実力店長はここが違う 田中コンサルティング事務所 田中司朗
売上好調の3つの要因(年商4億円)

1.圧倒的なインバウンド集客力
 石川支配人の店舗方針は、モーモーパラダイスのブランドビジョンでもある「忘れられない100分を提供して世界中を笑顔にする」だ。新宿東口店のお客様はインバウンドが8割で、うち台湾、韓国、中国などのアジア人客が7割、3割が欧米人である。台湾に30店、タイに28店出店しており、本場の東京の店に行ってみたいというお客様も多い。

2.スタッフの人員体制が充足
 新宿東口店には77人ものスタッフが在籍しているため、週末のピークタイムでも安定した営業ができている。外国人スタッフが18人、英語の話せる日本人スタッフが8割いることから、外国人客にもきめ細かく対応でき、良いサービス提供できている。
 また社内のESアンケートも高評価。従業員満足度の高さも優れたサービス提供に繋がっている。

3.Google口コミ評価4.8
 Google評価の4.8という数字にも驚く。最近まで4.3だったが、レジにて口コミのお願いをしたところコメント数が650件に上り、かつ非常に高い評価が多かったため、この数字にまで伸びたという。
 高評価の理由は「店に対する愛着心の強いスタッフが多いから」だと石川支配人。「責任感もあり、従業員同士の関係も非常に良いからです」と言う。初めて訪れる海外のゲストに対し、しゃぶしゃぶやおつくりの食べ方を丁寧にご説明しているので、翌年また来店するリピーターも多い。
 「スタッフにはいつも、高評価を受けている店を通して自分自身の価値も高めてほしいと話しています。飲食店で働くのは楽ではないけれど、この道を選んだスタッフたちは本当に素敵だと思うから、できる限り応援したい」と石川支配人は語る。(支配人の愛情の深さが、スタッフの愛着心をますます高めているんですね!)

実力店長はここが違う 田中コンサルティング事務所 田中司朗
幸せの時空間(お客様の話)

 石川支配人がモーモーパラダイスのアルバイトリーダーだった時(20代前半)、初来店してくれたカップルがいた。石川リーダーの接客が気に入り、月に1回のプチ贅沢と称して石川リーダーに会いに来てくれるようになった。
 結婚式当日もわざわざ「今日結婚しました」と報告に来てくれた。やがて石川リーダーは社員となって店も異動。そのカップルはFacebookで石川さんを見つけ、その店まで来てくれた。「子どもが生まれたので、石川さんに見てもらいたくて」とのこと。「石川さんがいてくれて、私たちの生活がより豊かになり、潤いが増しました。いつもありがとうございます」との嬉しい言葉をいただいたという。
 石川さんに会いに来る場所、月1回の大切な思い出を作る場所。それはお2人にとっての幸せの時空間なのだ。これは、忘れられない100分を提供してお客様を笑顔にする仕事である。(飲食店は人を幸せにする、素晴らしい職場ですね!)

実力店長はここが違う 田中コンサルティング事務所 田中司朗
サービスとホスピタリティの違い

 石川支配人に、店舗運営で気をつけていることを伺った。「常にゲストの視点で物事を見るよう心がけています。視線がどこに向いているか、自分の都合で動いていないかどうか、いつも意識しています」とのことだ。
 またサービスとホスピタリティの違いについても伺った。「サービスはブランドの価値を担保するもので、来店した100人のお客様全てに均一的なサービスをすること。どんなに忙しくてもこれをやり切ることを意味します。それに対してホスピタリティは、サービスのクオリティを維持しつつ、個々のお客様のニーズに合わせて対応を変化させること。100分間の食べ放題のひとときに、どこまで満足していただけるかを考えます。ゲストとの会話、食べ方の説明、お造りのサポート、ゲストの『おめでとう』に気づいて記念日のプレートをサプライズ提供するように、お客様が予期していなかった喜びを生み出すこと、これがホスピタリティです」との答えだった。

決めるのはスタッフ、社員・店長はサポート

 石川支配人のスタッフ採用基準は「向上心」「利他的」「感謝力」の3つだ。
 定期的な面談では、「あなたがいてくれてよかった」といつもスタッフに伝えている。モチベーションの上がる言葉だ。近年は店に対する不満の言葉は聞かれず、「働かせていただいてありがとうございます」「この現場で働けるのが楽しい」」と感謝されることが多い。「そういう言葉が何より嬉しいですね」と石川支配人は言う。
 以前、支配人としての気負いから強いリーダーシップを取りすぎて失敗し、社員を辞めさせてしまった苦い経験がある。以来、自分の考えを180度変えることを決意し、今では自ら先頭に立つことはなくなった。

現在、社員志望のアルバイトが3人いる。自分を超える社員をいかに作るかを考えながら、仕事を任せるようにしているという。物事を決めるのはアルバイトスタッフで、それをサポートするのが社員・店長の仕事とし、自主性を重んじる人材育成に徹している。今では朝礼・終礼はアルバイトリーダーが責任を持って自主的に行っている。アルバイトミーティングも支配人は参加しない。おかげでスタッフ同士お互いをリスペクトしつつより良いホスピタリティを追求するようになった。「2対6対2の法則」について伺ったところ、「5対3対2」との返答。スタッフに任せることで、より強い体制ができたという。

 インバウンドのお客様が多い新宿東口店。海外のゲストからは続々と、「日本で一番の思い出になりました」といったお礼のメールが届く。石川支配人は「日本の良さが認められて世界各国からのお客様が増え続けているのも、先人たちのおかげ。おこがましいですがこの店を通して、海外の人々にとって日本を忘れられない国にしたいと思います」と、熱い口調で語ってくれた。