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毎日アンケートで営業状態をチェック

川口店長はとても勉強熱心で、私がおこなっている物語コーポレーションの実力店長養成セミナーにも毎回出席されている。3年前のセミナーで、あるファストフードが実施していたレシート活用によるお客様満足度調査の話をした。レジに「満足」「普通」「不満足」の3つの箱を置き、レシート不要のお客様を対象に、いずれかの箱にレシートを入れていただくというものだ。川口店長はそれを良いアイデアだと思い、翌日からすぐ実施し、3年後の現在も継続させている(写真)。(良いと思ったことはすぐにやる、その行動力がすばらしい!)現在の平均評価は満足が80%、普通が19%、不満足が1%である。
 これには二次的な効果もある。お客様が「面白いことをやってるね」「すごいね!」「『たいへん満足』はないの? すばらしかったよ」などと言ってくださるという。レジでのお客様との会話が増えているのだ。読者の皆さんも参考にしていただきたい。

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売上47カ月伸長、3つのポイント

1.チームワーク抜群
 川口店長の店長方針は「アットホームなお店づくり」。スタッフと家族のような関係を築くことで店の雰囲気が温かくなり、それがお客様にも伝わるからだ。
 この店には、スタッフ同士が感謝の気持ちを述べ合う「サンクスノート」がある。「○○さんありがとう」と付箋に描いてロッカーに貼り、それをノートにまとめていく。いつも「ありがとう」があふれている店である。
 また店長はスタッフに話しかけるとき「田中さん、おつかれさま」というように、全員に対し常に名前で呼びかける。(一人ひとりを意識する、これ大切なことです!)
 休憩室にはいつもお菓子がある。店長がお土産のお菓子を置きはじめたことから、高校生も含めてみんなが持ってきてくれるようになった。仕事が終わった後はすぐに帰るのではなく、このお菓子を食べながら5分間おしゃべりをする。この5分が大事なのだ。私もセミナーでしばしば「チームワークと雑談力は比例する」と話している。
2.活気・元気・笑顔 & ピカピカの店舗
 お客様へのアンケート調査によると、接客サービスへの評価が非常に高い。たとえば「新人さんが頑張っていた」と書かれていたら、すぐに本人に伝えてほめるようにしていると川口店長。この店の笑顔率を伺うと、「80%以上です」とのこと。ちなみにセミナーで店長たちに尋ねると、たいてい50%ぐらいだ。
 お見送りの姿勢もすばらしい。レジの後、最敬礼3秒。お客様が店を出るまでその場でお見送りする。(ここ、ラーメン屋さんですよ!)
 クレンリネスもすばらしい。オープンから6年経つが、どこもかしこもピカピカでよく手入れされている。高校生アルバイトも、手が空いたら率先して清掃する。そういうことがあたりまえになっているのだ。
3.毎月店内コンテスト
 三原店では毎月店内コンテストを実施している。キッチンでは麺のスープ量、ごはんのポーション、ソフトクリームのグラム数などの各コンテスト、ホールでは正しい接客用語のテストなどを行う。ホールとキッチンそれぞれ毎月1人ずつ「今月のMVP」を選んで表彰し、クオカードをプレゼントしている。
 特にスープ量のコンテストを始めてから、ラーメンのクオリティが上がったという。その他、「スープの温度が85度以上」であるかどうかの抜き打ちチェックも頻繁におこなっている。「提供時間7分以内」もキープしていて、あつあつのラーメンをスピーディにお届けできていることが、お客様満足につながっている。

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常連客絶賛、アンケートコメント

 丸源ラーメンマニアだという超常連客のコメントを紹介しよう。
 「この三連休は三原店を利用させていただきました。120店を超える丸源ラーメンのうち半分ほどのお店に伺いましたが、西日本で一番おいしいのは三原店です。仕事の都合で他店も利用しますけど、舌が三原店モードになっています。
 …(中略)…7月の豪雨で三原店が営業できなかった時は心配しました。復活の日に食べた味は、変わらずおいしかった! 三原店の肉そばは醤油の風味や深みが感じられて、しかも柚子こしょうの香りも広がります。どの店もここまでの味を出せたら、丸源ラーメンはさらに飛躍できるでしょう。
 …(中略)…店員のYさんの一生懸命な姿が素敵です。笑顔も声の出し方もすばらしくて、三原店の宝だと思います。早く赤色の看板娘にしてあげてほしいです。…(後略)」
 この常連客は1杯のラーメンのために、岡山から1時間もかけてこの店を訪れるという。思わず胸が熱くなる、すばらしい手紙である。こんなファンがいる三原店に脱帽だ。

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毎日100回、スタッフに「ありがとう」

 三原店のスタッフにまつわるちょっといい話をお聞きした。4年前、女子高生(2年生)のアルバイトを採用したものの、人見知りが激しく、しかもきゃしゃで、ラーメン一つ持つのも大変そうだった。朝起きられないとのことで、最初は遅刻も多かった。
 心を開いて川口店長と話ができるようになるまで、半年かかったそうだ。店長は声を掛け続け、少しでも良くなったと思われることを見つけてはほめて認め、大切に育ててきた。今や彼女はお客様アンケートの評価1位を獲得し、それを継続するまでに成長。アルバイトリーダーとしてスタッフの指導にあたっているという。スタッフがこんなふうに成長してくれたら、店長冥利に尽きるというものだ。
 川口店長はスタッフに、「ありがとう」と「ごめんなさい」をしっかり言うよう徹底指導している。店長自身、スタッフに対して「ありがとう」を1日100回以上言っている。これだけで店の空気が変わり、チームワークの向上につながっていく。
 オープン当時、売上は厳しかった。川口店長のお母さんはそれをとても心配して、店長が帰宅する午前2時まで毎晩寝ずに待ち、その日の売上を聞いてくれたとのこと。3年前にお母さんは亡くなったが、今でも天国のお母さんに毎晩売上を報告している。「伸び続けているよ」と胸を張れる幸せを噛みしめながら、感謝の気持ちで仏壇に手を合わせているのだ。
 川口店長、すばらしい話をありがとう。そして日本一の証であるMVP受賞おめでとう!