画像
年商3億9千万円、好調の3つの要因

 モーモーパラダイスの看板メニューは、@特選A5ランク黒毛和牛7000円、A国産牛しゃぶしゃぶ5000円、B国産牛胡麻豆乳鍋3000円。すべて食べ放題である。
 客層はインバウンドが5割、次がビジネスマン、そして買い物帰りの女性客だ。外国人スタッフが多く(85人中30人が外国人スタッフ)、英語・中国語・韓国語での対応が可能だ。
 モーモーパラダイスはオープンしたばかりでもちろん盛況だが、前述したように松本支配人は鍋ぞう新宿三丁目店を繁盛店にした立役者でもある。この鍋ぞう新宿三丁目店の好調要因を伺った。

1.インバウンドの集客、8割
 年商3億9千万円。12月の月商は4300万円で、4年連続で売上を伸ばしている。その大きな要因は、インバウンドのお客様が8割という特徴を持つ店であることだ。世界最大級の旅行口コミサイト・トリップアドバイザーや、中国のSNSでも、鍋ぞう新宿三丁目店は上位にランキングされる。店側からも「ご満足いただけたら発信をお願いします」と声がけする。「日本へ渡ったら鍋ぞうに行こう!」が拡散していくのだ。

2.楽しい店づくりで顧客満足度アップ
 松本支配人の運営方針は「楽しい店づくり」である。楽しい店をつくるには、まず従業員が楽しく仕事をする必要がある。その結果、お客様も楽しくなって満足度が向上するのだ。「人は楽しく働いている時が一番成長する」と支配人は言う。(名言である)楽しければ新しいアイデアや改善案も出てくるものだ。
 もちろん、楽しく働くためには仕事をスムーズに覚えてスキルアップしていく仕組みがなければならない。ワンダーテーブルには「SOP」と呼ばれる「標準作業手順書」がある。キッチン・ホールの作業が標準化されたもので、動画のマニュアルとも連動している。

3.従業員満足度もアップ
 この店ではスタッフのことをアルバイト社員、社員のことをフルタイム社員と呼んでいる。働き方が違うだけで、どちらも同じ大切な従業員ということだ。松本支配人は、そんな従業員たちとのコミュニケーションにおいて、次のようなことを心掛けている。
@名前で挨拶する(「田中さん、おはよう! 昨日は遅くまでありがとう」など)
Aこちらから積極的に話しかける(大勢のスタッフを率いるからこそ、大事なこと)
B毎日のコミュニケーション量を多くする(プライベートなことも含む)
 他の支配人や部下社員にも、自らどんどん話しかけるよう指導している。また、スタッフの質問には全て答えるようにもしているそうだ。おかげでスタッフが何でも支配人に話すようになる。
 たまに新人の質問を通して、お客様の都合ではなく従業員の都合によって作業をしていることに気づかされることがある。新人は新鮮な眼差しで物事を見るから、既存スタッフが疑問に思わないことにも気付いたりするのだ。だからこそ既存スタッフには自分から新人に挨拶して話しかけるよう徹底させているという。休憩時にはトレーナーと一緒に食事(賄い食)をして、その人のことを少しでも多く知り、できる限りたくさんイメージする。例えば帰宅への交通手段がわかったら、一緒のルートで帰れるスタッフを決めて、電車の中でコミュニケーションを図らせたりするのだ。「想像力が大事なんです」と松本店長は語る。(素晴らしい配慮です!)

画像
松本支配人の“ちょっといい話”

■売上最下位(55位)から、6ヶ月で1位へ
 松本店長は29歳で初めて店長になった。モーモーパラダイス池袋サンシャイン店だった。初めてなので気合が入りすぎ、高いものを求めてスタッフにも厳しくなり、毎月数人が辞めていくという結果を招いた。自分にはリーダーシップがないと思って悩み、出社拒否になりそうなほど辛い日々が続いたそうだ。そんな時、店長のすぐ次のポジションにいた部下社員が、「店長のやり方は間違っていませんよ」と言って励ましてくれたのだ。
 ちょうどその頃、一人のお客様から次のようなメールが届いた。東北地方でサービス業の店長をしている人だった。
 「出張で疲れていた時、こちらのお店で食事をさせていただきました。店長さんが試みているサービス力アップの取り組みやスタッフの方のレベルには、正直言って私の店は完全に負けていると思いました。本当に見習いたいと思った、すばらしい営業でした。自分の店に戻ったら頑張ろうと思えるような原動力になりました。スタッフの皆さまにもよろしくお伝えください」
 このメールがターニングポイントになった。「自分たちのやっていることにはっきりと自信の持てた瞬間でした」と、松本支配人は振り返る。
 その後、売上最下位から這い上がっていくことになる。3ヶ月後に30位まで上り、5ヶ月後には3位と目覚しい伸びを見せ、ついに6ヶ月後には1位となった。その際に行われた上司との面談では、大きな拍手で迎えられた。忘れることのできない思い出である。(この驚異的な売上伸び率は、本シリーズ最高です。素晴らしい!)

画像
ピークタイムの店長の仕事(店長はどこを見る?)

 複数の店においてこれだけの売上率アップを実現させる力を持った松本支配人は、ピークタイムにどんな仕事をしているのだろう。どこを見ているのか、お聞きしてみた。
 ここでコツを紹介しよう。
@スタッフが、お客様に「すみません」と呼ばせない営業をしているかどうか
Aスタッフが、お客様に集中しているかどうか
B肉の状態や盛り付け、野菜市場(ビュッフェ)の状態(鮮度・量・清潔感)
Cスタッフの表情(真実の瞬間=笑顔、姿勢、言葉遣い、所作)
D入口周辺(お客様の第一印象、レジの状況、お見送りの様子)
 お客様とスタッフが接する時こそが、真実の瞬間である。

 松本支配人の夢は、モーモーパラダイスのさらなる国内出店と、世界に誇るブランドにまで高めることだ。若い人たちが未来を感じて集まってくるような企業にするため、率先して頑張っていきたいと、熱い想いを語ってくれた。
 ありがとうございました、松本統括支配人!