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3年連続売上伸張、3つの好調ポイント

 津田店長が掲げる店舗目標は、@当たり前レベルの向上、Aお客様満足の追求である。3年前のオープン以来、毎年売上を伸ばし、今期の売上前年比は106%。新聞折込広告をせずにこの数字を実現させている。(他店では折込広告を実施)
1.営業状態が最大の広告
 私とFC本部スタッフが若松大鳥居店に到着したとき、津田店長はゴミ一つ、草一本、砂すらほとんどないきれいな駐車場に立ち、笑顔で迎えてくれた。その津田店長の開口一番の言葉が「当店の営業状態こそが最大の広告だと思います」である。なるほど、外のゴミ箱からファサード、トイレ、下駄箱まで実に清潔で、よく手入れされている。クレンリネスの素晴らしさに感動した。まさに「神は細部に宿る!」である。この店のQSCレベルは、完璧なクレンリネス状態を見ただけでしっかりと伝わってくる。
 チラシの新聞折込はしないが、スタッフがデザインした手づくりチラシは活用している。500枚ほど作成し、1人10枚ずつ、友人・知人、サークル、親戚などに手配りしているのだ。その回収率は54組(客数237人)で、売上は74万円。わずか5000円の経費でこの効果はすごい。客数誘引率はなんと47%(237人÷500枚)である。スタッフ自ら手づくりしたチラシだけに、お客様を家族のようにあたたかくお迎えできる。少し多めに配布してくれた男性アルバイトのA君には、11組のお客様を来店に結びつけたことで、店長から表彰状が渡された。これは休憩室に掲示されている。
 またガソリンスタンドや美容室、カメラ店などとのコラボ企画で互いの店頭にリーフレットを置いたり、ジュニアクラブチームの応援ポスターを入口に貼り、全チームに来店していただいたりしている。
 このような努力によって、津田店長は閑散月をなくすことを目指している。閑散月がなくなればスタッフの活躍時間も増えるのだ。2年前の6月(閑散月)の売上は1470万円だったが、今年の6月は1740万円に向上した。すごい伸長である。
2.スタッフの目標設定とホワイトボード教育
 スタッフルームを見て驚いた。60人余りに上る全スタッフの「なりたいスタッフ像」が掲示されているのだ。キッチンの女性スタッフ(学生)の例を紹介しよう。まず目標として「お客様がキッチンをのぞきたくなるようなスタッフになります」と書かれている。その下のコメントは次の通り。「誰が作ったか知りたくなるような料理を作ります。お客様からは直接顔が見えないからこそ、元気で明るい声を出して、最高の100分間を過ごしていただきます。きっかけは私から!」
 これに対して店長コメントも綴られる。「この発送、大好きです。私たちがお客様のことを想いながら商品を作るように、お客様が商品を通してスタッフのことを感じてくれたら最高です」(すばらしいですね!)
 またスタッフルームのホワイトボードには、大鳥居改革、今月の目標、OFF JTの教育・考え方などが書かれている。これらについて店長が動画(LINE)で5分間セミナーを行っているのだ。新人は店長が作成した2週間トレーニングシステムを元に育成される。最近、このようにして育てられたスタッフが4名入社した。店長に憧れ、この人に付いていきたいと思って入社するアルバイトが多いのも、実力店長に共通することだ。
3.お子様対応の徹底
 記念日利用の多い焼肉きんぐ。入口のウェイティングルームの壁には、お子様の誕生日の写真がいっぱい並ぶ。子ども連れでも安心と、お母さんたちの評価は高い。
 店長は、お子様にとって最適な椅子を購入すべく、お母さんと相談しながら選ぶという。ぬり絵を配り、スタッフがはなまる(たいへんよくできました)をつけてあげたりもする。折り紙を配ることもある。また、泣いているお子様がいたらスタッフ手づくりのおもちゃで笑顔になってもらうこともある。お子様対応に、全員が集中している店なのだ。

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店長感激のエピソード

 チェーン店では常連客との密なつながりを築くのは容易ではない。だが津田店長は大勢の常連客を認識し、小さな居酒屋のような営業を目指している。
 あるとき70代の常連さん(ご夫婦)が開店早々の5時に来店した。その日は成人の日。食事のためではなく、20歳になった女性アルバイトのCさんへお祝いのプレゼントを渡すためだけに、わざわざ来てくださったのだ。本人が驚いたのはもちろんのこと、店長も感激した。チェーン店でもお客様との絆を深められる可能性を、強く実感したという。ちなみにこのスタッフは、後に新卒として入社した。
 店長とスタッフとの絆も大きい。スタッフ不足で運営が非常に厳しかった繁忙期3月のある日、もっとお金が必要という理由で別のアルバイト先へ移っていた男性アルバイトのB君がやってきた。人手不足という情報を、元仲間から聞いたのだ。彼は思いがけない言葉を店長に直球でぶつけてきた。「以前の店長は僕らのことをしっかり見てくれていて、そのぶん厳しく指導もしてくれました。でも最近は違います。ちょっと甘いと思います」と言うのだ。津田店長はそれを素直に認め、申し訳なかったと心から謝ったそうだ。もちろん、管理や教育の仕組みづくりなどマネジメント面での店長としての仕事が激増していることもきちんと話し、B君のほうにも誤解があったと、相互に理解し合うことができた。そして「お世話になった店長が苦しんでいるのに、これ以上他のアルバイト先で働くことはできません」と言って、B君はこの店に戻ってきたのだ。(店長もB君もすばらしいね!)

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QSCの徹底と、スタッフへの感謝

 津田店長に、QSCの徹底と向上についてどのように考え、指導しているか尋ねた。
Q……キッチンこそ最大の接客者! お客様の目的はおいしい食事で幸せな気分になることだ。キッチンのメンバーが作るものを求めて来店されるのだから、ひと手間かけてクオリティの高いものを作ろう。
S……サービスは難しいことではなく、「ちょっと気の利く人」になることだ。焼肉きんぐではお客様のテーブルに30回は足を運ぶ。自分がお客様に対して何ができるかをいつも考えよう。「当たり前」のレベルをどんどん上げていこう。
C……汚れている箇所ほど店長が率先垂範できれいにする。一番きれいにする方法(洗剤道具)を店長自ら見つけてスタッフに教える。
 津田店長は最後にこう話してくれた。「スタッフがチラシを手づくりしてくれる。それを友人や知人に配ってくれる。みんなで新人を育ててくれる。私が言ったことに対し、すみやかにレスポンスしてくれる。毎日毎日、本当に感謝しています」

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 津田店長の夢を伺った。「私には学歴はないけれど、それでもここまでやれる。意志と実行あるのみ。それさえあればなんでもできることを証明したい」とのこと。
ありがとう津田店長。おめでとう「FC実力店長マネジメント大賞」!