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売上120%伸長の3つの要因

1.活気と元気に満ちた店内
 秋元店長は、煙力金山小町店(直営の4号店)がグランドオープンした際にオープニング店長として異動し、4ヶ月間勤務した。名駅本店に戻って来た時には、大学生スタッフの卒業退職もあって50%のスタッフが入れ替わっていたという。戻った時には店内が少々重苦しい雰囲気だったとか。この空気を変える必要があると感じ、店長が率先垂範して元気と活気に満ちた言動に努めた。隗より始めよ、それもすみやかに、である。本シリーズで何度も述べてきたように、異動した店長は100日(約3カ月)で店を変えなければならない。

2.とろたん29%、圧倒的に強い看板メニュー
 繁盛店の第一のポイントは、「あの店のあのメニュー」と聞いて誰もが真っ先に思い浮かべる、独自の味わいをもつ看板商品があること。「目指すは日本一」と紹介される名物とろタンの商品構成比は29%。圧倒的なコアメニューである。とろとろの食感がたまらない絶品だ。タンとたれの合わせ方に磨きをかけたことでとろタンの構成比が急上昇し、売上もぐんぐん伸びたという。若い女性の客層が増え、6割を占めるようになった。リピーターの多い名駅本店では、とろタンとドリンクだけで楽しむお客様も多い。

3.ハッピーアワーの売上アップ
 女性客を中心にインスタに画像をアップする人が多く、情報がどんどん広がっている。また16時〜18時のハッピーアワー利用客が増えた。ハイボール・チューハイが80円なのだ。この時間帯の売上は月150万円。売上伸長要因の一つとなっている。

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店舗異動を成功に導く4ステップ

 秋元店長は名駅本店に戻ってから、チームワークの向上を図って店の雰囲気を良くすることに力を注ぎ、それを成功させた。異動後の店舗改善を適切に素早く行うのは簡単ではない。私もクライアント先の店長セミナーで、その取り組み方についてしばしば質問を受ける。次のアドバイスを参考にしていただきたい。

ステップ1:コミュニケーション強化で組織になじむ
 最優先すべきは、全スタッフとのコミュニケーション強化。赴任早々その店の問題点を挙げて直させようとする店長もいるが、それだけでは現在の店を否定することになりかねない。相互理解と意思の疎通があって初めて、改善に着手できるのだ。

ステップ2:全スタッフの面談で、強み・弱みを把握する
 全員を対象に面談を実施し、個別の能力や問題点だけでなく、店舗全体に関わるQSCオペレーションレベルやランクアップ状況をチェックして、弱み・強みを掌握する。

ステップ3:改善・改革への第一歩を踏み出す
 改善・改革の勝負期間は100日(3ヶ月)が目安。カギとなるのはスタッフ教育だ。そのためにはまずアルバイトリーダーを育てることが重要。またスタッフからの良いアイデア・改善案をすぐ実行することも大切である。

ステップ4:チームワークを醸成する
 信頼の厚い実力店長や、売上を伸ばした店長に共通するのは、チームワークの向上に優れていること。お客様は店の空気やムードを敏感に察知する。チームワークが良ければ店の雰囲気も良くなるのだ。スタッフをほめる仕組みや頑張りに応える表彰制度などを作り、チーム全体のやる気を促す必要がある。
短期間でいかにスタッフを変化させることができるかは、店長の采配にかかっている。

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お客様とスタッフの “ちょっといい話”

 名駅本店オープン当初、ハッピーアワーの80円ハイボールでご機嫌になった40代のビジネスマンが、うっかりテーブルのハイボールをひっくり返してしまった。楽しい気分が吹っ飛んでしまったお客様は、悲しげで申し訳なさそうな表情を浮かべた。駆けつけた店長は「お召し物は大丈夫ですか?」と声をかけてスーツとカバンの状態を尋ね、すぐにテーブルと床を片付けたのち、「よろしかったらどうぞ」と、新しいハイボールを笑顔で提供した。その心配りと手際の良さに感動したこのお客様は、さっそく「店長の対応に感動しました!」とSNSに投稿してくれたのだ。
 また、金山小町店オープン当時からの常連である50代自営業の男性客は、毎週来店するほどの煙力ファン。全スタッフの名前も覚えて、煙力の魅力をいつもSNSに上げてくれるのだ。スタッフ全員が自分の息子や娘のような存在だという。(ロイヤルカスタマーが店をつくる。すばらしいですね!)

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店舗運営で気を付けていること

 名駅本店は煙力の1号店である。このためオープン時にはまだ知名度がなく、外販活動に一生懸命取り組んだ。近隣のビジネスホテル回りや、店頭でのチラシ配布、クーポン券の店頭設置など、店を知ってもらうために様々な努力をした。現在はお客様のSNSによる口コミの効果が大きく、拡散し続けている。
 店舗運営で気を付けていることを秋元店長に尋ねた。

@店長の仕事は準備業
 焼肉屋は準備が命。14時〜16時に本日の焼き肉の準備、16時〜18時には次の日の準備・仕込みをする。これで全てが決まる。この段取りが遅れると、提供時間が遅くなってしまう。準備が完璧ならば、平日はキッチンスタッフが一人でも可能なのだ。(店長の仕事はまさに準備業ですね!)

A報・連・相の徹底
 比較的新しい店だけにまだベテランスタッフが少ないため、どんなことでも店長に報告・確認をするよう指導。正しいかどうか迷ったら、自分で判断せずすぐ店長に聞くようにさせているが、新人の方からは店長に聞きづらいのを察して、店長から質問を促したり、困っている様子が見えたら教えたりするとのこと。

Bほめると叱るの比率は9:1
 秋元店長は、たまにはパフォーマンス的にスタッフを叱ることもあるが、基本的には叱らず、小さなことでもほめて自信を持たせるようにしている。ほめ方は「よく気付いたね」「動きにスピードが出てきたね」「今日も笑顔がいいね」というように、具体的だ。
 秋元店長の夢は、煙力の100店舗達成と、それに向けて店長たちを指導できる立場になること。優れたコンセプトを持つ煙力なら、100店舗への道も遠くないと思うよ。ありがとう、秋元店長!