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コロナ禍でも売上好調、その3要因

 柳本SVの店舗運営方針は、「グルメ回転寿司としての誇りと自信を持って仕事をしよう」である。
1.鮮度抜群の商品力
 魚魚丸では、毎日三河の市場から直送される活きの良い魚介を素材に、鮮度の高いこだわりのネタを提供している。看板メニューのまぐろや焼穴子一本勝負はたいへんお値打ちで、バリューは非常に高い。また、寿司職人による「マグロ解体ショー」や「藁焼きショー」は迫力満点で大人気だ。マイクパフォーマンスと太鼓・ベルの音が店内に鳴り響き、活気と賑わいを演出する。

2.テイクアウト伸び率200%
 寿司のテイクアウト比率は25%で、売上前年比は200%。非常に高い伸び率だ。寿司桶の需要が伸びたのかと思いきや、コロナ禍のため一人前寿司が増えたという。人数分だけ購入するので、客単価も高くなると柳本SVは言う。ネット予約も伸び続けている。

3.全体ミーティングで自立型スタッフ育成
 チームワークや店の雰囲気が良いのは、月1回全体ミーティングを行っているからだ。ミーティングでは、会社の方針や新商品・キャンペーンなどの新しい情報を共有するほか、グループに分かれてディスカッションも行う。店を良くするために自分たちが何をするかをグループ別に話し合い、発表する。
 例えばキッチンでは、在庫管理を徹底するため食材の置き場所を決定。ホールでは次回のリピート率を上げるため、来月の新商品やキャンペーンを紹介するPOPやポスターをスタッフが手作り。いずれも効果を上げている。
 「THINK DO THINK」の姿勢に基づいたこのような活動によって、自立型スタッフが育っていくのだ。

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新人店長時代の失敗談と傾聴力

 柳本SVは、初めて店長になった時の失敗が自分の考え方を大きく変えたと語る。
 当時はまだ22歳。店長になったばかりで気合が入りすぎ、スタッフに対して一方的に指示・命令するばかりの店長だったそうだ。このため店の雰囲気は良くなかった。
 そんな時、1人の主婦パートからこう言われた。「会社や店長の想いは分かりますよ。でも私たちはパートの従業員であって、できることとできないことがあります。本社の意向だからといって、お店や従業員の状況を考慮せず、そのままの言葉で指示するのは違うのではないでしょうか?」
 胸にグサッと突き刺さった。その通りである。店の現状を踏まえず本部からの指示をそのまま受け売りの言葉で伝え、それでいいと思い込んでいた。従業員の事情や気持ちを考えずに命令一辺倒だったのも大きな問題だ。それに気づかせてもらったとのこと。これを機に、自分中心のマネジメントからスタッフ中心のマネジメントに変え、全体ミーティングのようにスタッフが自分の意見を言える場を多くしていった。
 柳本SVがスタッフをほめるのは、いつもと違う行動をした時だ。小さな進歩を見つけたらすぐにほめることが重要。ほめるのは、スタッフに身に付けさせたい行動を強化するためである。
 店舗運営上いつも気をつけているのは、人を気遣うとと、傾聴力(人の話を聴く力)を高めることだという。「全ては人ですから」と柳本SVは語る。「私は寿司と店のことだけ考えているため、外の情報がかなり少ない。スタッフは地域や家族や最新のニュースといった情報をたくさん持っているので、いつも勉強になっています」
 これまでにも度々述べてきたことだが、「自分」ではなく「他者」を意識し、スタッフ全員に関心を持ち、傾聴力を高めてプライベートな話もたくさん聞き、スタッフへの理解を深めていただきたい。雑談力とチームワークは比例するのである。

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スタッフ採用の基準

 柳本SVのスタッフ採用基準には、笑顔や挨拶などの第一印象は含まれない。それらは採用後の教育によって身に付けることができるからだ。
 店長時代、柳本SVが面接の際にした質問は3つ。
@ 土日の繁忙日に出勤できますか?
A 働くポジションはどこでもOKですか?
B どんな人とも一緒に働けますか?
 Aの「働くポジション」とは、洗い場、キッチン、ホールで寿司を握るなど、どのポジションでも大丈夫かという意味。ホールの仕事はできないという人もたまにいるからだ。全てのポジションができる人の方が、店長としては望ましい。
 Bの「どんな人とも一緒に働けるか」は、苦手な人ともうまく関係を築ける、あるいは築いていこうという前向きな姿勢を問う質問だ。
 この3つがOKなら、「あなたご自身で決めてください」と言って相手に委ねる。断ってくる人もいるそうだ。なかなか思い切った採用方法である。

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地域密着一番店

 三好店は平均月商2500万円の超繁盛店で、1月は4000万円を超える。三好市での知名度調査でも、95%の認知度がある。初回客と常連客の割合は1:9。ほとんどが常連客である。地域に愛される一番店なのだ。柳本SVは100組以上のロイヤルカスタマーを認識しており、私が訪れた時にも多くのお客様へ親しげに声をかけていた。

 最後に、素敵なエピソードを伺った。柳本SV自身、三好店で高校・専門学校時代にアルバイトをしていた。店長になってこの店に戻ってきた時、アルバイト時代から知っている常連客から、「この店を任されるようになったんだね。おめでとう。出世したね」と言われ、とても嬉しかったという。地域密着一番店ならではの話である。
 最初は緊張してお客様と話せなかったスタッフが、接客を通じて人間的に成長し、就職活動もスムーズにできるようになって採用される姿を見るのもすごく嬉しい。「魚魚丸で働いて、店長に指導していただいたおかげです」と報告してくれるのだ。
 これからSVとして自分の経験を生かし、優れた店長をたくさん育てられるよう頑張ってください。ありがとう、柳本スーパーバイザー!