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売上前年比115%、好調の理由

 中野店長の店長方針は、「活気あるきれいな店づくり」である。スタッフの挨拶・元気・笑顔に、とことんこだわっている。
1.チャンスロスを防ぐ
 ウェイティングのお客様に対し、すぐにご案内できることを伝えながらドリンクサービスや割引説明などをしている。また、満席率を上げるために席の調整(8名席を4名席×2にするなど)も頻繁に行っている。
 繁忙期にはお客様にお願いして、ピーク時間が重ならないよう、17時〜19時、19時〜21時、21時〜23時と、3回転を意識しながら予約時間の調整を心がけている。(効率的なやり方ですね)
 また営業前の時間を使って婚活パーティを実施。ドリンク1杯800円のサービス価格だが、その後カップルでの来店が増えた効果は大きい。

2.「やって見せる」スタッフ教育
 静岡紺屋町店には、ベトナム人留学生を中心に外国人スタッフが多く在籍し、全体の50%以上を占める。このため、ひらがなでマニュアルやレシピを解説するなど、時間をかけてスタッフ教育をしている。教え方の手順は、@説明する Aやって見せる Bやらせてみる C評価する D習慣化させる。特にAの「やって見せる」が重要だと中野店長は言う。わかるまでやって見せる、つまり、わかってくれるまで諦めないことが大切なのだ。そしてきちんと評価してほめ、習慣化させる。これを徹底すれば、外国人留学生でも優れたQSCオペレーションが可能である。

3.1分間コミュニケーションと意識改革
 店の雰囲気は、5点満点で5点だと中野店長。スタッフの空気感の良さが売上をつくると言っても過言ではない。空気感を高めるには毎日のコミュニケーションが大切で、中野店長は1分間コミュニケーションを常に意識しているという。少しでも時間があれば、雑談も含めてスタッフと言葉を交わす。「最近、学校はどう?」「髪型を変えたね、いいね!」「その改善アイデア、すぐやろうよ」という具合に、その人に関心を持ち、個人的なアドバイスをし、よいと思ったことはすぐ採用する。積極的に改善させていくことで、一人ひとりの意識改革も進むのだ。
 日々のコミュニケーションの積み重ねから優れたスタッフが生まれ、良い空気が全体に広がっていく。ネパール人のカトリ君はアルバイトリーダーである。新人教育から時間帯責任者としてまで任せることのできるスタッフに育った。彼に指示すれば、全員にしっかり伝わっていく。(いいですね)
 店の雰囲気がいいから、スタッフの定着率は抜群である。しかもスタッフが新しいスタッフを紹介してくれるので、求人費はほとんど掛からない。
 「2:6:2」の法則について中野店長に尋ねると、「スキル的には5:4:1ですが、マインド(精神)は「9:1:0です」との答えだ。(すばらしい!)

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ピークタイムは冷静に

 ピークタイムにおける中野店長のポジションは、主にお客様のお迎えとお見送りである。店長自身がピーク時に気を付けているのは、イライラしないことだという。スタッフに外国人が多いため、「わからないことや困ったことがあれば何でも聞いて!」「どんなに小さなことでも、何かあったらすぐに報告して!」と言い続けており、いつも早めに、かつ冷静に対応できるよう心構えをしている。アルバイトリーダーのカトリ君にも、常に冷静でいるよう教育している。
 ある調査によると、スタッフから見た理想の店長像は次の通り。
@忙しい時にイライラしない店長。
A尊敬できる店長。
Bトラブル中、冷静に判断できる店長。
Cコミュニケーションが多い店長。
D仕事ができる店長。
E自分の非を認める(自分が悪い時は謝る)店長。
F差別しない店長。

…いかがだろうか? 中野店長が心がけていることとほぼマッチしていて、感心する。

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宴会予約もフリー客も上昇中

 売上が伸びている要因は前述したが、宴会予約やフリー客の増加も、売上伸張に拍車をかけている。週末ともなれば、電話一本で「今から行きます」というフリー客が40組も50組もあるという。組客数が多いのだ。214席もある大型居酒屋なので、このような大人数の受け入れが可能であり、スタッフも対応に慣れていて、ピークに向けた事前準備も完璧にできている。
 宴会も伸び続けている。前年と比べて毎月50万円以上の売上アップだ。スタッフも売上というものを意識しており、日々の予算達成にみんなで喜び合っている。
 さらに、「中野店長がいるから来たよ!」と言って来店する常連客の多さも、売上の向上を後押ししている。

みんなにハッピーサプライズ

 お客様の誕生日がわかれば、ハッピーサプライズとしてケーキをプレゼントする。これはお客様に対してだけでなく、スタッフに対しても行われる。私は時々店長セミナーで、「スタッフの誕生日に何かをしてあげていますか?」と尋ねるのだが、意外にやっていない店長が多い。サプライズプレゼントを受けたスタッフは、当然のことながら嬉しい。だから中野店長の誕生日には、スタッフみんなでプレゼントを用意してくれるのだ。

 今回の取材で最も印象的だったのは、店長の毎日のコミュニケーション量の多さである。1分間程度で実にこまめにふれあっている。これが日々スタッフの心をほぐし、店の雰囲気をやわらげ、お客様へも良い空気を伝えているのだ。
 スタッフとの接触回数が増えることで、信頼関係は確実に増す。1回1分でもいいからできるかぎり多く、しかも毎日続けることの重要性を再認識させていただいた。ありがとう、中野店長!