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売上拡大120%、4つの要因

1.観光スポット「道頓堀」
 好調の外部要因として、まずは一等地にあることが挙げられる。道頓堀という関西を代表する観光エリアに立地し、円安などで拡大中のインバウンドの受け皿となっている。また4フロア180席の大型店であり、非常に多くのお客様を受け入れることができる。

2.客席回転率(客数)アップ
 通常お好み焼は調理に20分程度かかるが、この店ではお客様の入店と同時に調理をスタートする場合もあるので、通常より短い時間で提供できる。看板商品の「道頓堀焼」が商品構成の50%を占めるため、ある程度の先行調理が可能な状況もあるとのこと。

3.客単価アップ
 この店の看板メニューは、@道頓堀焼1900円、A広島焼ミックス1780円、B明太マヨネーズ1700円だ。
 一等立地のおかげもあって、客単価は千房の他店より高い。コロナ前は1800円で現在は2000円と、200円アップしている。1日の来店客が平均800名程度なので、コロナ前と比べて1日15万程度の売上向上だ。

4.サービス力アップ
 道頓堀店には80人のアルバイトスタッフがいて、そのうちの60人が外国人(ネパール・スリランカ・ベトナム、他)である。
 このため、日本のホスピタリティや親切心、礼儀・礼節の重要性をしっかり踏まえた上で、テンションアップやパフォーマンスなどの教育をおこなっている。
 またGoogleコメントでほめられたことや注意されたことに対して徹底指導し、サービス力アップに力を入れているので、顧客満足度が高い。

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常連客がスタッフを指導(店長の「ちょっといい話」)

 ちょっと驚くいい話をいくつか紹介しよう。石垣マネジャーが町田店の店長だった時、ワンマネ(1人店長)体制だったため、休日は学生アルバイトに営業を任せていた。常連客の多い店だったので、「店長が休みでも、みんな頑張っていたよ」などと、しばしばお客様から報告を受けた。何か問題があった時にも、その問題点を常連客が教えてくれたという。なんと、常連客が終礼に参加することもあった。(長期連載の実力店長シリーズではありますが、こんな話は初めて聞きました!)
 また、たとえオペレーションに問題があっても、何も文句を言わずにお帰りなってしまうお客様がいるのだが、そういう場合、文句こそ言わなくても二度と来店しない人が大半だという。それは最悪だと石垣マネジャーは思っている。だからこそ一日を締めくくる終礼では、その日に気づいたことを全てスタッフに伝えて速やかに指導していた。今日の反省を今日の終礼で行い、今日のうちに指導することが重要。「あのご案内はすごく良かった」「あのタイミングでのあの対応は問題だった」など、その日のうちに問題点を認識してリセットし、明日のオペレーションの改善につなげていくのだ。この終礼は評判を呼び、近隣の千房の店長が続々と見学に来たとのことだ。
 石垣マネジャーは入社20年になる。この間に多くの学生アルバイトが卒業して就職した。5年後や10年後、結婚式に招待されることも多い。これまで10人以上の元アルバイトたちから招待されている。
 また、当初は飲食業に向いていなかった不器用な学生が、石垣マネジャーの下で働くことで成長し、千房や大手飲食チェーンに入社を果たしている。とても影響力の大きいマネジャーである。

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外国人スタッフの育成

 お客様の8割以上が外国人(インバウンド)だという道頓堀ビル店。きちんとした挨拶、明るく大きな声、活気、エレベーターの扉が閉まるまでのお辞儀などを通して、日本のサービスレベルが高いことを外国人のお客様に実感してもらいたい。そして感激してもらいたい。そのためにもスタッフ教育が重要なのだ。前述したように外国人スタッフが3/4を占める店なので、日本の「もてなし」の文化を徹底教育するとともに、エンタメ性の高いパフォーマンスで外国人客を魅了するサービスの教育もおこなっている。
 例えばお好み焼のパフォーマンスとして、マヨビームというものがある。2メートルぐらい離れたところからお好み焼にマヨネーズを飛ばすのだ。お客様には「写真の撮影準備をしてください」と前もってお知らせする。このマヨビームは練習をかなり積まないとできないパフォーマンスで、店長の許可が必要だ。
 石垣マネジャーの「ほめる」と「叱る」のバランスは、1対9とかなり厳しい。外国人スタッフの場合、その時その場でわかりやすく、大げさと言えるほどはっきりと叱ったほうが効果的だからである。ただし、ふだん厳しい店長からたまにほめられた時の感激はとても大きい。

 最後に、今後の目標を伺った。短期的には、この4月オープンの新しい店を成功させること。これは7階のハラル(イスラム教)専用の店で、食材やメニューへの配慮はもちろん、じゅうたんを敷いた祈祷室や体を浄められる設備も完備している。
 将来的には、外国人スタッフ(店長や社員やアルバイト)が自分の国で千房のFCを経営してくれるのが夢だ。「世界各国に千房が広がってほしい。それらの国々を訪問したいですね!」と語ってくれた。
 ハラル対応の店もでき、ますます売上拡大が望める道頓堀ビル店である。頑張れ、石垣エリアマネジャー!