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売上好調の3つの要因

1.優れたQSCオペレーションと、店長の客席挨拶
 肥後店長の店長方針は、「とびっきりの笑顔と心からの元気」。お客様のアンケート用紙への記入結果は、5段階評価で5(非常に満足)が85%、4(満足)が10%。3(普通)が5%である。(評判、高いですね!)
 特に気を付けているのは、お迎えの際の笑顔と元気な挨拶。来店時に好印象を持っていただきたいからだ。第一印象が大切なのだ! 店長が認識している常連客は300人を超える。「いつもありがとうございます」と笑顔で迎えられたら、お客様は嬉しくなる。
 私が立派だと思ったのは、店長が全てのテーブルへ挨拶に伺うことだ。「ご来店いただきありがとうございます。ご要望やお気づきの点がございましたら、私にお申し付けください」とにこやかにお声がけする。毎日毎日、全てのお客様にこうやって挨拶している。徹底してきちんと応対する店長の姿を、美しいと思った。
 初期段階での小さな不満は、これでほぼ解決できる。この姿勢を貫いているから、本部へのクレームはゼロである。

2.販売促進(バースデーDM、ライン会員、再来店券)
 食事を終えたお客様にアンケート用紙とペンをお渡しして記入をお願いしている。回収率は40%。アンケートを通して得たバースデー情報は1万件に上る。バースデー特典は10%OFF、記念撮影、デザート、888円値引きサービスだ。ライン会員は現在6000件。売上への効果を数字で見ると、ライン会員が22%、バースデーDM5.1%、再来店券配布(平日10%、土日5%割引)5.3%、となっている。この3つの販促効果は大きい。

3.コミュニケーション充実(会話は仕事)
 肥後店長は仕事中ずっと話し続けている。全てのお客様との会話はもちろん、全スタッフにも営業中たえず声掛けしている。30秒も黙っていることはないという。(スゴイですね!)仕事の話だけではない。プライベートな話もいっぱいして、たくさんコミュニケートしている。おかげで定着率は90%以上だ。「会話は仕事です」と店長は言う。
 肥後店長は、物語コーポレーションでの私の店長セミナーも毎年受講してくれている。数年前のセミナーで、スタッフのワークスケジュール表に、モチベーションが上がる一言コメントを記入するよう話したときもすぐ実施し、今も毎日全員へのコメントを書き続けている。記入には30分以上かかるが、スタッフはきちんと受け止めてくれて、高い意識を持って働いてくれるという。これが実践できている店長は5%にも満たない。肥後店長のすぐやる実行力と継続力はすばらしい。

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店長の、ちょっといい話

 学生時代、肥後店長は食物語の焼肉きんぐでアルバイトをしていた。元気いっぱい、笑顔いっぱいで頑張っていた時、ご夫婦で来店していた40代ぐらいの奥様から「こんなに元気で笑顔の素敵なお店に出会えて感動しました! すばらしいお店ですね!」と言われたそうだ。アンケートでほめられるのも嬉しいけれど、お客様から直接感動の声を聞いて、舞い上がるほど嬉しくなったという。仕事の励みになり、飲食業のすばらしさも実感して、食物語に入社したのである。
 また食物語には、「トレード営業」なる仕組みがある。月1回、他の店へサポートに行くというもので、新入社員には刺激になる。店長が焼肉きんぐでこのトレード営業をしていた時、お客様から「お好み焼本舗の肥後店長さんだね。先日お店へ伺ったけど、すごくよかったよ」と声を掛けられた。度々そんなことがあり、そのたびにびっくりする。自分の店で言われるよりも嬉しいとのこと。(それはウレシイですね!)
 スタッフとの関係でもちょっといい話がいっぱいだ。大学1年生の男子を面接し、採用を迷ったことがある。人見知りで笑顔もなく、サービス業向きではないように思えたからだが、それでも働くうちに変わるかもと思って採用した。しかし、やはり顔はこわばったままで、ずっと緊張している。お客様からも「恐い店員がいる」とささやかれる始末。肥後店長は彼に「お客様も従業員も、笑顔でいっぱいの店にしたい」と語り続け、本人の自覚を促しつつ、少しでも笑顔を引き出せるようサポートし続けた。そしてそれから2年。今ではお客様から「○○君の笑顔がいいんだよね」と言われるようになり、アルバイトリーダー的な存在にまで成長した。店長にとって、こういうことが本当に嬉しいのだ。

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店長の仕事はスタッフのサポート

 店舗運営で気を付けていることを尋ねると、「店長になったばかりの頃は、リーダーとして自分が頑張らなくっちゃと思っていました。でも今は、37人のスタッフ全員をサポートして、一人ひとりがキラキラ輝いて楽しく仕事できるようにすることを、いちばん意識しています」と答えてくれた。
 私はセミナーでしばしば「ポジションのパワーからパーソナルパワーへ」という話をする。ポジションパワーとは地位や肩書きが持つ力のことで、指示・命令の多いマネジメントを意味する。これに対しパーソナルパワーは個人としての人間力のことであり、サポートする姿勢を表す。自分で考えて行動できるような自立型スタッフは、肥後店長のようなパーソナルパワーを持った人のもとで育つのだ。
 笑顔率は95%、ほめると叱るのバランスは95:5とのこと。特に新人に対しては徹底的にほめ、困りごとを取り除くようにしているそうだ。(「困りごとを取り除く」って、いい言葉ですね!)
 この店ではスタッフからの改善提案も多い。この備品は各ステーションに置いたほうが効率的だとか、各資料をラミネート加工しようといった意見が出る。よいものはすぐ実行する。すぐ実行することで、スタッフのやる気はますます高まるのだ。

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社員レス営業(スタッフだけで運営)

 この店では、社員レス営業を実施している。(物語コーポレーション本部の直営店でもスタートしている)月に1回、売上の高い土日に、社員0(ゼロ)=スタッフだけで店舗運営するのだ。肥後店長は最初は心配でしかたなく、店の周りをウロウロしていたという。(その気持ち分かります…笑)
 発注も、予約の対応も、クレーム対応も、店長が日頃おこなっている全テーブル挨拶回りも、全てスタッフだけでやる。しかも最も忙しくて最大売上のプレッシャーがかかる土日に。たいへんではあるが、スタッフたちには「全員でやってやるぞ」という一体感が生まれる。任されれば責任感が大きくなる。そうやって人は育つのである。

 肥後店長の夢は、食物語の教育担当として、店長を指導できる人になること。優秀店長賞を受賞した実力の持ち主なのだから、夢は近いね。頑張れ、肥後店長!