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売上好調の3要因

1.ライブ感と、提供時間の早さ
 兼政店長の店長方針は「ライブ感」。オープンキッチンの臨場感、ピッツアをカスタマイズできる楽しさ、シャンデリアや大理石のテーブル等グレードの高い内装などで、お客様の心をつかむ。カスタマイズ方法はシンプルだ。まずピッツアベースを5種類の中から選び、次に40種類の具材から好きなものをトッピング。この具材選びが楽しい。ピッツアは短時間(90秒)で焼き上がり、すみやかに提供される。土日の客席回転数は10回転だ。バスを待ちながらテイクアウトする人も多い。

2.高品質でSNS映えするピッツア
 華氏800度(摂氏約425度)に保たれた薪窯で、クオリティの高いピッツアをとことんおいしく、かつ圧倒的な早さで焼き上げる。この薪窯を2台完備している(2台ある店舗は都内では少ない)。見た目もボリュームも自在のオリジナルピッツアが作れることから、女性に大人気。女性客は7割を占める。お客様が自分だけのピッツアをSNSで発信し、それが結果として販売促進の役割も担っている。(いいですね!)お客様こそが最強の営業パーソンなのだ。

3.従業員満足度と定着率の高さ、そして「ありがとうカード」
 新宿店には、大学4年間勤め続けた学生アルバイトが20人もいる。従業員満足度が高く、したがって定着率も高いということだ。みんな楽しく働いているから、彼らの紹介による新人採用も自然に多くなる。スタッフ募集で苦労することはほとんどないという。
 「フリーターから社員になる人が毎年います。それがすごくうれしいです」と、兼政店長は笑顔で語る。社員登用制度(アルバイト→契約社員→正社員)が機能しているからだ。今年もこのシステムで2名が正社員となった。ちなみに契約社員にも、賞与が年2回支給される。
 スタッフのモチベーションを向上させるため、「ありがとうカード」も導入している。月1回、このカードをたくさんもらった人が表彰され、商品券がもらえる。感謝の気持ちをスタッフがお互いに出し合うことで、店の空気がよくなるのだ。
 兼政店長は取材中に何度も「当たり前のことであるQSCの徹底が大事」だと繰り返した。徹底力が重要である。決めたことを徹底して実践できるかどうかによって、従業員の質にも店の質にも差が出る。兼政店長はそこにこだわっている。

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地方のお客様からのうれしいメール

 ごく最近の話。初めて来店したという地方のお客様から、こんなメールが届いた。
 「先日、午後3時から5時まで、新宿店で食事をさせていただきました。入口でお客様を案内していたアルバイト女性の、臨機応変な対応と素敵な笑顔に感動しました。都会に慣れない私たちに対して気持ちよく対応してくださり、本当に楽しい時間を過ごすことができました。仕事への一生懸命な態度に頭が下がりました。彼女の将来が明るいものになるよう祈っています。どうぞよろしくお伝えください。そしてこれからも頑張ってと励ましてあげてください。もちろん、ピザがとてもおいしかったことは言うまでもありません。この店がいつまでも繁盛されることを願っています」(…いやあ、スタッフの仕事ぶりにも感服しますが、このお客様のやさしい気持ちにも感激です。飲食店って、実にすばらしい職場ですね!)

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兼政流コミュニケーション

 店の空気向上やコミュニケーションで大切にしていることは何かを、兼政店長にお聞きした。
@スタッフを名前で呼んで挨拶する
 これは、一人ひとりを大切にする気持ちの表れだ。
A朝礼では「基本(当たり前のこと)の徹底」を常に呼びかける
 スタッフ80人の大所帯なので、毎日人が替わっても基本がぶれることのないよう、QSCの徹底やアットホームな接客を常に呼びかけている。
BグループLINEで情報を共有化する
 お客様からの評価を中心に発信して全員で共有。前述の「地方のお客様からのうれしいメール」も即発信した。
C面談ではやりたいポジションを聞く
 6つあるポジションの中から次にやりたいことを全員に聞き、1人で複数のポジションがこなせるスタッフを増やしている。リーダー的スタッフは6つ全てできる。
D店長の「ありがとうカード」
 店長自身も積極的に感謝の「ありがとうカード」を書く。
Eほめると叱るのバランスは6:4
 ほめる時は、まずは作業が終わったことを報告させる。自分からきちんと報告することが大切だと考えているからだ。それに対し、「早く終わったね、ありがとう!」としっかりほめる。(ただお疲れさまと言われるよりうれしいですね!)
 叱るのは、ピッツアの高品質が保てない時や、お客様に集中できていない時だ。クオリティが少しでも低ければ作り直しをさせる。短時間で作り直せるため、お客様をお待たせすることはない。
 兼政店長のように、ほめる比率の高い店長は多い。ほめることには、次のようなメリットがある。
1.絆が深まる
 「あなたに感心を持っていますよ」という気持ちが相手に伝わり、心の距離感が近くなる。
2.長所(強み)に気付かせる
 ほめることでその人が自らの才能や優れた点に気付き、ますます長所が強化される。
3.ポジティブな空気を生み出す
 店長からほめられることで「この人に付いていこう」「もっと頑張ろう」という気持ちが高まり、行動がよりよいものに変わる。

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 最後に、兼政店長の夢を伺った。「飲食業界の地位向上」だという。この業界全体がもっと着目されて魅力ある仕事だと言われるようになり、大卒者の入社希望が増えるようになってほしい。この会社の事業を通じてそれらを着実に実現させていきたいと、目を輝かせながら語ってくれた。ありがとう、兼政店長!