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売上好調の3要因

1.客席回転率(16回転)と生産性の高さ
 1日の来客数は700人。43席だから16回転にもなる。無駄なく席のご案内をしているため、満席率は95%に上るという。4人席に5人入っていただく場合もあるそうだ。(すごいですね!)4人テーブルには中央に隙間があって2名ずつ2組という形でも案内できる構造になっており、これも満席率アップに一役買っている。
 またスピードも意識している。バッシングしてから次のお客様を案内するまでの時間は1分以内だ。ピークタイムの行列が続くときは、食事を終えたお客様には「申し訳ございませんが、お待ちのお客様のためにお席をお譲りいただいてもいいですか?」と丁重にお願いする。このお願いでトラブルになったことは過去一度もないとのことだ。(すばらしいですね!)
 どんなピーク時でもホール3人、キッチン3人で運営できるので、生産性は極めて高い。(人時売上高5800円)

2.商品力の向上
 日高屋ではよりおいしくて飽きのこない味を追求するのはもちろん、盛り付けの美しさにもこだわっている。商品のバラツキを防ぐため店長は厳しい目でチェックし、ダメ出しをすることもある。具材の炒め具合や餃子の焼き色には特に気を配っている。餃子の焼き色は、スタッフにわかりやすいよう写真で見える化している。また社内独自の「鍋調理技術審査制度」が設けられており、常に調理技術の向上に努めている。

3.チームワーク抜群
 取材のため店に入ったときの私の第一印象は、空気感とチームワークの良さだ。15時だったが、まだ店内の半分の席でお客様が食事中だった。このような繁盛店ではよほどチームワークが良くないと仕事が回っていかないのだが、全く滞りのないスムーズな雰囲気なのだ。チームワークを高めるためのコミュニケーショントークについて店長に尋ねると、「毎日の声掛け、グループラインでの連絡・指示・注意、連絡ノート、休憩室での会話などを通じて、いつもコミュニケートしています」との返答。意識の高さが伺える。
 例えば休憩室では趣味や特技、好きなスポーツといったプライベートな話が多い。スマホゲームの好きなスタッフがいると、店長もゲームを覚えるという。(努力してますね!)プライベートな会話によって、心の距離感が縮まることが多いものだ。

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ワンポイントアドバイス「上手なコミュニケーションのコツ」

 チームワークはコミュニケーションから。コミュニケーションをスムーズにさせるのも店長の重要な役割だ。ある実力店長から、スタッフ全員の自己紹介シートをファイリングしていると聞いた。そこには写真、学校名、専攻、出身地、趣味、好きな食べ物、特技、好きなスポーツ、仲間への一言などが記されている。これがあることで休憩室でのコミュニケーションがより充実する。新人スタッフにも先輩の情報がわかるという優れものである。
 ここで、私の店長セミナーでもしばしば取り上げている、上手なコミュニケーションのコツを紹介しよう。
@相手の興味に合わせた会話を心がける
A自分との共通点を見つける
Bこだわっていることについてほめる
C笑顔で話す
D話の腰を折らない
E失敗談や、自分の弱い部分を打ち明ける
F相手に関心を持ち、真剣に聞く。

ぜひ参考にしていただきたい。特にAとBは重要だ。

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店長のちょっといい話

その一
 店を異動したら今度は新しい店へ来てくれる…田中店長にはそんな常連客が多い。ある50代のお客様は、新しい店のスタッフに「この店長はすごいんだよ。これまでの全ての店で売上を上げてきたんだ」と言ってくださったそうだ。(田中店長のファンなんですね)
その二
 21歳で店長になった時、同じ年齢の女性スタッフが優秀だったことから熱心に仕事を教えた。だが互いに若かったので些細なことで口論になり、彼女は出勤しなくなってしまった。電話にも出ず、自宅を訪ねても会ってくれない。そこで田中店長は「僕は君を必要としているし、みんなも待っているよ」と、想いの丈を手紙に綴った。それを読んで彼女は出勤し、アルバイトリーダーとして活躍してくれたそうだ。(いい話ですね)
その三
 半年で全ての作業を覚えた主婦パートがいた。キッチンもホールも完璧だ。その人から「店長にお世話になったからこそ、今の私があります」と正面切ってお礼を言われた時は、本当に嬉しかったとのこと。(店長冥利に尽きますね)
その四
 田中店長は、入社以来10店舗も異動してきたベテランだ。次の店舗へ異動する前日には大勢のスタッフ集まって送別会をしてくれる。多い時は全スタッフに加えて辞めた元スタッフ、常連客や近隣店の店長まで、40人も集まったことがあるとか。(愛されてますね!)
 「人はただ自分の愛する人からだけ学ぶものだ」というゲーテの名言がある。店長がスタッフを愛しているから、スタッフも店長を愛する。愛する店長から学んで育っていく。そして売上も向上するのだ。

 ある日、神田会長が突然店を訪れた。田中店長との面談のためだ。大型店への異動の話だった。「売上の高い店だが、どうかな?」と言われ、「やりたいです!」と答えたそうだ。いろいろ励まされ、プライベートな話もしたという。異動の話というのは通常、人事部または直接の上長から通達されるもので、会長から直々に伝えられるような企業は少ないだろう。「すばらしい会長で、尊敬しています」と田中店長は語る。日高屋の人情経営に脱帽だ。
 いい話をありがとう。次は地区長ですね。頑張れ、田中店長!