1．卓越した接客サービス
　林オーナーの店舗方針は「挨拶、礼儀、基本の徹底」である。だから店に活気があり、スタッフの笑顔が素晴らしくて接客レベルも非常に高いと、本部でも評判だ。林オーナーは、「第一印象が大切。マスクをしていても目で笑顔が伝わるように」と指導している。
2．常連客の多さ
　新橋店には10〜15年勤めているスタッフが多く、それぞれに常連客がついている。全員が50人〜100人のお客様を認識しているのだ。一人ひとりの接客力の高さに店全体の雰囲気の良さとチーム力の高さが加わり、常連客の心をがっちりつかんでいる。
3．チームワークの良さ
　スタッフ全員、全ポジションの作業ができる。混んできたら3人がホールに出てオーダーを取り、その3人がすぐキッチンに入って商品を作ることができるので、非常に生産性が高い。
　また林オーナーはシフトを組む際、QSCバランスを保つため、ベテランと新人、明るく元気なスタッフと冷静でクレンリネスに強いスタッフというように、組み合わせを工夫する。サッカーやラグビーと同じく、攻めと守りのフォーメーションを考えているのだ。

　新橋店はスタッフの定着率が高い店だが、林オーナーは一層の充実を図るため、余裕のある時に求人を行う。10人面接して採用は2〜3人。人柄がよくて個性豊かな人を、厳しい目で選んでいる。
　たこ焼作りの作業をマスターするのに、3ヶ月もかかるそうだ。温度、スピード、完成度などにこだわって丁寧に作り上げる。まさに職人の世界だ。高品質の商品を提供しているからこそ、築地銀だこは国内外に500店舗以上を展開する大チェーンになったのである。
　ハイボール酒場では、たこ焼とハイボールのセットの注文が90％を占める。他に2〜3品注文して1800円ほどの客単価となる。立ち飲みなので滞在時間は30分から1時間。新橋という立地のせいか、一次会へ行く前に待ち合わせる「0次会利用」が多い。さらに22時以降にもピークが来る。最後の締めとして多くの人が来店するのだ。

　新橋店に常連客が多い理由はお分かりいただけただろう。売上を伸ばすなら、まずは常連客を増やすべきだ。私の店長育成セミナーでも、常連客の作り方について質問されることが多い。以下は、常連客獲得のためのチェックリストである。参考にしていただきたい。

ロイヤルカスタマー獲得チェックリスト
1．ロイヤルカスタマー作りの重要性を理解しているか
2．お客様との会話を積極的にしているか
3．お客様の名前を聞き出す努力をしているか
4．宴会予約の幹事さんの名前と会社名を覚えているか
5．顔と名前が一致するお客様が100人以上いるか
6．ロイヤルカスタマーの料理・飲み物の好み、苦手な食材を知っているか
7．SNSでキャンペーンや新メニューのお知らせを定期的に発信しているか
8．レジでお客様の満足度を把握し、適切な言葉をかけているか
9．ロイヤルカスタマー情報のカルテ化が進んでいるか
10．ロイヤルカスタマーには、よりフレンドリーな対応や話し方をしているか
11．お子様や高齢者には、目線を合わせて笑顔で話しかけているか
12．最近来店していないお客様に対して、次の手を打っているか

　新橋店の最大の強みは優れたスタッフたちである。スタッフに対する林オーナーの「ほめる」と「叱る」のバランスは、9対1だ。新人には小さなことでもきちんとほめ、承認欲求を満たして自信をつけてもらうようにしている。またほめる場合は本人ではなく、他のスタッフに言う。これを裏ぼめという。オーナーが自分のことをみんなの前でほめてくれているのを知ると、とても誇らしい気持ちになる。
　また、例えば清掃が苦手なスタッフには、上手なスタッフから学ばせるようにする。苦手な人のサポートになるのはもちろん、上手な人はさらに自信を増す。
　新橋店の近い場所にもう1店舗あり、そちらの店舗からヘルプのためスタッフを呼ぶこともある。早い人だと2分で歩いてくる。そのことをオーナーが他のスタッフに話したところ、全員が早く歩いてくるようになったそうだ。

　最近の嬉しい出来事を尋ねた。林オーナーが焼くたこ焼だけを食べる常連客がいて、それがいかに美味しいかを食べログに書いたという。それを見たテレビ局が取材に来て、15分間も放映されたのだ。もちろんその後の売上は上昇。「嬉しいですね」と破顔の林オーナーである。
　年末に行われた全員の飲み会で、「何をしている時が幸せか?」という話になった。すると1人のスタッフが、「この店でみんなと一緒に仕事をしている時が一番の幸せ！」と言ってくれたそうだ。「これは本当に嬉しかった」と、林オーナーはしみじみ語る。こんな素敵なスタッフがいるのは、林オーナーの人間力が素晴らしいからだと思います。
　次の目標は新橋エリアでの店舗拡大。頑張ってください、林社長！