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売上好調の3つの要因

1.旬の旨い魚が強み
 客層は30〜50代のビジネスマンが中心で、トップや役員クラスの常連客も多く、刺身盛りを注文するお客様が9割。豊洲から仕入れた新鮮な魚を、刺身、煮付け、揚げ物、焼き物と多彩に提供できるのが魚まみれ眞吉の強みで、お客様の満足度は高い。「刺身がお替わりで注文されると本当に嬉しくなります」と西田店長。眞吉で刺身を食べないのは「びっくりドンキーでハンバーグを食べないのと同じ」だと言い、それが店内POPでも掲示されている。(よくわかります!)

2.スタッフのサービス力
 客単価5000円の店だけに、サービスの質は高い。お客様の送迎時には作業の手を止めて全員で挨拶、お客様の椅子は必ず引く、何度でもおしぼり交換、トイレは5分に1回クリーンチェック、コース料理は大皿でなくお一人ずつ小皿に小分けして提供、魚料理に合うコーン茶を提供、高い商品知識を持ったスタッフが料理について説明等々、きめ細かいサービスを当たり前のこととして徹底・継続させている。お客様の会話が盛り上がっている時は静かなサービスなど、目配り・気配りもできる。
 スタッフの商品知識が豊富なのは、賄い料理を通じて覚えたり、休日には半額で食事できたり(福利厚生)と、実際に自ら店の料理を味わえる機会が多いからだ。

3.店の空気が抜群
 店の空気が売上を作るといわれる。新橋店の雰囲気はすばらしい。西田店長は、部下社員やスタッフは家族だと思って接している。これはフィッシュウェルの社風でもある。その想いがスタッフに伝わり、店の空気を良いものにしている。店長とスタッフは多くの情報を共有。例えばグループLINEではこんな言葉が飛び交う。「今日の魚、脂が乗っている」「○○業者さんののどぐろは活きが良かった」「カウンターのお客様、今週3度目の来店」というように、タイムリーな情報がどんどん発信される。
 店長のコミュニケーション量も多い。プライベートな会話もいっぱいだ。西田店長は20代の頃、いかにも職人らしく先輩から厳しく指導されたのだが、今の時代はそうではないと考え、スタッフの良いところを見つけて伸ばす長所伸展法での指導を常に意識している。そういう指導のもとで料理技術を身に付けてフリーターから社員になり、さらに独立を果たした部下もいる。人を動かすのではなく、人が自ら動きたくなるような空気をつくることが重要なのだ。
 スタッフ同士も結束が強い。誰かの誕生日には全員から心のこもったプレゼントが贈られる。3月には卒業式も行ったという。こうして店の空気はますます良くなっていく。

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心のマネジメント

 人を育てるマネジメントには大きく分けて次の2つがある。
1.操作的マネジメント
スタッフを「操作する」対象として見る。いかにスタッフを効率的に働かせ、生産性を上げるかという発想に基づいている。
2.創発的マネジメント
スタッフの自主性を大切にする。自発的行動を支援することで、新たなアイデアやサービスが「創発的」に生まれるのを促す。
 2はスタッフの視点に立って考え、共感力ややりがい、つまり「心」を高めることができるよう支援するマネジメントスタイルであり、「心のマネジメント」と言われている。コミュニケーションはその有効な手段と言えるだろう。コミュニケーションをスムーズにするのは話術だけではない。店長の表情や仕草や姿勢や笑顔など、言葉以外のものも大切にしたい。(参考文献:田坂広志・著「能力を磨く」)
 スタッフをほめて認めて信頼することで、スタッフは「この店長と一緒に仕事がしたい」「この店長と共に何かを成し遂げたい」と思うようになる。西田店長は常にそれを心がけている。だからスタッフが自発的になり、店の空気が良くなってお客様にそれが伝わり、常連客が増えていくのだ。

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ナンバー2の重要性

 西田店長が恵比寿店の店長を務めていた時の話。人通りが少ない立地でファサードも弱くて目立たず、まるで隠れ家のような店だった。オープン当時は月商400万円程度。胃の痛くなる日々が続いた。状況を好転させるべく、入口に看板を設置し、お客様一人ひとりと印象に残る会話をするよう努めて顔も名前も覚え、きちんとしたお見送りを徹底した。いただいた名刺にはお客様の特徴を書き込み、500人以上のお客様を認識できるようになった。そうして5年間にわたり毎年売上を上げていき、月商が当初の倍以上の850万円に上るような繁盛店へと変貌したのだ。(すばらしい!)
 どの店においても、西田店長は「ナンバー2」が重要だと語る。店長自身はスタッフをほめて伸ばすことを基本としているが、店長に次ぐポジションであるナンバー2の社員には、敢えて厳しくスタッフを指導させている。店の最高責任者である店長が厳しく叱ってしまうと、ダメージが大きすぎてつぶれてしまうスタッフもいるからだ。ナンバー2は店長の想いを汲んで物事をスタッフに周知徹底させる必要がある。スタッフの様子を絶えずチェックしつつうまく情報を発信し、店という組織の中で適切に動けるナンバー2の存在が非常に重要なのだ。ちなみに西田店長自身も、フィッシュウェルという企業のナンバー2である。

 最後に、今後の夢をお聞きした。「眞吉をとことんお客様に愛される店にしていきたい。経営理念で謳っているように、魚食を通じて日本を元気にしたい。それができる会社のナンバー2として社長を補佐し、会社の発展と従業員満足の向上に尽力したいと思います」とのこと。「旨い魚を仕入れて、刺身にして、焼いて、煮て、揚げて、美味しさを満喫していただくことに命を賭けていきたい!」とも語ってくれた。
 熱い想いをありがとう、西田取締役!