揚など。本気で朝礼を行うことで、少しずつ店は進化していく。
<朝礼の実施例>
@「おはようございます。朝礼を行います」(姿勢を正す)
A社是や経営理念の唱和
B前日の売上状況と反省(クレーム、おほめの言葉)
C本日の目標(行動目標)
D個人目標の発表(スタッフ)
E連絡事項や新メニューについて
F本日の作業割り当てについて
G1分間OJT教育(「本日のおすすめ」訓練など)
H頑張っているスタッフのパチパチ表彰
Iその他、質問や意見交換(本日もよろしくお願いします)
ぜひ実行していただきたい。
 400万円の月商が倍の800万円ほどになると、猛烈に忙しくなった。休憩もとれないほど忙しいことがスタッフに申し訳なくて、鴇田店長は「みんな、本当にありがとう。ごめんね、十分にフォローできなくて」と言うのが精いっぱいだった。ところがスタッフは口を揃えて「大丈夫です、全員で頑張りましたから。キッチンもみんな頑張りました。」と言ってくれたのだ。うれしくて涙がこぼれたという。(日頃の店長の想いがきちんと伝わっていたんですね)

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震災で実感した飲食店のすばらしさ

 鴇田店長が福島の店で働いていたとき、あの3月11日の大震災が起こった。食べるものもろくない大混乱の中、地域のお客様のために弁当を作って営業を続け、1週間ほど経った頃、介護施設の介護士さん2人と運転手さんが来店した。この3人はご利用者のお世話に明け暮れて自分のことはすべて後回しの状態だった。お風呂に入れないどころか顔も洗えず歯も磨けず、もちろん食事もろくにとっていない。ごはんと味噌汁と魚しか提供できなかったが、涙を流しながら「味噌汁ってこんなにおいしかったんですね!」と言って舌鼓を打ってくれたそうだ。
 1杯の味噌汁に感動してもらえる。飲食店って何てすばらしい職業なんだろう。このとき鴇田店長は心の底からそう思ったという。「震災直後は誰もが誰かと話したいと思っていました。でも話す家族や友人がいなかったりする。少しでもそれができる場になればと思って、営業を続けたんです」と店長は語る。
 介護士さん2人は化粧品も持っておらず、本当になりふり構わない状態だった。店長はあちこちから化粧品をかき集めてお渡しした。その時はお名前も聞かずに別れたのだが、1年後、きれいな身なりで再び店を訪れてくれたのだ。その施設が原発にほど近かったため東京へ引っ越されたとのこと。「あの時の味噌汁の味は一生忘れません。本当にありがとうございました」と言われ、思わず目頭が熱くなった鴇田店長である。この仕事をしていてよかった、これからも続けていこうと、心から思うことのできた体験だった。
 いい話をありがとう、鴇田店長。この体験を忘れず日々鍛錬しているからこそ、お客様にもスタッフにも愛されているのだと思います。これからも頑張って素敵な店をつくり続けてください。

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