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月商1500万円(坪売上53万円)の2つの要因

 恵比寿店は現在こそコロナ禍で売上を落としているが、オープンから16年間、月商1500万円以上(坪売上53万円)を維持してきた。超繁盛店の主要因は2つある。
1.QSCの徹底
 看板商品の柚子塩らーめん1080円は、らーめん店としてはアッパーな価格だが、それに見合うクオリティへのこだわりがある。食材の鮮度、取り扱い方、温度、湯切り、ほぐしを徹底教育しているほか、スープはもちろん、チャーシューや半熟玉子にもとことんこだわっている。提供時間も早い。通常は5分以内、ピークでも10分以内だ。このため1時間に3回転は可能で、ピークタイムの時間帯売上は6〜7万円に上る。
 サービス面では、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」に気持ちを込めることを徹底。元気の良い挨拶はもちろん、カウンターのお客様には丁寧に商品を提供するなど、優しくきめ細やかな振る舞いも大事だと、藤田AMはスタッフに指導している。
 クレンリネスは、特にファサードとトイレを意識して清掃。お洒落な店内、ピカピカに磨かれたキッチン、トイレの美しさに驚いた。QSCの徹底は飲食店の原点である。
2.常連客ノート活用
 アイドルタイムがほとんどないのが売上好調の主要因だと、藤田AMは語る。午後3時でも深夜の時間帯でも、お客様は5割以上入っている。お客様がピークタイムの混雑を避けてその前後に来店するため、常に程よくお客様がいる状態となる。
 常連客も多い。藤田AMの店長時代には、気軽に話せる常連客が200人以上いたという。近隣商店の従業員やオフィスのビジネスパーソンが多く、男女の割合は6:4。
 この店には「常連客ノート」というものがある。毎日記入するようになって7年。常連客の総数は何と1万人を超える。お客様のお名前と会社名や社員証、領収書、服装などの基本データを記入し、麺の固さや水菜ぬきといったお好みなどの情報を付け加えていく。こうして次回以降の来店時に「いつものように麺は硬めでよろしいですね」と、個別対応ができるようになるのだ。また2回以上来店のお客様には☆印をつけ、スタッフ全員が覚えるようにしている。
 また、鶏油(ちーゆ)量のリクエスト具合などで、新規客かどうかはすぐに察することができる。新規客がいる場合、積極的に常連客と気軽な会話を交わし、アットホームな雰囲気を感じてもらうようにしている。(細かい配慮、さすがですね!)

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店長時代の初期(失敗)と後期(成功)

 店長時代に嬉しいと思ったのは、「お客様にご迷惑をおかけしたのをきっかけに、その後、常連客になっていただいたこと」だという。スープをこぼした、提供商品を間違えた、髪の毛が入った…等々の失敗が起きてしまうことがある。その場でしっかりお詫びし、外まで出て丁寧にお見送りをするのだが、二度と来店していただけないかもしれないと、心の中は緊張と心配でいっぱいだ。
 店長の休日に、スタッフがつけ麺のタレをお客様のズボンにこぼしてしまうという出来事があった。連絡を受けた店長はそのお客様の体型を聞き、自分の新しいズボンを持ってタクシーに飛び乗った。店に着くやひたすら謝って、ひとまず替わりのズボンで帰っていただき、汚れたズボンはすぐクリーニングに出した。店長の早い対応にお客様は感心し、それからは常連客になっていただいている。失敗が成功へのチャンスになった好例だ。
 店長になった当初(初期)と経験を積んでから(後期)では、失敗への対応にも差がある。初期には気合が入りすぎ、従業員には上から目線で指示や命令を下し、毎日叱り飛ばしていたそうだ。徹底させねばとの焦りから細かいダメ出しばかりして、従業員から嫌われていた。3割の人が辞めていったという。「失敗でした」と、今では深く反省している。
 失敗を糧に、やがて従業員満足度が大切であることを痛感するようになった。まずは従業員との心の距離感を縮めるべく、営業以外の場でのプライベートな話を増やしていった。褒めるのは苦手だったが、小さなことを意識して褒めることから始めた。初期には9:1で叱っていたけれど、今は9:1で褒めている。注意するのは営業中ではなく、仕事が終わった後に事務所で、叱るというよりも教育する形で行う。注意した後は帰り際に必ず「次は来週の月曜ね。よろしく!」と、笑顔で見送る。(大事なことです!)
 リーダーのパワーには、ポジションパワーとパーソナルパワーの2種がある。前者は地位や肩書が持たせる力のことで、強制力、支配、管理、命令が多いマネジメントを指す。それに対し後者は、リーダーとしての魅力や誠実さといった人間力によるマネジメントを意味し、自立型スタッフが多く育つ。この店では店長自身が変わり、パーソナルパワーによって店全体が変わったのだ。

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各店長に他店をチェックさせる(AMのマネジメント)

 藤田AMは、恵比寿、原宿、三軒茶屋の3店舗を管理している。平日、週末、ピークタイム、アイドルタイム、深夜など、曜日や時間帯を変えて店舗を巡回し、指導している。店舗チェックは、ファサード、券売機、トイレ、スタッフルームでの着替え(ユニフォーム)、冷蔵庫管理、仕込品、麺のあげ方、試食、店長との面談等々、きめ細かくて具体的だ。例えば麺のあげ方は動画撮影し、従業員一人ひとり指導している。
 私が良いと思ったのは、各店の店長が他店のチェック(QSC25項目)を行っていることだ。他店の強みや弱みが分かる上、AMと店長3人でミーティングするため同僚からの指摘が互いに刺激となるため、AMが指導するよりも各店のレベルアップに効果的だという。読者の皆さんも参考にしていただきたい。
 最後に藤田AMは、「今後AFURIの店舗が増え続けて企業としてさらに成長し、将来は幹部として活躍できるよう、努力していきます」と語ってくれた。
 ありがとう、藤田エリアマネージャー!

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