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2年連続売上110%(3つの好調ポイント)

 竹田店長の店長方針は「挨拶があふれる店」。特に入口でのお迎えとお帰りの際のお見送りに気を配っている。
1.ランチ提供スピードアップ
 ランチの日替わりメニューは人気が高く、同じく人気の唐揚げセットと併せると60%の商品シェアがある。毎日100人のお客様にランチをスピード提供している。ランチの提供時間は5分が基準だが、早い時は3分で提供。昼も居酒屋らしい活気あふれる店づくりをし、ランチの売上を伸ばすことで夜の売上もアップさせてきた。
2.原点回帰で常連客増加
 テング酒場の原点は挨拶、活気、スピード提供である。この原点に回帰することで常連客が増加した。しゅうまいと豆腐は店舗で手作りすることにこだわっており、大人気。提供時間はドリンク3分、料理7分と決めているが、ファーストドリンクは1分を意識している。このような努力が功を奏して、常連さんが友人や知人を紹介してくれるようになったという。
 竹田店長が認識している常連客は300人以上。2回来店されたお客様のことはほとんど覚えているそうだ。その常連客のうち50%の方についてはファーストドリンクまで覚えている店長だが(すばらしい!)、外国人のスタッフもファーストドリンクを覚えているというからすごい。
3.チームワーク、一体感、雰囲気最高!
 2年前に異動してきた時は、店の雰囲気は決して良くなかったと竹田店長は言う。店長の目を見て挨拶できないなど、社員とアルバイトとの間に壁があった。竹田店長は全員との個別面談を毎月行い、店に対する意見や気づいたこと、困ったことなどをよく聞いて、いいと思ったことは認めてすぐに実行していった。グループLINEでも、お客様にほめられたことや頑張ったスタッフを紹介していった。朝礼、夕礼も毎日実施した。このようにコミュニケーションが増えることで一体感が生まれ、チームワークがどんどん良くなっていったのだ。竹田店長の率先垂範でひたむきな姿が、そのままスタッフ一人ひとりの手本になったとも言えるだろう。いつしか店の雰囲気は最高になっていた。

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サービスマイスターはネームプレートに星5つ

 スタッフの面接・採用にあたり、竹田店長は以下の3つをポイントにしている。@人柄や性格の良さ Aスポーツマンシップ Bシフト状況 である。竹田店長は高校時代にラグビーをやっていたことから(今もOBで参加)、スポーツマンとして身に付けた挨拶、礼儀・礼節、躾は飲食店での基本としても役立つと考えているのだ。
 またテング酒場には、星の数(5つまで)がネームプレートに反映されるランクアップ制度がある。新人は若葉マークからスタートし、★(ただいま修業中)、★★(当店の成長株)、★★★(接客ファースト)、★★★★(スペシャリスト)、★★★★★(サービスマイスター)と上がり、時給アップと連動していくユニークな制度だ。外国人スタッフのモチベーションアップにもつながっている。
 ただ仕事ができるというだけでなく、礼儀正しく、気配りができて、笑顔で元気よく働ける人を育てること、これが何よりも重要なのだ。

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ちょっとうれしい話

 売上好調で店の雰囲気もよくなったと笑顔いっぱいの竹田店長に、うれしいと思った最近のできごとを尋ねてみた。
 ある女性スタッフがグラスを床に落とし、その破片がお客様の顔に当たるというアクシデントが起きた。少し出血もされ、店長とスタッフは心底から申し訳なく思い、ひたすら謝った。その誠意ある態度がお客様に伝わり、今やそのお客様は常連客となった。誠心誠意で接すればちゃんと心が伝わることを実感したそうだ。
 もう一つ、ちょっといい話を紹介したい。なんと、竹田店長がスタッフに指示を出したり、接客したりする姿を見るのが大好きなお客様がいるとのこと。道玄坂店に異動してくる前から竹田店長のファンだというこの50代の男性客は、今も毎週この店に来て竹田店長の仕事ぶりを眺め、「指示の出し方がすばらしいね。いい仕事してるね」とほめてくださるのだ。(すばらしい!)
 週末の最大ピーク時には、料理の提供時間や質の高いサービスを保持するため必死になることもある。だが、そんな緊張感あふれる状態をも笑顔で楽しんでいる自分に気付いていると竹田店長は言う。一生懸命さや落ち着いた笑顔が、お客様やスタッフに支持されているのだ。

スタッフにスペシャルな強みを持たせる

 テング酒場には、商品監査・衛生監査と内部監査の3つの店舗監査の仕組みがあり、毎月実施されている。商品監査は本部の商品スペシャリストが行い、チェック後に点数が出る。その場でスタッフ教育もすることで、店内における料理のクオリティを上げている。また衛生監査には300項目ものチェックリストがあり、問題がある場合は写真に撮って検証・改善する。道玄坂店ではいずれの監査でも高得点をキープしている。
 店舗運営で、竹田店長は常に次の2点に気を_つけている。
 1点は営業中のフォーメーション(スタッフの配置)。ピークタイムにはキッチン3人、ホール3人(うち1人はドリンカー)でオペレーションしている。ホールが忙しそうだとキッチンのメンバーがドリンカーに入るなど、スピーディーで機転のきくサポート体制ができており、生産性を上げている。
 もう1点は、スタッフ一人ひとりに自分の役割に対する自信を持たせること。一つでもいいから各自がスペシャルな強みを持てるよう意識させ、指導し、励ますのが教育方針だ。たとえば笑顔が素晴らしいスタッフ、ドリンク提供が早いスタッフ、トイレ掃除が完璧なスタッフなど。自信の持てる分野があれば、イキイキと楽しく働くことができるのだ。「店長がスタッフのことをダメだと思ったら本当にダメになってしまう。店長が良いと思えばスタッフ自身もそう思えるようになり、どんどん良くなっていきます」と竹田店長は語る。
 ピグマリオン効果という教育心理学の用語がある。教師が生徒に期待をかけることで生徒の成績が向上するという現象を指し、部下のモチベーションを高めるなどの人材育成面でもしばしば利用される。店長の期待がスタッフを成長させていくのである。

 最後に、今後の夢を竹田店長に伺った。「私自身が先輩や同僚、社員、スタッフからいろいろなことを学び、幅広い価値観を吸収したい。そしてエリアマネジャーを目指したい。将来的には居酒屋で独立したい」との答えだ。
 スタッフを育て、原点回帰の活気とスピードで売上を伸ばし続ける、たのもしい実力店長だった。ありがとう、竹田店長!