画像
売上前年比75%→120%、大幅に黒字化した3つの要因

 長倉店長は昨年4月に六本木店に異動した。当時六本木店は人手不足でボロボロの状態。最悪のときは店長1人で店を開けたこともあるという。非常に厳しい状態を何とか打開すべく、集中して建て直しに取り組んだ。
 10月にスタッフが揃いはじめ、12月に予算を達成して黒字に転換し、今年の3月からは売上前年比100%越えとなった。そして7月・8月にはついに120%と、驚異的な伸びを見せるに至っている。その要因は次の通り。

1.予約時間の見直し
 グラスダンスでは、コースは前日まで、当日は午後3時までを基本的に予約のタイムリミットとしていたが、お客様の都合を考えて、コース予約も通常の予約も当日7時まで可能とした。これが功を奏し、それまで月間30組程度だった予約が最近3カ月は64組と倍増した。
 また、合コンの予約も定期的に入るようになった。学生から30代の大人まで、毎月3回(1回あたり30〜40人)開催されている。カップルになったお客様は、自然な流れでこの店の常連客になるのだ。

2.チームワーク向上(シャッフルシフトでレベルアップ)
 長倉店長は「記録にも記憶にも残すチームを目指します」と語る。チームで一丸となって動く熱い心を後押しし、「“チームで勝った! やりきった!”感を毎日出そう。その熱意に数字を載せよう。もう一度お客様のところへ追加メニューを取りに行くぞ!」と励ますのだ。これで12月の予算達成を果たしたのである。
 3月には、品川店のベストメンバーを六本木店のシフトに入れた。過去最高の売上をはじき出した優秀なメンバーの動きを目の当たりにした瞬間、六本木店のオペレーションは変わった。品川店のシフトに入った六本木店のメンバーもまた、繁盛店のすばらしいオペレーションレベルとスピード感を体感し、これまた大きく変わったのだ。(いいですね!)思い切ったシャッフルシフトに脱帽する。
 店長とスタッフとのコミュニケーションは、チームワークを盛り上げる上でも非常に重要だ。店長がスタッフのことを理解していれば、チーム状況も把握できる。「I LOVE シート」という一覧表は、店長とスタッフとの距離を縮めるツールでもある。このシートにはスタッフの名前、ポジション、入社日、入社動機、誕生日、血液型、趣味、家族構成、住まい、最寄駅、好きな食べ物や嫌いな食べ物、好きな異性のタイプなどが書かれている。これがあるおかげで話すきっかけづくりができて内容も充実し、コミュニケーションの量がぐっと増えたという。

3.ロープレ動画でスタッフ教育
 グラスダンスでは、お出迎えとご案内、商品説明、グリル提供時のトーク、お会計、お見送りという5場面のロープレ動画を撮影して、スタッフ教育に活用している。それぞれのスタッフの動きを撮影し、これをSクラスのスタッフをモデルに撮影したものと比較してみると、その違いが明確に見えてくる。このロープレ動画によって、六本木店のサービスレベルが一段と上がった。(読者のみなさんも参考にしていただきたい!)

画像
長倉店長の、ちょっといい話

1.クレームから常連客へ
 長倉店長が初めて店長職に就いたのはグループ会社の九州黒太鼓品川店で、24歳のときだった。あるときカスターセットが汚れているとのクレームが入った。一生懸命謝ったのだが、24歳という若さ故に信頼していただけず、こんな若造が店長のはずがない、責任者を呼べと言わんばかりのお怒りを買ってしまった。次の日も謝罪のご連絡をしたが芳しい対応は得られなかった。
 一週間後、そのお客様がエレベーターで上の階の店(グループ店)へ行くのを見かけ、すぐその店の店長に連絡して、そのお客様の食事が終わったら教えてほしいと頼んだ。そうしてその店に出向いてまたもや丁寧に、心をこめてお詫びをしたところ、やっとご理解いただくことができた。それ以降このお客様は、毎月部下社員を連れて来店する超常連客となった。この方はある大手メーカーの営業本部長で、客入りの厳しい月曜日でもこの方にお願いをすると「ダメな店長だなあ」と苦笑いしながら来店してくださったものだ。クレームをきっかけに超常連客になっていただいた好例である。

2.茶髪&ピアスのバイトがエリアマネジャーに!
 同じく九州黒太鼓の店長時代の話。茶髪でピアスという風貌もさることながら、短気で何かと問題の多い男性アルバイトがいた。女性アルバイトリーダーはいつも当人のみならず他のスタッフにも気を遣いながらインカムで「忙しいでしょうけど、この焼き鳥を先に出してもらえますか?」などと丁寧に指示を出していた、だがあるとき「洗い物たいへんでしょうが、先にビアジョッキを洗ってもらえますか?」と頼んだところ、インカムで全員が聞いているにも関わらず、この男性アルバイトは「無理だよ、無理。バーカ!」と答えたのだ。この態度にとうとう長倉店長はブチ切れた。(そりゃ切れるでしょう!)金曜夜のピークタイムだったが、裏口に呼んで「帰れ!」と一喝。やる気があるならもう一度来いという一言は添えた。
 翌日、殊勝な様子で出勤して誠実に謝ったので、もう一度チャンスを与えることにした。それ以来ひどい態度をとらなくなったばかりか、非常に頑張って働くようにもなった。今ではなんと黒太鼓4店舗のエリアマネジャーである。(スゴいですね!)長倉店長は一度ダイヤモンドダイニングを退社し、再び戻った店長だ。久しぶりにその男性スタッフを見てその躍進ぶりに驚き、とても嬉しかったそうだ。現在は、同じ部門で活躍する仲の良い同僚どうしである。(いい話ですね!)

画像
料理の標準化とコストコントロール

 グラスダンスはビアバルなので、もちろんビールに関することにはこだわりがある。ベルギービールをお客様の前で注ぐサービスもその一つ。特徴のあるベルギーのグラスとビールが共鳴してきらめく様子も魅力だ。
 料理については、メニューの「見える化」に取り組むことで、標準化を進めている。新人スタッフにもわかりやすいよう、商品名、写真、コメント(うんちく)、提供時間、トングの種類、スキル、一人当たりの過食量などを一覧表で表している。
 また、原価率は23%にコントロールしている。適正原価率は27%なので、これはなかなかのものだ。貸切のお客様のコースメニューを工夫してコストの見直しをしたり、部下社員の仕入れ量をチェックするなど、調整や指導を徹底している。

 こういった長倉店長のリードのもとで、赤字店だった六本木店はみるみるうちに黒字店へと転身した。そして品川店はナンバー1店舗である。その実力には舌を巻く。
 そんな長倉店長の夢は、グラスダンスのブランドを30店舗に増やし、小会社にして独立させ、その責任者の一人として飛躍の一翼を担うことだという。頑張れ長倉店長、いい話をありがとう!