画像
売上好調(130%)、3つの要因

 かに地獄の客単価は8000円。新橋という立地から平日の客層はビジネスマン中心で、週末は平日に満足したビジネスマンが家族を連れて来店することが多い。
 村田店長の店長方針は「蟹で満腹もう地獄という店舗コンセプトのもと最高に満足していただく2時間にしよう」。かに三昧・かにづくしの各コース料理は、それぞれカニを存分に味わえる至福の2時間となっている。

1.SNS(インスタグラム)の発信 村田店長は料理の画像をSNSにたくさん上げている。それが有名なインフルエンサーの目に留まり、あるときその人によって多くの動画が撮られ、発信された。それが100万回も再生される結果となり、店の認知度が一気に向上したという。

2.カニを選ぶ・カニを剥(む)く・カニの競(せ)り
 かに地獄では、お客様自ら店頭でカニを選べるだけでなく、焼くか茹でるか好きな調理法も選べる。村田店長の異動後からは、お客様の目の前でカニを剥くサービスを徹底化。これが口コミで広まり、お客様が増えた。
 また週末(金・土・日)にはカニの競りを実施している。店内を暗くし、店長がビールケースに登って鐘をカランカランと鳴らし、「当店名物、カニの競りを始めます!」と叫ぶや、1万円前後のその日イチオシの蟹の競りが100円からスタートするのだ。店内は非常に盛り上がり、かなりの高値がつくこともある。
 選ぶ、剥く、競るというパフォーマンスが、口コミ効果を増大させている。

3.外国人スタッフの教育
 まだコロナ禍の只中にあった2021年、東京都が4人までの会食許可を出した途端に店が急に混み出した。それまで300万〜400万円に留まっていた売上が11月には600万円になり、12月には1400万円になった。人材が揃わず、オペレーションは混乱を極めた。スタッフは外国人ばかり(うち8割がミャンマー人)で、忙しすぎて辞めてしまう人も少なくなかった。失敗と改善の連続で大変な日々ではあったが、「その時の経験が現在に生きています」と店長は言う。
 アルバイトリーダーを3人育成した。毎月の目標をホワイトボードに記入し、教育用のチェックシートも作成。「このような店にしたい」という理想のイメージを思い描き、入店から退店までのストーリーを打ち立て、それに基づいて教育したのだ。

画像
フロリダのハネムーン夫婦からのメール

 村田店長に、最近嬉しかったことを伺った。
 かに地獄は記念日や特別な日に利用されることの多いい店だ。最近ハネムーンで立ち寄ったフロリダのご夫婦から、お礼のメールが届いた。心に響くメールだったという。
「私たちは新婚旅行中、日本語を話せなかったのにこの店で素晴らしい時間を過ごしました。日本ではどの飲食店のスタッフも親切でしたが、ここでは特に優しく親切に接していただきました。観光地ではないところでカニを食べたいという私たちの願いを、この店は叶えてくれました。この店の特別なサービスに、私たちは永遠に感謝します。もっと日本語を勉強して、この店に戻ってきたいと思います。本当にありがとうございました」

画像
スタッフには「伝わるまで伝える」

 村田店長がこの店へ異動したばかりの頃は、新しいこと(仕組みや方法)にトライしようと試みても、以前から働いているスタッフに受け入れてもらえなかったという。その状態を打開すべく、とにかくスタッフの声にしっかり耳を傾けた。そして自分の考えを、わかってもらえるまで丁寧に説明し続けた。また、自ら率先してお客様に対応し、一つのテーブルに集中してサービスする姿を見せた。お客様が喜んでいる様子や数字が良くなっていく結果を見せるうち、スタッフみんなに納得してもらえるようになった。
 お店の理想像を描き、「ここを改善したい」と、理想の実現に向けた具体的な目標を掲げて、スタッフに動いてもらうようにした。みんなに伝わるまで徹底して伝え続けた。そうして半年ほど経ち、店の空気は見違えるほど向上し、チームワークも良くなったのだ。
 1 カニのクオリティを重視。(身の付き方や色合いが良いもの以外は提供しない)
 2 全員が入口を向いて仕事する。(お客様を迎える姿勢)
 3 笑顔と元気な声。(笑顔が出て、声も大きくなった)
 4 カニを剥くサービスのタイミングを意識。
 5 カニを選んでいただくタイミングを意識。(入口のショーケース前が混み合うので、順番にご案内。商品説明がきちんとできるようになり、店長不在でもスタッフだけで営業可能になった)
 このように改善をして、着実に結果を出してきた。会社からの信頼も厚く、村田店長の下で働きたいという社員の声も多い。この店にいると、スタッフも生き生きと仕事をするようになっていく。お客様だけでなく社内の人材まで活性化させるのだ。

 村田店長の今後の夢は、「かに地獄の2号店を出すこと。そして、かに事業部を作ることです」と、笑顔で語ってくれた。
 ガンバレ、村田上級店長。いい話をありがとう。