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売上前年比130%の3つの要因

 恵比寿店は現在こそコロナ禍で売上を落としているが、オープンから16年間、月商1500万円以上(坪売上53万円)を維持してきた。超繁盛店の主要因は2つある。
1.サラダバーの導入
 あさくま1号店であるこの老舗店は、ずっと昔ながらの店構えで営業し、ブッフェスタイルはとっていなかった。だがサラダバーを導入するやいきなり売上前年比130%となった。あさくまのサラダバーには名物のコーンスープや、プリンやワッフルなどのデザートも並ぶ。このコーンスープ、愛知県人なら知らない人はいないほど人気のこだわりメニューで、あさくまブランド製品としてスーパーでも販売されている。他社チェーンのサラダバーとはひと味違うものになっているのだ。
 どんな企業にも、導入期・成長期・成熟期・衰退期がある。飲食チェーンも、10年〜20年で成熟期・衰退期に入ることは避けられない。それゆえに、新たな手を打って生き残りを図る必要がある。あさくま本店も老舗の名店であることに甘んじず、サラダバー導入や改装で進化を図った。このように、成熟期を過ぎたら「改装」「新しい看板メニュー」「販売チャネルの拡大」「新システム導入」等々により、生き残る道を模索することが重要だ。

2.スピードと気遣い
 富永店長の店長方針は「スピードと気遣い」の向上である。かつてマクドナルドの店長を務めていたため、あさくまに入った時は、提供時間が遅く感じられたそうだ。現在の料理提供時間は10〜15分、最大ピークでも20分以内としている。また、スタッフの挨拶や動作に対して速やかに対応することを心がけている。
 気遣いの面で留意しているのは、お客様から言われる前にニーズを先読みし、ホスピタリティーあふれるサービスに徹することだ。
あさくまでは全店共通して、スタッフのことを「ふかかちさん」と呼んでいる。
これは、お客様にお値段以上のプラスαを提供する人という事でそう呼んでいるが、
同時に一緒に働く仲間に対しても気遣いができる人という想いが込められた呼称である。

2.チームワークと店の空気
 チームワークや店内の空気が良い店は売上も良いと、これまでも本シリーズで度々言ってきた。このあさくま本店は、まさしくそういう店である。
 富永店長は、スタッフに対し常に「ありがとう」「お願いします」と丁寧に対応している。スタッフを決して呼び捨てにせず、いつも「〇〇さん」と呼びかけている。上から目線での指示・命令はない。毎日明るい声でスタッフに挨拶し、たくさん声をかけ、いっぱい褒める。褒めると叱るのバランスは9:1。小さな成長を見つけては、すぐ褒める。
 この店長の行動がスタッフ全員に影響する。みんなが互いを尊重し、気遣って、チームワークが向上する。こうしてオペレーションがスムーズになり、店の空気がどんどんよくなっていく。それがお客様にも伝わるのだ。

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あさくま本店の、ちょっといい話

 富永店長は、関東地区から愛知県に異動した店長だ。「この地域では私よりお客様の方があさくまのことをよく知っている」と語る。愛知県内でのあさくまのブランド力の高さに驚いたという。
 お客様の方から歴史ある店の看板スタッフに会いに来るのは、本店ならではの強みと言えるだろう。ベテランスタッフのキャリアは20年にも及ぶ。コロナ禍で時短営業を余儀なくされた昨年4月・5月に、ハンバーグ弁当をテイクアウトで販売した。週末は電話が鳴りっぱなしという状況だったにも関わらず、ベテランはテキパキと仕事をこなし、両月ともに250万円を売り上げるという見事な手腕を見せた。
 もう一つ、驚くような話がある。人件費を減らしたのだ。平日の夜は店長が率先してキッチンに立ち、1人で回してのけた。(店長はプレイングマネージャーです!)
 それまでは、店長が休みの日はスタッフ2人でキッチンを回していたのだが、店長が1人でやっている姿を見て、疲れているはずのキッチンリーダーも「私も1人でやります」と言ってくれたのである。生産性が向上し、しかも売上は130%アップ。驚き以外の何ものでもない。ちなみに人件費率は昨年30%だったが、今は22%である。
 この店は、創業者の近藤誠司氏生誕90周年のフェアメニューキャンペーンでも、全店ナンバー1の成績を上げた。スタッフ全員で徹底的にお客様にフェアメニューをおすすめしたからだ。この徹底力の高さも本店の強みである。(差別化に繋がるのは徹底力ですね!)

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「2:6:2」でなく「6:3:1」

 店舗運営上で富永店長が特に気をつけているのは、歴史のある古い店だからこそ、クレンリネスを徹底させること。もう一つは、本部の指示をそのままスタッフに伝えるのではなく、翻訳して伝えること。店長自身の言葉でわかりやすく伝えるようにしているのだ。(大事なことです!)
 「2:6:2の法則」(優秀な人2割・普通の人6割・劣る人2割という組織論)をベースに、この店のスタッフバランスを尋ねたところ、店長の答えは何と「6:3:1」だった。ベテランのみならず、学生アルバイでも小さなクレームなら自分で判断して対応できるという。優秀なスタッフが6割いるからこそ、売上130%増も可能なのである。
 富永店長の今後の夢を伺った。「大学生から見て外食産業がもっと魅力ある産業になるように、そしてこの業界に入ってくれるように、現状を変革して行きたい。お客様の幸せに貢献したいと願いながら人と接することは、他の業界ではなかなか経験できないし、人を思いやる心を育むのも外食産業がベストだと思うからです」と、熱く語ってくれた。
 ありがとう、富永店長。100年の老舗を目指して頑張ってください!